『週刊ツリメ』「コロナウイルスの検査で陽性結果! 入院していました」

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更新日:2020/9/11

 これは前回の続きです。

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 不安のゲリラ豪雨が僕の真上で降っている。入院初日、不安定な精神状況で寝れる訳もなく、眠りについたのは朝5時過ぎだった。

 朝7時、看護師さんが起こしに部屋に来る。起床7時、朝食8時、昼食12時、お風呂15時、夕食18時、消灯は21時と優等生みたいなスケジュールになっている。

 寝ぼけながら机に置いてある体温計を脇の下で挟む。はぁ、熱は38.9度だった。そのあと洗濯バサミに形が似ている装置を指に挟む。これは体内の酸素と脈拍数を調べる装置らしい。更に二の腕にベルトを巻き、血圧を測定する。入院期間は朝昼晩と毎回検査をするのだ。そして胸に24時間心電図を記録する装置を付けている。少し離れて見ると自分の身体は医療機械だらけ。幸いにも尿管に管を通さずにすんだ。それも入院する前に看護師さんに「チンチンに管を通すだけのはやめてください」と念を押して伝えたからだ。無意識だったが、包丁の様に鋭利な眼差しで訴えていたに違いない。考えれば考えるほどにあんな直径数ミリの異物を入れるのは寒心する。

 一夜にして生活環境がガラッと変わった。初めての点滴。ひょろひょろの左腕にプラスチックのストローのようなものが刺さっており、そこからポカリみたいな液体が流れているのを間近で見て、喉の奥から異物を吐き出しそうな感覚に陥った。トイレに行くのも一苦労だ。ベッドから起き上がるまではいい。そこから便座に座るまで点滴スタンドを左手で掴み、右手で心電図の機械を持ちながら歩く。用を足しながらおじいちゃんになって入院した時こそは、漢のバナナに棒を刺さなければと決心をした。

 カーテンの隙間から淡い光が部屋に差し込んでくる。基本的にベッドで過ごしている時間が多い。ていうかずっとふわふわの布団の上で過ごしていました。僕が入院している場所の階層はコロナ陽性患者しかいない。看護師さん、先生以外の人は出入り禁止なのだ。部屋からは出られず完全に隔離されている状況。勿論、面会なんてもってのほか。外部の者とコミュニケーションを取るときはLINEか電話だ。まぁ、それが出来るなら問題はないが、直接会えない心淋しさと、症状が悪化して好きな人達と触れ合うことがないままこの世を去ってしまうのでは? という不安の想像を膨らませ過ぎて気が参りそうだった。このストレスでハゲの進行が通常よりも加速したに違いない。コロナウイルス にAGA治療の請求書を送付しておこう。

 お天道様が顔を出しているのに外で空気を吸えないのは辛い。先日、コロナ患者が滞在中の施設から無断外出するケースが相次いでいるというニュースを見た。気持ちはわかる。だって退屈だもの。病棟の天井を眺めるか、テレビをボケーっと観るか、スマホを触る事しか暇つぶしがない。唯一の楽しみはご飯を食べている瞬間だ。食べたら嘔吐するかと思ったが、悲惨な事も起きなく済んだ。時間になれば防護服を着た看護師さんがトレーに患者の体調を考えた病院食を乗せて運んで来てくれる。体がボロボロの状況で食事を楽しめる事はとても幸せだ。しかも毎回献立が違うから余計にこの時間を楽しみに待っている自分がいた。しかし喜びも束の間、入院して2日が経った寝起きの朝、風邪を引いた時のような鼻詰まりを生じた。そしてその日から徐々に味覚と嗅覚が無くなっていったのだ。

 入院4日目には味覚嗅覚の全て失った。畜生! 朝食のチョコパンを普段以上に味わって噛んでも無味だ。濃いソースがたっぷり掛かっている鶏肉をムシャムシャしても味がしない。これでは何を食しても同じだ。読者もまたまた~と大袈裟に冗談を言っていると思っているだろ? 都市伝説を信じるより信憑性は高いぞ。実際にそういった事例が報告されている。うんちを食べたよって話はまだ聞いてないけどね。

 唯一の楽しみが消えた。一点の雲もない大空が広がっている景色を見ても僕には神様のいたずらに写った。例えば道を歩いていて車に撥ねられそうな状況とコロナウイルスに感染するのとは似て非なる出来事だ。体の内部で何が起きているのか分からない恐怖、自分で回避しようとしても出来ない恐ろしさ、いつ完成するか目処が立っていない対コロナのワクチン開発の状況を考えてしまいうろたえてしまった。

 希望を自然と少しずつ捨てていった日々が続いた。虚無感を抱く日々が続き、なんとか生きるために食事をしていた日曜日。21時前、明かりを消して寝る準備をしていた。睡魔もなく少しテレビを観てから寝ようと思い、何気なくリモコンで点けた。その時、ポイ捨てしていた希望のかけらを瞬時にかき集めた。

 「半沢直樹」のドラマがやっていたのだ。自分は入院前に欠かさず観ていたこのドラマの存在を忘れていたのだ。

 元気パーセントが5から一気に100になった。これほど単純な生き物はいるか? きっと珍しいホモサピエンスだろう。是非、文化審議会のお偉いさんに僕を人間国宝に認定して貰いたい。自ら選出を望む人は日本中探してもツリメだけだろう。それにしてもこのドラマは令和で生きた人々に記憶に残る作品になるに違いない。役者さんも個性的な人が多く、最終回のような展開が毎回話起こる。だからこのドラマを「ツリメの楽しみ」に位置付けた。次の日曜まで気持ちが落ち込まないように心掛けて生活をしたのだ。その結果、厚生労働省が定める退院条件をクリアし、晴れて退院することが出来た。体温も平熱を保ち、入院当初と比べるとかなり回復した。

 退院して数週間が経った現在、味覚と嗅覚が元に戻りつつあります。食材の味も分かるし匂いの判断も出来るようになりました。これも感染するリスクがある中で僕の事を看護してくれた看護師さん、先生の努力のお陰です。もし投げ銭機能があるなら課金して医療従事者の皆さんに投げたいです。これじゃあ言い方が最悪だな。こっそりと寄付をしたいと思います。恩返しです。

執筆者プロフィール
ツリメ(byアバンティーズ)
埼玉県出身、年齢は23歳。チャンネル登録者数160万人超の人気グループ「アバンティーズ」のメンバー。
絵心はないがイラストを描くのが趣味で、メンバーからは「画伯」と呼ばれている。
ツイッター:@turime1996
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