あなたの家庭も例外じゃない! 在宅勤務、自粛生活で増加するDVを予防するには/コロナ危機を生き抜くための心のワクチン⑥

暮らし

公開日:2020/8/27

家族、人間関係、経済、仕事、人生――新型コロナ禍の世界で、私たちは様々な悩みや心身の危機とどう向かいあうべきでしょうか? “絶望に陥らないための智恵”と“法律の知識”を、全盲の熱血弁護士が今、あなたに伝えます!

コロナ危機を生き抜くための心のワクチン
『コロナ危機を生き抜くための心のワクチン – 全盲弁護士の智恵と言葉 -』(大胡田誠/ワニブックス)

DV(家庭内暴力)を受けたら

 新型コロナウイルス禍による在宅勤務、収入の低下による生活不安など、ストレスのはけ口が暴力の衝動となって、家庭内の弱者に向けられるのがDV(ドメスティック・バイオレンス=家庭内暴力)です。

 東日本大震災の時も、仮設住宅で過ごす家族の中でもDVが起こったといいます。

 DVは、配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあった者から振るわれる暴力、人権を踏みにじる行為です。

 配偶者暴力防止法においては、被害者を女性とは限定していませんが、被害者の多くは女性で、DVは女性の人権を著しく侵害する重大な行為です。

 DVは身体への乱暴だけとは限りません。言葉の暴力もれっきとしたDVです。

 

 DVを受けたら、身の危険が迫っている場合はためらわずに110番通報するか、最寄りの警察署や交番、駐在所に駆け込んでください。

 DVの兆候が見えた段階で、地元の自治体の婦人相談所の番号を調べておきましょう。

 婦人相談所の電話番号がわからない場合は、内閣府男女共同参画局の「DV相談ナビ 」(0570-0-55210)に電話すれば、全国どこからでも、最寄りの相談機関の窓口に電話が自動転送され、直接相談することができます。

 婦人相談所は、各都道府県に必ず一ケ所設置されていて、その中に「配偶者暴力相談支援センター」があり、そこでDV被害のカウンセリングや一時保護などの措置を受けることができます。なお、婦人相談所、という名称ですが、DV被害の男性やセクシャル・マイノリティの方も支援の対象です。

 DVの被害は、警察の「生活安全課」で相談にのってくれます。

 警察相談専用電話(#9110)に連絡すると、地域を管轄する各都道府県の相談窓口に直接つながります。

 全国どこからでも、携帯電話でも利用可能です。

「夫が怖い。何かあったら連絡しますので見に来て欲しい」

 と、あらかじめつながっておくことが大切です。

 警察は、DVを行う配偶者に対して、暴行罪、傷害罪などを理由に逮捕などの措置をとることができます。

 また、被害者の安全確保のための情報提供や、特に緊急性が高いと判断された場合には、一時保護などの措置を行うことがあります。

 身体的な暴力だけではなく、暴言などの精神的な暴力を受けている場合も、警察の保護を受けることができます。

 

 DV被害について、弁護士や、全国の弁護士会の相談窓口に相談をすることができます。法テラスのサポートダイヤル(0570-079714)でも、様々な支援制度や、刑事手続の流れなどの情報提供が受けられます(IP電話からは03-6745-5601)。

 保護措置がすぐに必要な場合は、弁護士から一時保護のためのDVシェルターの紹介や、保護命令の申立てのサポートなどを受けることができます。

 配偶者との離婚に向けた交渉や手続きを弁護士に依頼した場合、弁護士は、配偶者に対し、内容証明郵便などで「受任通知」を出すことになります。

 受任通知には「今後は本件については当職(弁護士)が窓口になりますので、通知者本人に対する直接のご連絡はお控えください」といった文言が書かれています。

 これによって、配偶者からの連絡はすべて弁護士宛てになることが期待できます。配偶者と直接交渉しなくても済むことは大きなメリットだと思います。

 受任通知を送ったにもかかわらず、配偶者から直接連絡が来た場合も、受任通知を理由に、「弁護士宛てに連絡してほしい」と伝えて話合いを拒絶しやすくなります。

 

 DVを受けた場合の避難先として、DVシェルターという施設があります。DVの被害者を、配偶者から隔離し、保護するための施設です。

 DVシェルターには、配偶者暴力相談支援センターとしての機能がある婦人相談所や女性センター、福祉相談所などが管理する公的シェルターと、民間のNPO法人や社会福祉法人などが運営する民間シェルターがあります。

 DVシェルターでは、配偶者から身を守る場所を提供してもらえるだけではなく、弁護士や福祉事務所などと連携しながら、新しい住まいへの入居や生活保護受給の手続き、就職活動などのサポートをしてくれる場合もあります。

 また、DVシェルターの住所は非公開になっており、被害者の安全を確保するための対策がなされているので、安心して利用することができます。

 なお、DVによって生命・身体に重大な危害を受ける可能性が高い場合に、被害者が裁判所に申し立てることで、出されるのが「保護命令」です。

 配偶者からの身体的暴力を防ぐために、配偶者に対して、被害者に近寄らないことなどを命令することができます。

 保護命令を申し立てるには、あらかじめ配偶者暴力相談支援センターか、警察署の生活安全課などに、DVについて相談をしておく必要があります。

 内閣府はDV対策として、2020年4月20日から「DV相談+(プラス)」を新たに開設しました。電話の他、メールやチャットでも専門の相談員が対応するDV相談窓口です。

(0120-279-889)https://soudanplus.jp/(電話・メールは24 時間受付)

 

 既婚者なら誰しも、「DVと縁のない夫婦(家族)」でいたいと願っていると思います。

 あなたの中に、何かの拍子に「暴力の衝動」が生まれたら、それが成長しないうちに、これまで夫婦二人が一緒に生活をしていて、自分が相手に「いらつかなかったとき」のことを思い出してください。

 あるいは、日常的に、夫婦それぞれが家族以外の人とSNSや電話などでつながる時間を作り、「家庭の閉鎖性」を少しでも弱めるように努めてください。

 家庭という閉ざされた空間で、長い間、同じ生活を続けるのは時として苦痛です。

 外出自粛要請が解かれた時は、3つの密(密閉空間・密集場所・密接場面)を避けながら、家族一緒に外に出かけることをおすすめします。

 花や景色などを見ながら、家族同士でおしゃべりをするのも自然と、心がやわらぐのではないでしょうか。

DVと縁のない夫婦(家族)でいるためには
自分が相手に「いらつかなかったとき」のことを思い出して実行する
家族以外の人とSNSや電話などでつながる時間を作り
家庭の閉鎖性を少しでも弱める

<第7回に続く>