「まつもとあつしのそれゆけ! 電子書籍」第13回 Koboついに日本上陸! 楽天が仕掛ける電子書籍とは?

更新日:2014/3/6

電子書籍にまつわる疑問・質問を、電子書籍・ITに詳しいまつもとあつし先生がわかりやすく回答!
教えて、まつもと先生!

 

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7月2日。「東京国際ブックフェア」を2日後に控える中、都内で楽天の三木谷浩史社長が電子書店Koboと専用端末の日本でのサービス開始を発表しました。すでにニュースなどでその様子は目にした方も多いと思います。「それゆけ! 電子書籍」今回は、編集新担当のかべさんと、まつもとが発表会後、お茶をしながらKoboやその影に見え隠れするKindleについて話した様子をお届けします。

カナダ生まれの電子書籍サービス「Kobo」

かべ : まつもとさん、お疲れさまです!

まつもと : お疲れさまでした。いやー、囲み取材が2回続いたので、ちょっとバテました。

かべ : 運動不足ですよ、まつもとさん! たしかに長丁場の取材ではありましたけど。Koboのディレクターでもある三木谷さんとKobo社長のマイケルさん(マイケル・タンブリン氏)、が別々の場所で記者の質問に答えてましたもんね。

まつもと : そうそう。もともとカナダの電子書籍サービスのKoboを日本の楽天が買収するという形で今回日本での展開になっていますので、国内の他の電子書店とはちょっと枠組みが違うんですよね。

かべ : そのあたりは、あとでじっくり伺うとして、まずは発表された端末とサービスについておさらいしていきましょうか? わたしもよく買い物する楽天が電子書籍を手がけるということで、興味津々だったんです!

まつもと : 端末自体は、すでに海外で発売されているものとほぼ同じでした。ただ、価格が7980円というのには驚かされました(海外版は100ドルを超えて発売されている)。会場もちょっとどよめいたのが印象的でしたね。

かべ : ちょっとここで、その値段のおさらいもしておきましょう。わたし、お値段にはうるさいんですよ。

まつもと : たしかにこうやって見ると、お値打ちに見えますね。ハードウェアの完成度もおおむね好評でした。ソニーリーダーよりも実は若干重たいものの、Kindleと同等、またiPadのような汎用タブレットに比べればもちろん軽量です。

かべ : 軽いのは女子にとって大事です! 後ろが高級バッグみたいなあしらいになっていて、ちょっとお洒落な感じなのもいいですよね。

まつもと : そのへんは僕はよくわからないけど、かべさんが言うならそうなのかな……。電子ペーパー(Eインク)による読みやすさはもちろんなのですが、商用フォントで定番ともいえるモリサワフォントを搭載してきたのはインパクトがありましたね。会場で見る限りはかなり読みやすそうでした。

かべ : これまで、電子書籍端末の中には正直「え!」というような表示になっちゃうものもありましたもんね。

まつもと : あと、個人的にはSDカードスロットがあるのもポイントです。あとでお話ししますが、まだまだ書籍の品揃えはこれから、という感じなので、自炊したPDFをSDメモリカードにいれておけるのは実用的です。

かべ : あー、ちばから聞いてますよ。まつもとさん“自炊派”なんですよね。お料理できるなんて、“リア充”じゃないですか~!

まつもと : かべさん、それ多分違う“自炊”です……。

 

楽天が電子書籍を手がける意味とは?

まつもと : かべさんにはいずれ自炊についてはじっくり取り組んでいただくとして、サービス面についてもみていきましょうか。

かべ : そうそう。アマゾンがキンドルを手がけるというのはわたしよく分かるんですけど、楽天がなぜ? というのは正直不思議だったんです。

まつもと : そうですね。楽天ブックス電子書店Rabooなどを手がけてきた楽天ですが、海外の会社を買収(約236億円)してまで、というのには驚いた関係者は多かったはずです。国内の紙の本の販売では水をあけられていた楽天にとってアマゾンはずっとライバルではありましたが。

かべ : わたし、ニュースでみたことあります。会社の壁にアマゾンを意識した張り紙とか出てましたよね。

まつもと : ただ、Koboについては国内だけをターゲットにした展開というよりも、海外も含めた電子書籍事業を楽天としては意識しているんだな、ということを今回の会見で再認識しました。

かべ : というと?

まつもと : すでにKoboは海外では240万タイトル以上を扱っていますが、7月19日の国内サービス開始時には約3万タイトルでスタートするとされています。そのうち、無料で読めるおそらくパブリックドメインの本が約1万タイトルですから、実質は2万タイトルでのスタートということになります。いくら端末が優れていても、すでに国内にも数多くの電子書店やサービスがあるなかでは、少々もの足りないと言わざるをえません。

かべ : なるほど。でも、世界規模でいえば違う構図が見えてくると。

まつもと : そうですね。グローバルにみればアマゾンに対抗しうるシェアですから、三木谷さんの視点もそちらを向いているな、という印象を受けました。

かべ : 楽天は社内での英語公用化も有名ですもんね。世界で勝負か! かっこいいなぁ~。

まつもと : 一方で、検索大手の「百度」と提携した中国事業からは撤退を発表していたりもしますので、必ずしも順風満帆というわけではありません。しかし、ただでさえ出版市場自体が小さくなっている上に、少子高齢化も進んでいる日本ですから、国内市場だけでなく、世界も相手にしているというのは注目しておきたいですね。