ゲームクリエイター山中拓也さん/他がままに生かされてスピンオフ企画「僕を生かしてくれた人たち」

小説・エッセイ

公開日:2021/4/9

 山中拓也初著書『他がままに生かされて』の刊行を記念した特別短期連載。2月は4回にわたり、本書から抜粋したエッセイを配信してきた。 3月からは本書のスピンオフ企画「僕を生かしてくれた人たち」を本連載限定で公開!書籍に掲載しきれなかった、山中拓也の恩人たちを紹介していく。

山中拓也

 同姓同名のゲームクリエイター・山中拓也さんは、現在「ボイステラス6」という新プロジェクトを一緒に進行している同士。まだ、出会って少ししか経っていないけど、僕から見た山中さんは自分がワクワクすることに足を向ける人。そして、その情熱を仕事にしっかり注いでいく人だなという印象だ。

 出会いは偶然に、そして突然だった。山中さんが新しいプロジェクトをTwitterで告知したら、勘違いした僕のファンが「面白そうな企画ですね!」ってコメントを僕のTwitterに残してくれたことがきっかけ。勘違いだったんだから、そのまま流せばおわりだったけど、面白いってどんなことするんだろうって単純に興味が湧いた。

 山中さんのTwitterを見てみると、確かに面白そう。ちょうど僕自身脚本家を探しているところだったから、ダメ元で「今度面白い企画やるんですけど、僕と一緒にやりませんか?」ってDMを送ってみた。すると、すぐに「いいですね! …ところでいつやります?」とすぐに具体的な話へと進んでいったのが興味深かった。

 大体、こういう話って「あ、じゃあ予定が合ったらよろしくお願いしますね」みたいに終わっていくパターンが考えられる。…というか、そうやって終わっていくことのほうが多いかもしれない。だから、「すぐにやりましょう」と言われた時、その行動力に驚いた。

 僕の提案を山中さんが形にしたものを見た時、山中さんがいかに力をかけてくれたかが分かった。打ち合わせをしていてもとにかくレスポンスが速いし、ひとつボールを投げると、膨らませた案がいくつも出てくる。一緒にお仕事をさせていただいて、発想力の部分は、僕も見習いたいなと思ったし、仕事に慣れて“やっつけ感”のない人だからこそ、それが仕事に対する信頼に繋がっていくということを改めて実感した。

 やってるつもり、頑張ってるフリなら誰にでもできる。「一緒にやりましょう」と言いながら、人から与えられるのを待つ人もいる。でも一緒に仕事をしている人に「期待に応えてくれる人だ」と思ってもらうのは、簡単なことじゃない。自分から良いものにしていくために2歩、3歩先を読んで、100%以上を出し切ってくれる。表面じゃなくて、内側から熱量を感じる人と出会えて、僕はすごく嬉しい。

 山中さんは「僕と拓也くんが絡む意味をきちんと見つけたい。拓也くんの音楽の部分と僕のゲーム、アニメの分野を組み合わせて面白いものを作ろう」と言ってくれた。

 自分がやりたいことをやるだけじゃない。人との化学反応によって、自分の魅力や能力が広がることを知っている人の言葉だ。内側は熱く、でも客観性は忘れない。僕よりもはるかに大人だなと思う。

 僕はこの出会いが、これから先の面白いことに繋がっていくんじゃないかと期待している。30代からの仕事を一緒にやっていきたいと思えた大切なパートナーだから。

ボイステラス6

山中拓也●1991年、奈良県生まれ。ロックバンドTHE ORAL CIGARETTESのヴォーカル&ギターであり、楽曲の作詞作曲を担当。音楽はじめ、人間の本質を表すメッセージ性の強い言葉が多くの若者に支持されている。17年には初の武道館ライブ、18年には全国アリーナツアーを成功におさめ、19年には初主催野外イベント「PARASITE DEJAVU」を開催し、2日で約4万人を動員。20年4月に発売した最新アルバム『SUCK MY WORLD』は週間オリコンチャートで1位を獲得。