ノウハウ本の「飛び込み営業の極意」は使えない! どうすれば、ドアを開けてもらえるのか?/ヨイショする営業マンは全員アホ④

ビジネス

公開日:2020/12/13

きれい事一切なしの超実践型、現場営業論! 「最初の雑談はすっ飛ばしてもいい」「お客様の信頼を失う行為」など、著者が営業マンとして現場で気づいた“売れる”人間力を生み出す39の法則から、一部を抜粋してご紹介。

ヨイショする営業マンは全員アホ 1%だけが知っている禁断の法則
『ヨイショする営業マンは全員アホ 1%だけが知っている禁断の法則』(宋 世羅/飛鳥新社)

飛び込み営業の極意

どうすればドアを開けてもらえるか

 飛び込みというのは、アポイントも何もないところから、いきなり家や会社を訪れてお客様になってもらう営業方法です。私は現在はやっていませんが、野村證券時代は死ぬほど飛び込み営業をしていました。

 さぼっている時間もありましたが、少なく見積もっても年間2万件。新人の頃は、一日150件はやっていたと思います。

 ビジネス関連の書籍には、色々な「飛び込み営業の極意」が書かれていますが、何万件とインターホンを押してきた私から見れば全部綺麗事。実際にやったことのない教科書おじさんが書いているようにしか見えません。

 飛び込み営業に関しては特に、語られているノウハウと現場に大きな乖離があると思っています。

 

 教科書おじさんのノウハウ本には「100件飛び込めば、2〜3件はお客様になってもらえる」と、よく書かれていますが、これはウソ。見積もりが甘いです。

 実際の確率は200件のインターホンを押して、そのうち1人お客様になってもらえるかどうか。

 実際にやっている人なら分かると思うんですが、飛び込み営業って、想像以上にめちゃくちゃ泥くさい。お客様からヒアリングをして、相手の要望を見極めながら運用計画を立てていく……というようなスマートな世界ではないんです。

 

 飛び込み営業の最初の目標は、どうすればドアを開けてもらえるかです。

 いきなり押しかけているわけですから、はじめはインターホン越しにお客様と話をすることになります。そこから玄関まで出てきてもらって、ドアを開けてもらい対面するわけですが、そのハードルがめちゃくちゃ高い。まずはドアを開けてもらうことに100%注力しなければなりません。

 

野村證券に営業マニュアルはない

 実際に、私がインターホン越しにどんなことを話してドアを開けてもらってきたか、その方法をご紹介していきますが、これは何万件と飛び込みをしてきた私がトライ&エラーを重ねて見つけた方法論です。

 野村證券でも、「最初はこう言え」などと教えられません。決まった文言やマニュアルなどは一切なく、上司からは「自分で考えろ」と言われていました。

 

 はじめに私がやってみたのが「今、こういった商品を取り扱っていて、このエリアを順番に回っております。この商品ご興味ありませんか?」という感じ。

 そもそも、飛び込み営業なんて確率ゲームなので、出てきてもらえないなんてことは当たり前なのですが、これは全くダメでした。

 文言が悪いのではと思い、次に「株を売りに来ました!」と正直に言ってみたらどうなるねん? と考えました。ピンポーンと鳴らし、「野村證券の宋です。株を売りに来ました」と正面突破を狙ったわけですが、これも全然出てきてもらえません。

 これは困った。正攻法でやっても、なかなか出てきてもらえないと思ったので、次にとった作戦が「口パクパク」です。

 インターホンの通話ボタンを押すと、こちらの様子がモニターに映りますが、カメラに向かって、声を出さずに口をパクパク動かせば「インターホン壊れてるんとちゃうかな?」と、ドアを開けてくれるんじゃないかと。正攻法でダメだったので、トリッキーなことをやってやろうと考えたわけですが、結論、これもあまり効果はありませんでした。

 

 私も、マニュアルがない中で色々試して、編み出さないといけないわけです。

「口パクパク」ではトリッキーさが足りないと考え、「首カクカク」も試しました。インターホン越しに首を前後にカクカクしたら、「インターホンの画面がおかしくなってんのかな?」と、お客様が出てきてくれるんちゃうかっていう、まあ、「口パクパク」を発展させたものです。

 左右ではなく前後に動かすのは、何百件も首を横に揺らすと気持ちが悪くなってしまうから。で、これも誰も出てこなかった。「首カクカク」はあかんなぁということが、分かりました。

 

第一印象はいくらでもひっくり返せる

 こうして、ドアを開けてもらうために様々なフレーズや奇策を試していった結果、一つの文言にたどりつきました。

 それは「それっぽいことを言ってそうだが、意味不明」というもの。

 具体的には「野村證券の宋です。エリア担当をすることになったので、ご挨拶に来ました。名刺だけでも受け取ってもらえませんか」と言っていました。

「エリア担当になったので、ご挨拶に来ました」って、実は意味不明なんです。ただ、なんとなくそれっぽいことを言ってるだけで、お客様からすれば、知らない奴に挨拶と言われても……って話ですし、そもそもエリア担当ってなんやねんって話じゃないですか。

 これで、お客様がすんなり玄関まで出てきてくれれば儲けものですが、多くの場合は「何の用?」とインターホン越しに返されます。それにどう返すかというと、また「エリア担当です、ご挨拶に来ました」と言えばいいのです。お客様もまた「何のご挨拶?」と返してくるので、そう言われたら「エリア担当です」と答えるんです。

 何を言われても「エリア担当です」「ご挨拶に来ました」の二択で返し続ける。つまり、あえて会話をしないということです。会話にならないということで「面倒くせえな」と出てきてもらうこの方法が、現実的には最もドアを開けていただける確率が高かった。

 

 ド新規の飛び込み営業の実態って、こんな感じです。

 お客様にヒアリングをして、ニーズを喚起するというようなスマートな営業のイメージは、実際に対面できてからの話。もちろん、会ってからはしっかりした営業をしないといけませんが、会うまでがめちゃくちゃ泥くさい。

 極端かもしれませんが、お客様からどう思われるかというのはすべて無視していいです。第一印象なんてものは、後からいくらでもひっくり返せます。まずは、インターホン越しに何と言えば、ドアを開けてもらえるか。その確率を0.1%でも上げていくことが、「飛び込み営業の極意」についての私の結論です。

<第5回に続く>

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