尊い! “いつものバス”が導く女子高生の恋路…『AM8:02、はつこい』/マンガPOP横丁㊹

マンガ

公開日:2021/1/29

『AM8:02、はつこい』(紺野りさ/小学館)
『AM8:02、はつこい』(紺野りさ/小学館)

 朝の通勤や通学で、毎日同じ時間のバスや電車を利用する、気になるあの人。ひょんなことで顔見知りとなり、そこから始まる恋の物語……なんていうリアルイベント、憧れたことがある人も多いのでは? 最近、いつもの電車に乗って定位置(開かない扉のサイド)に着くと、清純さ溢れる雰囲気の女子高生と一緒になる時が2週間ほどあった。それこそ自分が高校生だった時に出会っていればなぁーと悔しさを心に留めスマホをいじっていたが、何か。じゃあ高校時代だったら動くのかと私へ迫りたくなると思うだろうが、そんな度胸もイケてる容姿でも無いので行動しなかったでしょうけどね! ということで、実際は夢物語なシチュエーションなのだが、これを経験したい方へ朗報です。青春ド真ん中な高校時代、めちゃくちゃタイプな人と同じバスで出会って恋する日常。これがなんとマンガで体験できちゃいます。今回は、紺野りさ先生の『AM8:02、はつこい』(小学館)に描かれた恋物語をご紹介。

 初等部の頃からずっと女子校で過ごしてきた高校生・日和には、密かな楽しみがあった。それは、彼女が利用するバスの毎朝8時2分に素町(もとまち)一丁目バス停から乗ってくる別の学校のイケメン男子をこっそりと眺めること。日和が心ときめかせている彼の名前は沖瀬雄大。バスに乗車すると、あっという間に友達が集まってくる、誰とでも仲良くなっちゃう人気者。魅力で溢れたその彼が日和にはとてもキラキラして見え、もはや別の世界の住人みたいな手の届かない存在。なので容易に話しかけられず、キツい朝のラッシュ時の“目の保養”として心を満たすだけにとどめていた。仲のいい友人と沖瀬くんの話で盛り上がっていた数日後から、日和に数々の事件が起こりはじめる。この事件がキッカケとなって、日和の恋と青春の物語が始まる――。

 恋愛初心者である日和の甘酸っぱい恋模様にどんどん引き込まれること必至。一方で沖瀬くんは、誰とでも優しく接し、しかも器用でイケメン……はいもう最強です。そんな沖瀬くんは人気者で、しかも学校が別ということで、日和が健気に接近していくようすを、思わず応援したくなること間違いなしだ。

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 8時2分のバスが楽しみでしょうがないワクワク、偶然いつもと違うバスで出会った沖瀬くんに対してのドキドキ、「おはよう」というひとことを言うかどうか躊躇しながらの悶絶、お祭りに彼が来ることを少し期待しての浴衣参加、勇気を振り絞って「友だちになりたい」という内容のお手紙を渡す第一歩の緊張感……もうすべてが尊く感じ、そしてそれぞれの心情に対し、わかりみが溢れるハズ。

 日和の初心な恋の成長は、小さい奇跡の積み重ねで成り立っている。先ほどの一歩ずつの勇気が沖瀬くんの心にどう響いてくれるのか。その行方にぜひとも期待していただきたい。恋をしたいけどなかなか行動できない奥手の方、または新しい恋に挑戦したい方に勇気と希望を与えてくれるピュアラブストーリー作品としてオススメしたい。実際はりまもなんか勇気が湧いた気がする! とはいってもこのまま実践したら年齢的に違うと思うので、勇気だけだが……。

 “同じバスで出会う恋”という夢設定を見事にマンガで描いていただいている紺野先生の前の作品がなんと実写映画化するとか。え、何が言いたいかって?『AM8:02、はつこい』、略して『Aこい』(※紺野先生が命名)もぜひ映像化を希望したい。アニメはピュアピュアがギュッとつまった劇場版で観たい。

 2021年のマンガPOP横丁の新作少女コミック作品、1発目に紹介したやまもり三香先生の『うるわしの宵の月』含め、1月から早くも良作がそろったと個人的に感じている。実は現役書店員時代では少女コミック作品はあまり触れてこなかったので、もしかしたら心が“ピュアピュアガールズハート”なのかもしれない。これからも素敵な新作が読めることを期待し、紹介していきたいと思う深夜の2時8分。Aこいを読み返して1人きゅんきゅんしてきます!

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう