瞑想は万能のストレス対処法!? ビル・ゲイツも絶賛したマインドフルネス入門/頭を「からっぽ」にするレッスン①

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更新日:2021/6/28

ビル・ゲイツも絶賛! 読みながら実践できる「瞑想」と「マインドフルネス」の入門書です。毎日10分間、頭を「からっぽ」にする時間を作ってストレスを解消しましょう。誰でも簡単に実践できる心のエクササイズ「10分間瞑想」をご紹介します。

頭を「からっぽ」にするレッスン 10分間瞑想でマインドフルに生きる
『頭を「からっぽ」にするレッスン 10分間瞑想でマインドフルに生きる』(アンディ・プディコム:著、満園真木:訳/辰巳出版)

瞑想をツールにするために

 私は瞑想を教えたいという思いをずっと抱いていましたが、それと同時に、細部まで気にかけ心を配るという私自身が師から教わったことについて、人々に伝えなければならないというある種の義務感も感じていました。世間一般の瞑想の教え方を見ると、いったいこれで少しでもメリットを得られる人がいるのかと疑問に思うことが多かったからです。テクニックだけが一切の文脈から切り離されていました。これでは学ぶことなどできっこありません。瞑想をためしてみたものの、すぐにやめてしまった人があなたのまわりにもいるでしょう。それどころか、自分には向いていないと決めつけて、ためしたことさえない人もたくさんいるでしょう。でも、瞑想を本当に理解することも、そのテクニックへのベストなアプローチ法について基本的な指導を受けることもなく、どうして効果を上げられるでしょう。

 マインド・トレーニングの一環としての瞑想を紹介すべく、2010年に正式にスタートしたのが〈ヘッドスペース〉です。その理念はごくシンプルで、瞑想を身近にし、現代人の生活にもフィットするとっつきやすいものにすることです。怪しくもなければ神秘的でもない、人々が「頭をからっぽにする」ために利用できる純粋なツールにすることです。また、瞑想について読むだけでなく、なるべく多くの人に実際に体験してもらおうというもくろみもありました。そこで生まれたのが「10分間瞑想」と「マインドフルネス」というふたつの方法です。頭をからっぽにするために一日10分、座って瞑想することが、散歩するのと同じくらいあたりまえになる日がいずれ必ず来ます。10〜15年ほど前までは、ヨガという言葉を口にしようものならたいてい冷笑を浴びたものです。けれども今では、スポーツジムに行ってヨガのレッスンを受けるのは、エアロビクスをするのと同じくらい(むしろそれ以上に)おかしくもなんともないことになっています。

 プロジェクトを実現させるには、何年もの研究と計画と開発が必要でした。しかし、それも瞑想の歴史に比べれば一瞬に等しいものです。何しろ瞑想は数千年にわたって師から弟子へと受け継がれてきたテクニックなのです。技を磨き、完成させるのにも、欠点を修正するのにも十分以上の時間が流れています。新しいものがもてはやされ、めまぐるしく流行が入れ替わる現代でも、この伝統に裏打ちされた信頼感はかなりのものがあります。医師との協力によりこのテクニックを医療に取り入れることが可能になったのも、この信頼感ゆえです。また、私が臨床マインドフルネス・コンサルタントとして開業できたのもこの信頼感のおかげで、この仕事ではこれまでに多くの不眠症やEDなどの患者を診療してきました。

 30年以上前に、幾人かの進歩的な西洋の医師が瞑想を医療に取り入れようとしました。しかし、彼らの働いていた病院ではまるで相手にしてもらえませんでした。それでも彼らは諦めず、「マインドフルネス」に呼び名を変えて研究を続けました。「マインドフルネス」とは、「注意する、心を配る」という意味です。西洋にもち込まれたマインドフルネスは、ルーツが仏教の瞑想にあるとはいえ、今では基本的に仏教とはかかわりのないものになっています。マインドフルネスは、ただ目を閉じて座るという形を超えた、瞑想のテクニックの中心となる要素です。マインドフルネスとは、気をそらさずに「今、ここ」に存在することを意味します。心を落ち着け、一切のこだわりも予断も捨てて自然な意識を保つということです。素敵だと思いませんか。私たちは日々、ありとあらゆるささいな(時には重大な)考えや感情にとらわれ、自分や他人について批判したり決めつけたりして毎日を過ごしています。それとは対照的な状態です。本書ではこのマインドフルネスの実践方法を紹介していきます。

