「ももも~もも…」深夜の大都会に奇妙な音が鳴り響く。その音の主は…/悪魔の夜鳴きそば①

文芸・カルチャー

公開日:2021/2/19

主人公の満内(みちない)ミチコ、通称「みっちゃん」は、27歳。駆け出しのホテルマンとして奮闘する毎日だけれど、努力が空回りして落ち込んでばかり。そんなある日、夜道に現れた、奇妙な屋台に引き寄せられ――。百戦錬磨の屋台店主「もちぎママ」が贈る「共感度200%」の感動ストーリー。

悪魔の夜鳴きそば
『悪魔の夜鳴きそば』(もちぎ/マガジンハウス)

 東京都港区、虎ノ門。

 虎ノ門ヒルズを筆頭に、いたるところに荘厳な建物と高層ビルが立ち並び、夜になれば赫赫とした東京タワーが遠くに輝く、東京の代名詞のような街。

 ビジネスタワーだけでなく大使館や官庁棟を構えるなど、日本の政治と経済を動かす都心の心臓部の1つであり、そこに通勤する者たちの顔ぶれや背格好もエリートたちの風格を見せる。

 また、ビルの隙間を抜けていくと美術館や音楽ホール、愛宕神社に行き着くような文化的な側面も持ち合わせており、やっぱり港区、非の打ちどころねぇなって感じるエリアなのである。

 そんな華美でハイソサエティな街に、どうやら一時期まったくもって似つかわしくない、素っ頓狂なチャルメラが鳴っていたそうだ。

 ♫ももも〜もも、もももも〜も〜

 深夜11時――といっても、まだまだオフィスの灯りが眠らないこの街で、1台の屋台そばのリヤカーが陽気な音を鳴らしながら練り歩く。

 醤油と背脂の香ばしい香りを巻き立てながら、腹を減らし、そして心をすり減らしたお客を探すべく夜道を凱旋する。

 そのラーメン屋の屋号は「悪魔の夜鳴きそば」。

 店主はオネェ口調で話す、「餅の妖精」を名乗る生き物だった。

悪魔の夜鳴きそば

悪魔の夜鳴きそば

悪魔の夜鳴きそば

<第2回に続く>

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