ケチな人は不健康!? 稼いだお金で「どんな経験をするか?」「誰のために使うか?」を考えよう/99.9%は幸せの素人⑤

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公開日:2021/2/3

この本1冊で今の不安や悩みが解決されるとしたら…? シリーズ20万部突破の『神メンタル』『神トーーク』の星 渉氏と、幸福学研究の第一人者・前野隆司教授の共著。科学的に自分で自分を幸せする「すごい裏ワザ」が満載! 読んだ日から行動にうつせる「即実践! 行動のレシピ」付き。

99.9%は幸せの素人
『99.9%は幸せの素人』(星渉、前野隆司/KADOKAWA)

見返りを求めてお金を使うほうが幸せになる

 貴重なお金を使うなら、それによって自分にいいことが起きたほうがいいに決まっています。そう、お金を使う時はしっかりと〝見返り〞を求めましょう

 では、いったいどんなお金の使い方をすると、自分にいい〝見返り〞があるか?

 それを明らかにしてくれている研究結果があります。

 カナダのサイモンフレーザー大学で、次のような実験が行われました。

 

・街で通行人にランダムに声をかけ、実験への協力を依頼。承諾してくれた人には、「今、どれくらい幸せか」を尋ね、連絡先を教えてもらいました。
・次に、5ドル紙幣(カナダドル。日本円にして約400円)と指示書を入れた封筒を渡しました。
・指示書の内容は次のうちのどちらかです。

A 「今日の午後5時までに、自分のためにこの5ドルを使ってください」
B 「今日の午後5時までに、誰かのためにこの5ドルを使ってください」

・さらに、何人かの封筒には5ドル紙幣ではなく、20ドル紙幣(カナダドル。日本円にして約1600円)を入れました。

A 自分のために5ドル使うグループ
B 自分のために20ドル使うグループ
C 誰かのために5ドル使うグループ
D 誰かのために20ドル使うグループ

 グループはこの4つです。実験に参加してくれた人々は、現金と指示書を持ち、またそれぞれの目的地へと去っていきました……。

 研究チームはその晩、連絡先として聞いていた電話番号に電話をし、次の2つの質問をしました。

① 「どんなふうにお金を使ったか」
② 「今、どれくらい幸せか?」

 当然のことながら、受け取った指示書の内容によってお金の使い道はまちまち。

「自分のために5ドルを使ってください」と指示された人たちは、たとえば、スターバックスでコーヒーを買ったり、アクセサリーショップでイヤリングを買ったりしていました。

 一方、「誰かのために5ドルを使ってください」と指示された人たちは?

 これも使い道はまちまちです。親戚の子供のためにおもちゃを買ったり、ホームレスの人に食べ物やコーヒーを買った人もいました。

 

 さあ、もうあなたも実験の結果はおわかりかと思いますが……。

 そう、「誰かのためにお金を使った」人は、「自分のためにお金を使った」人と比べて、明らかに幸福度が高かったのです。実験への協力を依頼したスタート時点の幸福度には大きな差がなかったにもかかわらず、です。

 

 ちなみに、この実験では、5ドルではなく、20ドルを使うというグループもありました。同じ「誰かのためにお金を使った」人では、5ドルのグループと20ドルのグループ、どちらのほうが幸福度がアップしたでしょう?

 他の人のためにお金をたくさん使ったほうが、幸福感はより得られそうな気がしますが……。

 答えは「両方とも同じ」です。

 5ドルだろうが、20ドルだろうが、上昇した幸福度は同じだったのです。少しの金額でも他の人のために使うことで、私たちは幸福感という大きな〝見返り〞を得ることができるわけです。

 お金を使うなら、〝見返り〞がないと嫌ですよね。

「幸福感」は、人間にとって大きな見返りなのです。

 

 2006年から2008年にかけて世界136カ国の20万人以上を対象にして行われたギャラップ世論調査では、「前の月にチャリティーに寄付した人々」、つまりは誰かのためにお金を使った人は、「寄付しなかった人々」に比べて人生により多くの満足感を感じていることがわかりました。その傾向は豊かな国でも貧しい国でも同じで、チャリティーに寄付することによって、家庭の所得が2倍になったのと同じくらい幸福度が上昇することが判明したのです。

 

 重要なのは「金額」ではなく「使い方」。

 たとえ5ドルという少額でも、幸福感を実感することができるのです。

 あなたは最近、人のためにお金を使ったでしょうか?

