他者との”心の境界線”あいまいになっていませんか?「自分がへとへとにならない程度に」/頑張りすぎずに、気楽に⑤

暮らし

公開日:2021/2/14

日韓累計145万部のベストセラー『私は私のままで生きることにした』の著者最新刊、待望の日本語版! 人間関係に悩みのない人なんて、いない。しかし、誰しも、一人じゃ生きられない。だから、自分が心地よいと思える他者とのバランスを見つけよう。自分らしく、幸せに生きるためのヒントをお届けします。

頑張りすぎずに、気楽に
『頑張りすぎずに、気楽に – お互いが幸せに生きるためのバランスを探して -』(キム・スヒョン:著、岡崎暢子:訳/ワニブックス)

自分がへとへとにならない程度に

ブックカフェで数人の読者と会話していたときのことだ。

「家族に対して身勝手な自分が許せない」と吐露した女性がいた。

理由を聞いてみると、姉に赤ちゃんが生まれたそうなのだが、
甥っ子もとてもかわいいし、姉も苦労しているようだったので
贈り物をしたり、
時間をつくっては育児を手伝ったりしていたという。

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ところが、そのうち自分の日常が浸食されて手に負えなくなり、
だんだんと姉の家からも足が遠のいていき、さらには
そんな自分が身勝手に感じられて、自責の念に駆られているという。

彼女が話し終わると、その場にいた全員が
「それのどこが身勝手なの?」という表情を浮かべていた。

 

生きていれば当然、大好きな人のために手を貸すこともあり、
苦しみを少しずつ分け合うときもある。

だけど、どんなに近しい関係だとしても、健全な境界線は必要だ。

 

他者との線引きが曖昧だと「自分ができること」と
「自分ができないこと」の境界もぼんやりして、
自分ができないことまでやろうとして問題を複雑化させてしまう。

 

もし誰かが川で溺れていたなら当然助けなければいけないが、
泳げもしない人が勢いで飛び込んだところで
状況をさらに悪化させてしまうのと同じように、
問題が起きている現場で一緒にもがいても、誰のためにもならない。

だから誰かをきちんと助けるためには
健全な境界線を敷いたうえで、まずは自分を守ることが必要だ。

自分の役割と、相手の役割をしっかり分けておくことが大事なのだ。

 

境界線を設けることは、何も身勝手なことではない。

最小限の境界もない関係では、かえって怒りや恨みを生み出したり、
または自分がかわいそうに思えてくることもある。

過剰なまでの責任感も、
むしろ相手に依存させてしまうことになりかねない。

自分の面倒をきちんと見れてこそ、他者の人生も助けられるのだ。

実際、ある研究では、
自身のエネルギーをしっかり維持できている人こそが、
他者と世界に、より多く寄与できているのだそうだ。

誰かのためにも、自身のケアを怠ってはならないのだ。

 

だから、一人ですべての責任を被ろうなんてやめよう。

関係の密度と状況に応じて、
自分が注げるだけのエネルギーと資源を
相手一人分の責任感として配分すべきだし、
相手もまた、大変な分だけ自分が頼れる対象を
増やす努力をすべきだ。

誰かを手助けすることに責任を感じていても
自分自身のケアを後回しにしてしまうのなら、
それは自分に対して無責任であるということになる。

自分に余力があってこそ、いちばん大切な自分のことも守れる。

それでこそ、自分も、他者との関係も、健全でいられるのだ。

 

大好きな人の力になりたければ
まず第一の条件は、
あなたの人生が倒れてしまわないことだ。

 


自分にぴったりの健全な境界線を設けなければ
人々はあなたの欲求を無視するようになる。
──オプラ・ウィンフリー

頑張りすぎずに、気楽に - お互いが幸せに生きるためのバランスを探して -

お互いに寄りかかれる関係が
いちばん理想的な関係だ

<第6回に続く>

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