お金を増やしたいなら知っておきたいのは「自分のリスク許容度」/お金は寝かせて増やしなさい⑧

ビジネス

公開日:2020/9/16

お金は寝かせて増やしなさい

著:
出版社:
フォレスト出版
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投資のプロではないフツーのサラリーマンが15年実践してきた、個人投資家目線の「お金の増やし方」を指南。
インデックス投資って何? 投資信託のメリット・デメリット、運用は何をすればいい? …これから始める人にもわかりやすく投資術と心構えを紹介します。『お金は寝かせて増やしなさい』(水瀬ケンイチ/フォレスト出版)からの試し読み連載です。

『お金は寝かせて増やしなさい』(水瀬ケンイチ/フォレスト出版)

インデックス投資でいちばん大切なのは自分のリスク許容度を知ること

 私は、インデックス投資においていちばん大切なことは、「自分のリスク許容度を知ること」だと思っています。

 リスク許容度とは、投資家の許容できるリスクの範囲のことで、資産運用で発生する損失を1年間でどの程度受け入れられるかの度合いをいいます。

 ○○%という率で表したり、○○万円という額で表したりします。
 言い換えれば、「最悪の事態を想定する」ということでもあります。

「まだ始まってもいないのに、なぜわざわざ最悪のことなんか考えなければいけないんだ?」と思われる方もいらっしゃると思います。ごもっともです。

 ストレスに苦しむ現代人の悩みを解決する方法を教える古典的名著『道は開ける』(デール・カーネギー著)では、「悩みを解決するための魔術的公式」として「最悪の事態を覚悟する」ことの効用を述べています。

 人間というのは面白いもので、一度最悪の事態を覚悟してしまうと、逆に心が落ち着いてくるというのです。しかも、あとはその範囲内の出来事ならなんなくやり過ごせるようになるものです。

 インデックス投資でバイ&ホールドをする場合にも、これが応用できます。
 自分のリスク許容度を把握し、最大損失がその範囲に収まるような運用をすれば、あとはゆっくり寝かせておくことができます。

 リスク許容度は、その人の仕事の収入、年齢、家族構成、性格まで関係してくるので、人それぞれ違って当然のものです。「多少の損失は気にならないよ」という人もいれば「1円でも減ったら嫌!」という人もいます。また、「今は子どもの教育のお金がかかるから無理はできないけれど、あと5年経てばちょっと冒険してもいいかも」というように、それぞれのライフステージによっても変わってくるものです。

 ファイナンシャル・プランナーやロボ・アドバイザーが「あなたに最適なポートフォリオを提案します」と契約を迫ってくるかもしれませんが、あまり期待できません。

「あなたの100万円がいくらまで減ることを許容できますか?」という質問に対して、①1円も減らしたくない、②5万円までなら許容できる、③10万円までなら許容できる、④30万円までなら許容できる、⑤50万円までなら許容できる、⑥いくら減っても気にならない、というように、結局はあなた自身が考えて答える必要があります。

 肝心のリスク許容度はどうあがいても最終的には自分で考えることになるのです。

 現時点の自分のリスク許容度を把握する方法は、「各自、最大限に想像力を発揮して」としか言いようがないのですが、把握するための考え方の事例をいくつか提示します。

自分のリスク許容度を知る方法

①年間の貯蓄可能金額の範囲内
 前述の家計の状態把握でわかった月々の黒字金額から、年間の貯蓄可能金額を計算して、その範囲を「最大損失に耐えられる金額の目安」とする考え方です。

 たとえば、年間50万円貯蓄できる家計であれば、最悪の事態として年間50万円までの損失であれば1年でリカバリーできるのでよしとするといった具合です。

②公的年金を運用するGPIFが負っているリスクの範囲内
 プロローグで書いたとおり、私たちの公的年金も資産運用されています。国民の老後資金の基本となる大切な年金資金ですので、学者や金融業界のプロたちによって、できるだけ安全かつ効率的な運用がされているはずです。年金資金の運用でとっているリスクの範囲内であれば比較的安全なレベルではないかという考え方です。