 

 ……そのようなわけで、私は塀の上に座っていました。最後にもう一度だけ後ろを振り返り、それからジャンプしました。こんなふうにこの僧院を去ることになったのは残念ですが、今振り返ってみても、そこへ行ったことについてはまるで後悔していません。これまでに住んだり訪れたりしたあらゆる僧院や道場や瞑想所はどれも、私に何かを教えてくれました。それだけでなく、長年のあいだに、幾人かのすばらしい師、まさに瞑想の達人というべき人々のもとで学ぶ僥倖にも恵まれました。この本に何かしらの知恵が含まれているとするなら、それはすべて彼らの知恵です。それでも私にこの本を書く資格があると思う最大の理由は、私がこれまでの瞑想の修行を通じてありとあらゆる失敗をしてきたからであり、あなたが同じ失敗をしないよう手助けができると思うからです。地図をもっているのと、誰かに道案内をしてもらうのとでは大違いなのです。

すべては心しだい

 瞑想は人生を一変させる可能性を秘めたすばらしいスキルですが、それをどのように使うかはあなたしだいです。生活にどう利用してもいいし、あなたがどれだけの価値をおくかによってその価値は決まるのです。

 本書を最大限に活用し、ひいては瞑想のたくさんのメリットを得るには、生活の一部分だけを選んでそこに的を絞ろうとする必要はありません。少なくとも、はじめのうちはそんな必要はありません。瞑想とはもっと幅広いものであり、そこから生まれる状態は、生活の中でそれがもっとも必要とされている部分におのずと影響を与えるものです。ただし、瞑想の可能性を十分に理解するうえで、ほかの人がどのように利用しているかを知るのは有用です。多くの人にとって、瞑想は万能のストレス対処法であり、心のアスピリンのようなもの。ようするに、毎日頭をからっぽにするための手段なのです。ある人にとっては、マインドフルネスへのより広いアプローチの基礎であり、一日を通じて「今、ここ」にいることの意味に触れる機会です。またある人にとっては、感情を安定させ、人間的に成長するための計画、あるいはなんらかの精神修養の一環かもしれません。さらにまた、パートナーや両親、子ども、友人、同僚などとの関係改善の手段として瞑想に目を向ける人もいます。

 瞑想はより具体的な目的にも利用されています。イギリスの国立医療技術評価機構(NICE)に使用を承認されて以来、瞑想(医療の用語ではマインドフルネス)は様々なストレス性症状の治療に用いられてきました。代表的な症状には、慢性不安、うつ病、怒り、依存、強迫行動、不眠、筋肉の緊張、性機能不全、月経前症候群(PMS)などが挙げられます。医療以外にも、生活の特定面に的を絞った利用法として、仕事や趣味やスポーツでよりよい成果を上げるために瞑想を利用している人もたくさんいます(アメリカのオリンピック・チームがその代表例です)。さらには、なんとアメリカ海兵隊も前線での集中力と能率を高めるために瞑想を取り入れています。

 瞑想がこんなに幅広いメリットをもたらすことは、にわかには信じがたいかもしれません。けれども考えてみれば、心が関係する行動ならなんでも、瞑想によるメリットがあるのです。人生のすべては心を通じて経験されるのですから、人生における幸福感や充実感も、他者とのよい人間関係も、すべては心しだいです。だから、毎日何分かを費やして心のトレーニングやメンテナンスをするのはむしろ当然の常識でしょう。

<第2回に続く>

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