“性”を語る言葉をもっていない現状を打破! 心地よい関係づくりのために 「性と現代」を語る/3万人の大学生が学んだ 恋愛で一番大切な“性”のはなし①

暮らし

公開日:2021/2/1

約3万人の大学生に「人間と性」をテーマに講義を行った村瀬幸浩氏。当時学生に話した中身を要約して紹介しつつ、講義を聴いた学生たちのリアルなレポートを元にまとめた1冊。複雑なからだ・性の仕組みを学び、性について語る「言葉」を持つことで、大切な人との関係性は変わる…!

3万人の大学生が学んだ 恋愛で一番大切な“性”のはなし
『3万人の大学生が学んだ 恋愛で一番大切な“性”のはなし』(村瀬幸浩/KADOKAWA)

まえがき

 私は中学、高校生の六年間、男子校で育ちました。今でも一般に男子校は性教育にはあまり熱心ではないように見えますが、私が通っていた頃は性に関することが授業で取り上げられることはなく、もっぱら友だちとのわい談や街の古本屋さんで手に入れるエロ本が私の知識源でした。思えば実に情けない、無残な話です。

 しかし当時はそれが当たり前で、性の話や女性のことなどまともに学んだり考えたりするような大切なことという意識に乏しく「そんなこと」「そんなもの」という程度の事柄だったのです。

 そのせいもあって青年時代の私は、性の関係づくりに自信が持てず、苦い経験や妻との葛藤など不安や焦りを感じ続けていました。そして、そうした状況から抜け出すためにも私は自ら性について懸命に学び、教師として高校生に性の授業を始めたのです。

 こうして性の科学、健康や人種としての性、性と人間関係について理解が深まるにつれ「もっと早くから学んでいれば、もっと自信が持てたり、心地よい関係づくりや幸せな人生に近づけたのに」という思いが日に日に強くなっていきました。

 やがて非常勤で大学に職を得た私は一層心をこめて学生に「人間と性」(ヒューマンセクシュアリティ)をテーマに語りはじめました。

 

 この本はしかし、大学での講義記録でもなければ授業の様子を再現しようとしたものでもありません。私が学生に話した中身を要約して紹介しながら学生たちがその講義をどう聴いたのか、聴いて何を考えたのか理解してもらおうと思って一冊にまとめたものです。

 読者の皆さんには、その双方(講義の概略と学生の声、感想、意見)を読んでいただくことで“性と現代”について改めて目を向けてほしい、と同時に今日の学生・青年の現実について理解を深めてほしい。そのためになるべく多くの学生のレポートをとりあげました。

 高校生、大学生、青年の皆さんには、この本を読んで、現在付き合っている相手がいる、いないは別として、交際相手との関係づくりをシミュレート(想定して考える)してみてくれたらうれしい。やがて実際にその人があらわれたら2人でこの本を読んで、感想を述べあってみてください。そうすることできっと2人の関係はより心地よいものになっていくのではないか、私はそう確信しています。

村瀬幸浩

<第2回に続く>