最強内閣爆誕! 徳川家康が総理大臣、坂本龍馬が官房長官に/ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら①

文芸・カルチャー

公開日:2021/3/26

2020年。新型コロナの初期対応を誤った日本の首相官邸でクラスターが発生。混乱の極みに陥った日本で、政府はAIで偉人を復活させて最強内閣を作る計画を実行する。徳川家康が総理大臣、坂本龍馬が官房長官になるなど、時代を超えたオールスターで結成された内閣は日本を救えるのか!?

ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら
『ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら』(眞邊明人/サンマーク出版)

歴史は繰り返す。
一度目は悲劇として、二度目は喜劇として。
カール・マルクス

これから、2020年の話をしようと思う。

 

 2020年。東京でオリンピックが開催されるはずだった、この年。

 中国武漢市を皮切りに、世界で新型コロナウイルス感染症が大流行した。

 多くの国が、一時的に国民の外出や経済活動に制限をかけた。

 国内外を自由に行き来することはもちろん、勝手に商店を開けることも許されなかった。

 これはグローバル経済において〝成長を止める〟ことを意味する。

 世界中の国が同時に、このように成長を止めた事例は、世界史上、初めてのことである。

 社会をパンデミックから守るためには、多くの国がこうせざるをえなかった。

 

 しかし、日本においては、420年前に一度だけ、

 国の成長を意図的に止めた人物がいた。

 それが、

 徳川家康である。

 江戸時代以前の戦国時代は、今のように「日本」という国の概念はなく、それぞれの領土が国であった。戦国大名は、国外を侵略し、戦をして領土を奪い取ることで富を拡大していった。織田信長は「天下布武」をスローガンに掲げ、西欧から輸入した最先端の武器、鉄砲を駆使し、領土を急拡大させた。

 そして信長の死後、天下を統一した豊臣秀吉は、さらに富を拡大するために海を渡り、朝鮮に出兵する。

 戦国時代は、武士たちにとって、いわば〝グローバル成長期〟だった。

 

 ただ、家康は違った。信長、秀吉とは真逆の方法をとった。

 戦ってなんぼの戦国時代に、家康は江戸幕府をつくり、藩同士の戦も海外での争いも禁じ、国外との貿易も制限した。

 家康は意図的に当時の〝領土を拡大して成長する〟ことを止めた、世界でも稀に見る異質なリーダーであった。

 

 結果、江戸時代は265年間も続く、太平の時代になった。

 文化遺産に認定されている歌舞伎や能、落語、浮世絵など海外からも評価が高い日本の文化の多くはこの時代に生まれ、当時の江戸は世界最大の都市だったと言われている。(元禄時代、世界の二十人に一人は日本人だったとの説もある)。

 江戸幕府は「パックス・トクガワーナ(太平の徳川)」と海外からも称賛されるほど日本史上最も優れた組織だったのだ。

 

 そんな江戸幕府の創立から420年経った2020年。

 世界と同様、新型コロナのパンデミックにより大きなダメージを受けた日本。

 台湾や韓国と違い、SARSやMERSを経験していない日本は、感染症の初期対応を誤り、あろうことか総理官邸でクラスターを発生させてしまう。そして、持病を抱えていた総理大臣自らが感染し、死亡。前代未聞の事態に、国内に政治に対する不信感が充満し、日本はかつてない混乱の極みに達した。

 そこで政府は、秘密裏に画策していたAIと最新ホログラム技術で偉人たちを復活させ、最強内閣を作る計画を発動させる。

 そこで選出されたのは、徳川家康、織田信長、大久保利通、豊臣秀吉、徳川綱吉、足利義満など、あらゆる時代の荒波をくぐり抜けてきた錚々たるメンバーであった。

 そして、総理大臣の補佐役である官房長官には、皮肉にも江戸幕府を終わらせた男、坂本龍馬が選ばれた。

 

 この物語は、徳川家康率いる最強内閣が、

〝コロナという予測不能な事態を収束させ、地に堕ちた政府の信頼を取り戻す〟

 をミッションに掲げ、家康を「アンドロイドなどと交渉しない」と罵っていたアメリカ大統領から、最終的に日米首脳会談後の共同会見で次のような賛辞を受けるまでを描いた物語である。

「私は心から彼を尊敬します。かつてアメリカをつくりあげた偉大な先人たち、ジョージ・ワシントン、エイブラハム・リンカーンと出会ったような気持ちです。今日は皆に私の偉大な友であり師の話を聞いてほしい。我々はこれからどう生きていくべきか。420年前の偉大な英雄から学ぼうではありませんか」

ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら

〈物語に入る前に〉

この物語には、歴史や政治の用語が多数登場する。
(歴史や政治になじみがない人でも楽しめるように注釈がいれてある)

しかし、決して歴史書や政治の本ではない。
歴史を、時代を変えた過去の人物たちが、
日本の未来のために、
社会を変え、
組織を変え、
自分をも変えようと奔走した物語である。

歴史にも、政治にも、
無関心な日本人はいるかもしれないが、
無関係な人は、いない。
この物語は、何かを変えたい人にとって、
無関心でも、
無関係でもいられないはずだ。

いや、何も変わりたくない変えたくない人にだって無関係ではない。
なぜなら、急速に変化する時代に、
変わらないでいるためには、
何かを変えないといけないからだ。

<第2回に続く>

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