まつもとあつしの電子書籍最前線Part4(後編)電子本棚『ブクログ』と電子出版『パブー』からみる新しい読書の形
更新日:2018/5/15
電子書籍でコンテンツは変わるのか? |
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うめさんの作品『スティーブズ』 そういったスパンの短いものは電子で出して、ゆっくり時間をかけてというものは、紙でという棲み分けが生まれていくのではないかと。たぶん、しばらくそのまま続くのかなと思っています。 向き、不向きもあると思うんですね。文芸作品のようなものは、紙のほうが、ハードカバーで重厚に作って、本そのものの質感自体が体験になっていると思うんですね。そちらのほうがたぶんよい体験を読者さんに与えると思いますし。 もう少し、ライトなマンガだったり、R25のような小さい単位の記事、コンテンツ――Webのコンテンツに近いものですね――というのは、電子のほうが早くて、向いているのかな、と思っていて。 ――パブーからメジャーデビューされた方はいるんでしょうか?最近、音楽の世界でも、メジャーデビューって、本当に価値があるのか。みたいな議論もあったりしますけれど。 吉田:いや、まだいないんじゃないですかね。 向かうはコラボ、本のニコニコ動画 ――今後の展望についてお伺いします。パブーがどう成長されていこうとしているのか。今の電子書籍にはさまざまな問題点もありますが、それとどう向き合おうとしているのかなどをお聞かせください。 吉田:そうですね。パブーの今後の目標というか、目指すところとしては、やはり、インディーズ作家の人達が、自由に作品を発表できて、それが売買されて、売れて次の作品につなげられるという、そんなサイクルをたくさん作りたいですね。小さいサイクルの人も方もいれば、大きいサイクルの方もいらっしゃると思うんですけれども。 そういういろんな売買がなされて、なかでは無料もあっていいんですけれども、「読んで読まれて」というサイクルが、グルグルグルグル、たくさん回るような場所にしたいと思っています。 そのためには、ここで読む必然性といいますか、ここしかないコンテンツというのは、その必然性の1つだと思っています。すぐ読めるということですとか。 あとは、もうちょっと、読む側と、書く側のコミュニケーション量を増やしたいなと思っています。やっぱり、作者さんとユーザーさん、読者さんが直接つながれることっていうのは、大きなメリットというか。いままでになかったことだと思うんですね。 携帯小説では、そのへんやっぱり顕著で。読者さんと著者がコメント欄でやりとりして、「じゃあ、こっちにもっていくか」とかそういうコミュニケーションが当たり前に行われている。 そんなふうに、パブーのなかで作品が育つという形になっていくのが、ベストだなと思っていいます。もちろん直接的にコメントで、作品の内容が左右されるということ自体がベストという訳ではなく、それも一例としていろんな展開があるべきだと考えていますが。 あとは、パブーの中で、共同作業というのができていくような感じになっていけば、一番おもしろいのかなと思っています。コラボレーションができるとかですね。 ――そうですね。ニコニコ動画のように、私、文字書く、ぼくは絵を描くみたいなこともあるんでしょうか? 吉田:パブーの中で、その情報交換の場所を提供できてないんですが、Twitterなんかで、そういうのを募って、じゃあやります、という動きは出てきてますね。 あとは、先日の震災のあとに、チャリティの機能を出したんですけれども。チャリティ作品として、合同誌といいますか、合版といいますか、大勢で参加をされて、という作品がけっこう増えたんですね。 その場合にも、パブーでこういう本を出すんで、参加される、たとえばマンガの作品でしたら、マンガ家の方、いらっしゃいますか、という呼びかけをされて。で、50人ぐらいが参加した本を出されたんです。そういったこともけっこうありました。 そのあたりを、現状、ユーザーさんが、自分でTwitterで呼びかけをして、自分で集めて、ということをされているんですけど。そこを補助できるような機能ですとか、ユーザーさんが個別に作ったものを、組み合わせて作品にできるとかですね。雑誌とかムックみたいなもの。そういうことができれば、おもしろいかなと思っていて。 今はなんでも独りでできる作家さんで、成り立っているところなんですが、今後は絵はそんなにうまくないんだけど、企画があって、これをやろうとか。編集者の方とか、企画の方とかですね。そういうような立場の人との共同作業の場所へと発展させていきたいなと思っています。 インターネットのよいところの1つは、距離を超えられるところです。会ったこともない人と、一緒に作品を作るとか。そういったところまで発展させていければ……。 ――Pixivで活躍しているような人が、絵を描いて、本文は、そういうストーリーがうまい人が作って、パブーで発表して、じゃあ、ニコニコ動画で映像化しましょうとかね。そんな流れになったら、楽しいですよね。 吉田:そうですね、ブクログ共々発展させていきたいと思います。 「まつもとあつしの電子書籍最前線」記事一覧 ■第1回「ダイヤモンド社の電子書籍作り」(前編)(後編) ■第2回「赤松健が考える電子コミックの未来」(前編)(後編) ■第3回「村上龍が描く電子書籍の未来とは?」(前編)(後編) ■第4回「電子本棚『ブクログ』と電子出版『パブー』からみる新しい読書の形」(前編)(後編) ■第5回「電子出版をゲリラ戦で勝ち抜くアドベンチャー社」(前編)(後編) ■第6回「電子書籍は読書の未来を変える?」(前編)(後編) ■第7回「ソニー”Reader”が本好きに支持される理由」(前編)(後編) ■第8回「ミリオンセラー『スティーブ・ジョブズ』 はこうして生まれた」 ■第9回「2011年、電子書籍は進化したのか」 |