悪いヤツは地元名物を使って成敗! スゴ腕暗殺少女によるご当地必殺劇場

マンガ

公開日:2020/12/4

『また来てね シタミさん』(青木潤太朗:原作、隆原ヒロタ:漫画/講談社)
『また来てね シタミさん』(青木潤太朗:原作、隆原ヒロタ:漫画/講談社)

 暗殺――それはある人物をターゲットとして、綿密な計画の上で不意打ちを狙って実行する殺人行為。それを行うのは、ライフル銃で遠くから狙撃するスナイパーであったり、日本でいえば、「パラパー、パーラッパパッパーラパ、パラパー♪」とお馴染みのメロディーと共に現れて、敵を三味線の撥(ばち)やかんざし、あるいは細工用のノミで刺し殺したりする必殺仕事人であったり…と“ところ変われば技変わる”といえるくらい、ジャンルの幅は広い。

 今回紹介する作品は、まさに“令和時代の必殺仕事人”。暗殺で使う武器は、各地で出合うご当地名物! 毎回違うモノを使って憎きターゲットをスゴ腕少女が殺めていく、『また来てね シタミさん』(青木潤太朗:原作、隆原ヒロタ:漫画/講談社)をターゲットにします!

令和に現れた必殺仕事人は女子高生の姿をしている!?

 ある電話番号にかけて3分コール。そうするとつながるのが観光業者「ミミミ観光」。ここで希望の人数とプランを指定して依頼をすると、ひとりの少女が現地へ暗殺のために派遣される。実はこのミミミ観光は、“観光”業者ではなく、憎きターゲットの暗殺代行を“敢行”する業者だったのだ。現地へ派遣されるのは、スゴ腕の必殺仕事人的暗殺美少女・シタミさん。シタミさんが好きで好きで堪らない仕事のパートナー・カザミさんの指示のもと暗殺が決行される。彼女の手にかかれば、どんなターゲットも華麗に瞬殺! しかも殺した形跡を周囲に感づかれないように完了させる。殺すための道具はその土地で出合った“ご当地名物”の即席モノ。実際に観光しながら綿密に“下見”して道具を厳選し、シタミさんの殺し、その名も「ご当地殺法」が敢行されるのだ。まさに職人の域に達した、多種多様のご当地殺法。どのシーンも必見の、行ってヨシ&殺(ヤ)ってヨシ(?)の紀行系暗殺アクション劇だ。

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 シタミさんが行う「ご当地殺法」は、とても痛快だ。と同時に、その内容や手法に意外性があって毎話驚かされる。例えば、第1話の案件ではなんと“しじみ”で殺しちゃうのだ。「え、どうやって!?」と思われる方も多いだろうが、あなたもその全てを読めばきっと「ありのまま今起こったことを話すぜ?」といった気持ちになることだろう。相手のほんのわずかなスキが見えた瞬間は、シタミさんにとっての“しじみチャンス”! 見事に相手を倒していく……このインパクトはきっと大きいはずだ。

 ちなみに、ご当地殺法にはそれぞれルールがあり、現地の風景に溶け込めるよう地元の女子校生の制服姿に扮するのはどうやら必須(※確実にカザミさんの趣味)、そして現場に凶器らしい痕跡を残さず「帰るときは来たときよりも美しく」をモットーに活動している。ご当地名物が凶器という理由がココにもあるわけだ。日本各地の何のご当地名物で悪いヤツらを殺めていくのか、予想しながら読み進めていくとよりこの作品を楽しむことができる。中には、意外な技やオチもあるので、ぜひお楽しみに。

 指示役のカザミさんと実行役のシタミさんの2人でミミミ観光は成り立ち、ストーリーが繰り広げられていく。その他に、暗殺代行業に協力する女性刑事や、水面下でシタミさんたちを狙う人物も登場する。また、ただ観光しながら依頼者の暗殺を敢行するというだけでない、この作品の“裏ストーリー”も同時に動いていることに読者は気づく。なぜシタミさんは各地へ出向いて暗殺するの? そもそもシタミさんって何者なのか? など謎に感じていた部分が、読み進めるごとに少しずつ明らかになっていくところも見どころだ。

 全国の名物を紹介しながら繰り広げられる暗殺アクションとシタミさんたちの物語は、まるで「読む2時間サスペンス劇場」。満載のスリルと各地の魅力、そしてカッコいいシタミさんの活躍を見届けに、本編へ来てね 読者さん!


文・手書きPOP=はりまりょう