 ちなみに、2016年度のGPIFの運用報告を見ると、年金資金の運用は年間12・2%というリスクをとっています。

 金融の世界では年間リスクの2倍の損失をみておけば最悪のケースに備えられる可能性が高いと考えることが多いので、年間±24・5%となり、最悪で年間▲25%程度の損失を覚悟しておけばよいというリスク水準です。

 これは比較的安全サイドに倒したリスク水準といえます。

③夜ぐっすり眠れるかどうか
『ウォール街のランダム・ウォーカー』では、リスク許容度の把握は、「科学というよりは芸術の領域に属する」として、人それぞれ違うことを強調しています。

「本当にあなた自身にとって最適な資産構成になっているかどうかは、あなたがそれで夜ぐっすり眠れるかどうかにかかっている」と説いています。

 いずれにしても、リスク許容度は人それぞれ違うので、最大限、想像力を働かせて把握してみてください。

 参考までに、私自身のリスク許容度は、現在は年間▲30%で、年齢とともにだんだん下がっていくと考えています。だいたい10年くらいの節目ごとに、自分自身のリスク許容度を再確認しています。

分散投資のスゴいところ

 私が投資を始めたばかりの2000年頃のことを少しお話ししたいと思います。

 当時まわりの投資家がみんなそうであったように、私も日本株の個別株投資をしていました。企業の財務諸表などを分析して投資を判断するファンダメンタル分析です。

「なにかよい銘柄はないか?」「買い時はいつか?」「売り時はいつか?」といつも考えていました。

 そんな金銭欲が体からにじみ出ていたからか、あるとき、会社の取引先の中年男性が、どこで聞きつけたのか、
「水瀬君は株をやっているんだって?」
 と株の話を振ってきました。
「ええ、まぁ……」などとお茶を濁していると――

「いいことを教えてあげよう。株で儲けたら、そのお金で東京電力株を買うんだ。儲けたら少しずつ東電を買い増していくんだ。株で長い間勝っているお金持ちはみんなそうしているんだよ」

 ――と声をひそめて教えてくれました。
 当時の私は投資額も少なく、儲けたお金で「最低でも30万円近くする東電株なんて買えるかいな!」と思って聞き流していましたが、分散投資の「ぶ」の字も知らなかった私は、お金持ちの間ではそういうものなのかと信じてしまいました。

 その後も「株の儲けで東電株を買い増す」という運用法を、あるときはマネー誌の「おすすめ投資法」として、またあるときは「大企業経理マン共通の必勝法」として、またあるときは「近所のお金持ちの秘密」として、ちょくちょく見聞きしました。当時から東電株はディフェンシブ銘柄(値動きが小さい保守的な銘柄)の代表格でしたから、そういうセオリーのようなものがあったのかもしれません。

 しかし、当時は1株3000円近くあった東電の株価も、2012年には120円にまで暴落しました。直接的な原因は、言わずと知れた東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所の原子力事故です。

 当時から約96%下落というのは、東電株に集中投資していた投資家にとっては、ほぼ再起不能なダメージだと思われます。その後も原発事故は収拾がついておらず、株価は低空飛行を続けています。くだんの「株で長い間勝っていた人たち」や「大企業経理マンたち」の話が本当ならば、その後彼らがどうなったのかが心配されます。

 最近の社会情勢は、東京電力、日本航空、東芝のような超巨大企業でも、事故や事件で一気につぶれかねず、集中投資は危険であることを教えてくれています。こうしたリスクを避ける(もしくは、できるだけ小さくする)ためには、分散投資で銘柄分散をすることが有効です。

【次回に続く】

この記事で紹介した書籍ほか

お金は寝かせて増やしなさい

著:
出版社:
フォレスト出版
発売日:
ISBN:
9784894517837