学生のレポートからわかる「デートDV」の現状。“恋人とは? セックスとは?”を客観視しよう/3万人の大学生が学んだ 恋愛で一番大切な“性”のはなし③

恋愛・結婚

公開日:2021/2/3

約3万人の大学生に「人間と性」をテーマに講義を行った村瀬幸浩氏。当時学生に話した中身を要約して紹介しつつ、講義を聴いた学生たちのリアルなレポートを元にまとめた1冊。複雑なからだ・性の仕組みを学び、性について語る「言葉」を持つことで、大切な人との関係性は変わる…!

3万人の大学生が学んだ 恋愛で一番大切な“性”のはなし
『3万人の大学生が学んだ 恋愛で一番大切な“性”のはなし』(村瀬幸浩/KADOKAWA)

デートDVを知ることで、あるべき姿を見つめ直す

 自分とセックスをした女性を「俺の女」などと思い込み、自分の意のままに操り支配しようとする―そういう幼稚で鼻持ちならない男がそこここにたくさんいるらしいことは、この章の冒頭の女子学生のショートレポートからもよくわかると思いますが、あと2、3紹介してみましょう。

 今日はDV について勉強しました。私の友達で激しいDVを受けている子がいました。殴られる、蹴られるのは日常のことで、その子が妊娠してしまった時、彼女のお腹を思い切り蹴ったりしていました。友達の男の子が止めても、その人まで殴られていました。100万円以上貸しているお金も返ってこないそうです。今はもう、その彼とは別れましたが、最低な男だったと思います。友達には何度も別れた方がいいと言いましたが、彼には自分しかいない、愛されているはずなどといって聞きませんでした。結果別れて本当に良かったと思っていますが、またそういう男に出会ってしまわないか不安です

 今日の内容のようなこと、経験あります。暴力がないのは幸いですが、本当に嫌です、いい加減にしてほしいです。世の中こんな人ばかりではないと思いますが、人と関わるのが怖くなります。以下に、されたことを書き出してみましたが、見てみると本当にストーカーですね。どうしてこんなに幼稚なのでしょうか。勉強はできるのかもしれませんが、性格はとっても幼稚です

◎深夜、家の電話へいたずら電話やメール(ライン)をずっと送り続けてくる。内容も精神的苦痛を感じるもの

◎着信拒否しているにもかかわらず、ずっと電話をかけてくる。不在着信履歴が全部その人で、家にも押しかけてきた(警察を呼んだ)

◎共通の知人に悪口を言う、友人にも嫌がらせ、彼女の名を語りインターネットの掲示板に荒らしの書き込みをする

◎血染めの包丁を撮った写真を送りつけてきて、殺してやる、死んでやるなどのコメントも添えられてくる

 このようにひどいことをされている女子大学生がいるのかと、改めて驚かされました。中には経験を聞いて、私だけじゃないんだとか、やっぱりあれは暴力なんだ、と自分たち自身のことを見つめ直してみようと思う人もいました。例えば、こんな文章もありました。

 今日の講義を聴いて精神的な面での暴力は自分たちの間にもあるような気がしました。度重なる彼の暴力的な発言に、嫌だと言っても一向に聞いてもらえなく、カーッとなり私が手を上げてしまうことが何回かありました。最近では、けんかになるのが嫌なので私も言いたことも言わず我慢していますが、このままずっと我慢していけるのかと思っています。今後のことについて、よく考えようと思わせられました

 DVはよくテレビなどで耳にしていましたが、付き合っている同士※の間で起こるデートDVというものがあることを初めて知りました。講義を聴いていて、私は日々彼のことを自分の思い通りに動かしたがっているのでは? と思いました。優しい彼であるのをいいことに、また自分が女であるのをいいことに、自分が彼より優位にあるように振る舞っていたのかもしれません。彼が自分の思っているように行動してくれないと、きつい言葉を言ったり、ひとりで悲しんでいました。恋人同士であることは、どちらかが優位にあるのではなく対等な立場なんだと思います。私はそんな基本的なことを忘れて自己中心的になり、彼の心を傷つけていたように思います。デートDVを知ることで恋人同士のあるべき姿を再確認し、自分自身のこれまでの態度を見直すことができた気がします。彼とこれからもっと良い関係をつくっていきたいと思います

※レポートには男女関係のあり方についての表現のみであったが、付き合う対象が同性であっても同様である。

恋人とは? セックスとは? を問うチャンスに

 紹介したのは講義を聴いた女子学生の一部の声です。一部とはいえ、考えるに値する問題として提起してみました。ただし、女性の声だけ取り上げたのではアンバランスです。せっかく男子学生にも授業しているのですから、男性が書いたショートレポートも紹介しましょう。まず一番オーソドックスというか、数からいっても多かったのは次のようなものです。

講義を聴いた男子学生のレポート

 DVはごく一部の人間による行為だと思っていたが、日常的に全くありえないことではないと実感した。確かに自分の彼女が他の異性と話していたりするとあまり気分のいいものではないが、それに対して暴力を振るうというのは異常なことだと思う。相手を束縛したいと思う感情が全くないとはいえないが、自分にしてほしくないことを相手に強要するのは身勝手な行為である。今日はDVとは何なのか、シッカリ認識できたので、自分がしないように、また相手にもさせないように関係を送っていきたいと思う