即実践! 行動レシピ

 ここで私と一緒に「どの場面で人のためにお金を使うか」を決めてしまいましょう。ちなみに、私は後輩やスタッフとの食事代は自分が全て払うと決めています。他におすすめなのが、グーグルで「寄付 一覧」で検索してみることです。小口でできる寄付がたくさん出てきます。私は、公益社団法人プラン・インターナショナル・ジャパンの、遠い国の女の子を支援するプログラムに毎月一定額の寄付をしています。Mazaloという4歳の女の子なのですが、数カ月おきに絵手紙が届き、とても幸せな気持ちになります。

 

ケチな人は不健康になる科学的な理由

 カナダのブリティッシュコロンビア大学で、こんな実験が行われました。

・実験の被験者に10ドル(カナダドル。約800円)を渡しました。
・自分の好きな額だけお金を他の人に分けてくださいと指示します。
・ただし、10ドル全額を自分のものにしても構いません。

 さて、あなたならどうしますか? いくらを人に分けてあげるでしょうか?

 10ドル全てを自分のものにしても、誰からも文句は言われません。

 

 実験の結果として「4ドル48セントを他の人に分けてあげれば、恥を感じない」ということがわかりました。裏を返せば、他の人に分けてあげても、その金額を少なくすると「人は恥を感じる=幸せではない」という事実が判明したのです。

 この実験で注目すべき点はもう1つあります。

 被験者がお金を他の人に分けてあげる際に、ロール綿を軽く嚙んでもらっていました。唾液から「コルチゾール」というストレスに関係するホルモンのレベルを測定するためです。〝人にお金を分けてあげる〞ことのストレス、つまりは健康への影響も測定していたわけです。

 その結果……。

「自分が決めた金額に恥を感じれば感じるほど」、つまりは人に分けてあげた金額が少なく、自分の取り分を多くすればするほど、唾液中のコルチゾール(ストレスホルモン)のレベルが高くなったのです

〝ケチる〞ことで、身体的にも強いストレスを受けるということです。

 

 またある実験では、被験者に1ドル入った封筒を渡し、次の3つの行動を選んでもらいました。

A お金を自分のものにする
B チャリティーに寄付する
C 実験者に返す

 どれが一番〝裕福な気分〞になったでしょうか?

「裕福=お金を持っている量」と定義すれば、もちろんAです。

 しかし、これまでの例からもわかるとおり、裕福な気分になったのはBあるいはCでした

 では、Bの「チャリティーに寄付した人」と、Cの「実験者に返した人」とでは、どちらが裕福な気分になったか?

 どちらも「もらえるはずの1ドルを失った」という点では同じです。

 結果は、お金を寄付したBの人たちは、お金を返したCの人たちよりもはるかに裕福な気分になり、ただで1ドルをもらった人以上に裕福な気持ちになったのです。

 これは「自分には人に分け与えられるほどお金があるのだ」と脳が認識し、心の余裕が生まれ幸福度も増すというメカニズムだと考えられています。

 こうしてみると、「〝見返り〞を求めてお金を使った」ほうが「幸福度が高まる可能性が高い」傾向があるとわかります。

 もちろん、大切なのは自分自身が気持ちよくお金を使うことで、必ずしも〝見返り〞を求めてお金を使えばいいというわけではありませんので、そこはご注意くださいね。

 

お金に人生を支配されない生き方

 こうしてお金と幸福度に関する研究や論文を調べると、どの研究結果を見ても、基本的には次の2つが幸福度をアップさせることがわかります。

・「経験」にお金を使う
・「人」にお金を使う

 研究によっては、「札束を見ると性格が悪くなる(他人に冷たくなり利己主義となる傾向がある)から、札束は見ないほうがいい」なんて結論づけているものもあります。しかし、それでも「お金を稼ぎたい」「収入を増やしたい」と思う人がいるのも事実。私もビジネスコンサルタントの立場としては、クライアントや顧問先の業績を伸ばすために、売上(お金)を増やすことを考えなければならない場面もあります。

 幸せにお金を稼ぐ(収入を上げる)ためにはどうすればいいのか?

 ここまで読み進めてきたあなたなら、わかりますよね?

「稼いだお金で、どんな経験をするか?」
「稼いだお金を、誰のために使うか?」

 この2つをお金を稼ぐ理由として設定し、そのうえで目標を立てればいいのです。

 お金を得ること自体を目標とするのではなく、その先の幸福度が高まるお金の使い方、そして、そこで得られることを目標にすれば、お金を増やす行動に幸福度高く取り組むことができるのです。

即実践! 行動レシピ

 稼いだお金で「どんな経験をするか?」「誰のために使うか?」を今すぐ決めて、紙に書き出しておきましょう。

 

第1章のまとめ

▶ お金は年収800万円までは、人を幸せにする。ただし、それ以上は横ばい。

▶ 年収が2倍になっても幸福度は9%しか増加しない。

▶ 人生でのうれしい・感動した思い出は全て体験や経験である。モノにお金を使うと幸福感は時間の経過とともに減少していく。

▶ 経験の時間的長さは幸福度には影響しない。

▶ 他人のためにお金を使うと、自分のために使うより幸福度が高まる。その際、金額の大きさは関係ない。

▶ 人にお金を使う(分ける)ほど、自分は人に分け与えられるだけ豊かだと脳が認識して幸福感が高まる。

<第6回に続く>

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