「まつもとあつしのそれゆけ! 電子書籍」第13回 Koboついに日本上陸! 楽天が仕掛ける電子書籍とは?
更新日:2014/3/6
ポイントが使えて、消費税がかからない
かべ : まつもとさん、あとわたし「楽天ポイントが使える上に、消費税がかからない」というのが、すごく響いたんです! 買うときも1%のポイントがつくみたいだし。
まつもと : さすが、しっかりしてるなぁ(笑)。たしかに、楽天にはアマゾンが一部商品を除いて採用していないポイントシステムが整備されているのが大きな強みです。そして、家電量販店がそうであるように、ポイントを消費してもらうのに、書籍のような価格の比較的低い商品はうってつけなんですよ。
かべ : そうなんですか?
まつもと : 買い物によるポイントって、だいたい数百~数千円くらいでしょ。それで差額が生じたり、送料がかかるものを買うよりも、手頃ですぐ手に入る「デジタルコンテンツ」が買えるとしたら?
かべ : たしかに。話題の本なんかはポイントで買っちゃいそう。しかも消費税がかからない! でも、なぜなんですか?
まつもと : 法律で海外にサーバーがあって、そこから購入するものには消費税がかからないんですよ。ただ、先週、財務大臣が「そこから生じる不公平感は問題だ」として2014年の税率アップを目処にこうした購入にも消費税を課税したいという意向を示しています。
かべ : なんだ……がくっ。
まつもと : 実際、近々サービスを開始するとしたアマゾンのキンドルも、いまの法律だと消費税非課税になる可能性が高いです。
まつもと : でも、それって国内の電子書店にしたら不公平というか、これから激しさを増す競争のなかでは致命的になりかねない、ということですね。ただでさえ、電子書籍は再販制の適用外で、キンドルは価格決定を自分たちで行うことを主張していたりもしますので(「第5回 Kindleが日本に上陸しない理由とは?」を参照)。
かべ : たしかに……。
Koboに死角はないのか?
かべ : こうやって特徴を見ていくと、Koboっていい線いってる気がします。
まつもと : たしかに、楽天というeコマースに長けた会社が手がけること、海外ではすでに実績があるのは大きな利点ですね。後発ながら、これまでの国内電子書籍サービスに先行しているとも言えます。
かべ : そうしたら、Koboで決まり?
まつもと : いや、死角がないわけではありません。会見で一番気になったのは、EPUB3を本格採用するとしたことです。
かべ : ん? オープンな規格だし、日本語対応も進んでいるから良いのでは?
まつもと : 会見でも記者から質問が飛んだのですが、EPUB3は日本語対応が進んでいるとはいえ、まだ仕様が確定したわけではありません。いくつかの細かい流派のようなものが生まれてしまっているんです。書籍の電子化プロジェクトを進めている出版デジタル機構でもそんな現状を踏まえて他のフォーマットや、スキャンした自炊形式などレイアウトが固定されたフォーマット――これを「リフロー」に対して「フィックス」と呼んでいます――を並行して採用しているくらいです。
海外ではすでに一般的になったEPUB、それを当たり前のように採用するグローバルサービスとしてのKoboに対して、日本語のハードルは厳然としてまだあり、それがスタート時のタイトル数の物足りなさに繋がっていると思います。
かべ : うーん、そうしたらまつもとさんがいつも言っている「読みたい本がない」という状況が改善されない?
まつもと : いえ、実際、中の人によると、Koboから提供されている変換ツールで順次対応は進めているそうですし、EPUB3の仕様確定後(その前にはまだまだ混乱も予想されますが)は、タイトルは増えていくでしょう。先ほどお話ししたように、楽天や三木谷さんとしてはその状況も睨みながら、世界市場での競争も並行して行っていく、ということになるでしょうね。
かべ : わかりました! そのあたりの展望はきっとブックフェアでも語られるはずですから、しっかり勉強したいと思います。まつもとさん、ビシバシお願いしますね。でも〆切は守ってくださいね!
まつもと : は、はい。〆切がんばります。かべさんに担当いただいて早々に電子書籍界隈の動きが急になってきましたけど、よろしくお願いします!(敬礼)
■ダ・ヴィンチ電子ナビ編集部:d-davinci@mediafactory.co.jp
イラスト=みずたまりこ
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