 今日の講義でDVの話を聴いてドキッとしました。僕にはいま半同棲している女性がいるのですが、彼女が嫌がる時、けんかしている時、生理の時でも何だかんだ言ってSEXを強要しています。向こうが嫌がるとかえってSEX したくなるというか、襲ってやりたくなります。自我を抑えきれない自分の暴力性に嫌気がさします。これからは絶対に強要はしないようにしたいと思います。相手の気持ちに立つことを考えなければならないです

 先生のお話を聞いて自分もDVの加害者であったことに気づきました。私には2年半近く交際していた彼女が最近までいました。私は彼女が疲れていて拒否しているにもかかわらず性行為を強要したことが何度もあります。その時暴力は振るいませんでしたが、彼女の腕を強くつかむことがあった気がします。彼女にとってこの行為はDVだったのだろうと今思います。生理中でも、大丈夫、といって強要したこともありました。正直、日常生活では優しくしているつもりだったのに、性行為となると暴力的になっていたと気づき、がく然としています。大好きだった彼女に苦痛を与えていたと思うと自分が情けなくて仕方ありません。これは絶対、自分が改めるべき部分であると思いました

 この文章の傍線を引いたところ、おわかりですね。「暴力は振るいませんでしたが」とありますが、その後に「彼女の腕を強くつかむことがあった」と。これ、暴力なんですよ。相手の自由を力によって奪う、苦痛や恐怖感を与えるのも暴力だということに彼は気づいていないようです。「彼女にとってこの行為はDVだったのだろう」と振り返ってはいますが。

 そこで翌週、このレポートを紹介して説明しておきました。これは暴力ですよ、と。

 多かれ少なかれDVの気は私にも正直、間違いなく存在すると思いました。決して暴力を振るったことはありませんが、独占欲や嫉妬心等はやはり強くあると思います。また、友人たちの話を聞いても多くの人にこれはあるように思います。でも、これってどこまでが異常なことなんでしょうか。恋愛と支配(少し言葉が悪いかもしれませんが)は表裏一体なようにも思えます。私は絶対に相手には浮気をしてほしくないし、だからこそ日々の相手の行動も気になります。これが異常だとは思えないのですが、それとも客観的に見れば、これこそ潜在的にDVの気がある人間ならではの考え方なのでしょうか?

 今日のDVの話を聞いて、友人(男性)のことを思い出しました。彼は高1の頃から6年間、同じ女の子と付き合っているのですが、彼はその女性のせいで同窓会や飲み会など他の女性のいる場所にはなかなか行けない状態なのです。聞くと高校の頃から、他の女の子に勉強を教えたり、楽しく話したりするだけで修羅場になることが幾度となくあったようです。そのくせ干渉している本人は、大学に入って他の男と浮気をしていたようで全く意味がわかりません。今思うと、これもDVの一種なのではと感じます。DVは男→女だけではないのだと思いました

 私が幼い頃、父がDVをしていました。父は毎日外で飲み歩き、なかなか家に帰ってきませんでした。たまに帰ってきた時には母や姉に当たり散らして暴力を振るっていました。4人姉弟で子だくさんのため母が離婚を切り出せないと父は読んでいた。父はそれを盾にして、外でのうっぷんを家庭内で晴らしていた。その後、母が離婚を決意すると、生き肝を抜かれたのか世間体を気にしたのか態度を一変させ、離婚したくないと言い出し、母と私たちに嫌がらせを始めました。その後裁判の末、父と母は離婚し私たち姉弟は母と一緒に暮らしましたが、幼い頃のDVの記憶のせいか私は人の顔色をうかがって行動する癖がついています。力で相手の行動をねじ伏せようとするDVは決して許すことはできません

 当然のこととはいえ、男子学生もまたさまざまな思いやコンプレックスを背負って生きているのだなぁと思わされます。そして講義の後の短い時間にこれだけのことを一生懸命書いてくれる、自分の心と向き合って書いてくれていることに私は希望を見出しています。

 先生が紹介したDVの事例を興味深く聞きました。同じ年頃の人で、これだけひどい目に遭っている人がいるというのは驚きでした。こういう話をメディアで見聞きする度に、自分は絶対こういうことはしないし、相手に嫌な思いは間違ってもさせない、あり得ないと自信を持っていました。しかし話を聞いて、程度の差はあれ誰でも“加害者”になる可能性があるのではないかと感じます。絶対に相手を傷つけない人間でいようと改めて思いました

 もう一人、これは女子学生の感想、意見です。

 DVについてのいろいろな人の経験を知って本当に驚きました。私が今付き合っている人は去年この授業を受けたことがある人のためか、本当に私の気持ちを尊重してくれます。男性にはぜひとも先生の話を聞いてもらいたいです

 これは手前味噌な話ですが、男性も(もちろん女性も)学ぶことによって変わることができる、少なくとも変わるきっかけを得ることができるのではないでしょうか。ともあれ、学生たちは講義を通して自分たちの「問題」を客観視する機会を持ったようです。付き合うってなんでしょう、セックスってなんでしょう。あなたにとって、相手の人にとって。

<第4回に続く>

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