このたぬきがスゴカワイイ!雨の日に出会った1人と1匹のほっこり同居物語!『雨と君と』/マンガPOP横丁(55)

マンガ

公開日:2021/4/16

じじいくじ~元最強刑事の初孫育児~
『雨と君と』(二階堂幸/講談社)

 動物とのほっこりかわいい日常を描いたマンガ作品をお求めの読者さま。現在かわいい動物キャラ系マンガ作品に力を入れているマンガPOP横丁が、今回も素敵な作品をご用意しておりますので、ぜひ最後までお付き合いください!

 突然ですがここでクイズ! 今回の主役の動物は一体何でしょう? まず、丸いフォルムにモフモフの毛並みという最高の癒しボディの持ち主さん。そして古来より日本人には馴染みがあり、頭に葉っぱを乗せがち。そして実は今回の作品の表紙絵に描かれている、ということでもうおわかりですね。では答え合わせ致しましょう。正解は、たぬきなんです。本来は。しかし、今回の物語の場合に限り不正解なのです。

 一体どういうことか。明らかにたぬきである動物と暮らす日常物語、二階堂幸先生の『雨と君と』(講談社)の中身に触れてまいります。

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 ある雨の日のこと。その女性は帰宅途中、道路脇に置かれた段ボール箱に雨ざらしの状態で入っている、頭に葉っぱを乗せた動物と出会う。その動物は明らかにたぬきなのだが、彼女はこの動物を“犬”と思ってしまう。直後、その動物が「拾ってください(足跡マーク)」さらに「飼いやすい!」というメッセージが書かれた紙を自らめくりながらアピールしてくるではないか! これには思わず、「芸達者」と彼女は絶賛。しかし家では飼えないと判断し、そのことを伝えると、この動物からまさかのサプライズ。この行動に彼女の考えが一転し、一緒に暮らすことを決意する。これが、1人と1匹との同居生活の始まりとなるのであった。ただ、拾った“犬”を“たぬき”とは知らずに――。

 かくして、犬と勘違いしているたぬきを連れて帰宅。家に着くなりたぬきは、自分が入っていた段ボールの箱を器用に畳んで片付け始める。その流れでマジックペンを手に取り、何か文字を書きたそうな仕草をする。そこで女性はスケッチブックを渡すと、「ありがとう(足跡マーク)」と、ちゃんと人間の文字でメッセージを伝えてきたのだ。これに「芸達者なワンちゃんね」と再び感心。その後、“ワンちゃん”と呼ばれたたぬきに、これから一緒に生活するための告知をする。

「明日は病院行って、検査と予防注射ね」

 さぁ果たして、ワンちゃんとして飼われることになった“彼”の運命は!?

 ということで、先ほどのクイズの答えは、“犬”でした。というか、犬に間違えられたたぬきなので、どっちでも良いんですがね! たしかに大きく括るとイヌ科の動物ではあるけれども。女性の勘違いにより、“犬”として生きることになったたぬき。そもそも捨て犬のように演じたのだから、ある意味当然の結果だけど。

『この物語には2つの見方が存在する……犬かイヌ科だ。』

 これは今回のPOPのキャッチコピー。この作品における重要なポイントだ。一緒に生活していく上で、当然だがいろんな人との交流も描かれていく。その最初のステージとして、あらすじで波乱を匂わせた獣医とだ。そこでは獣医との言葉なきかけ引きが繰り広げられる。もちろん獣医はプロなので、彼を見た瞬間は“たぬき”と疑う。この様子が大変おかしくてかわいくて、ほっこりさせてくれる。その他に、隣に住む少女・きなこちゃん、そして女性の両親と顔を合わせていくが、どんな対面となるか。これもまたクスクスと笑う場面の連続だ。実際、たぬきは野生の場合“鳥獣保護法”により飼うことができないのでバレたら大変。少なくとも獣医にはバレずにいてほしいと願うばかりだ。

 そしてなんといっても気になるのが、たぬきの驚きの能力、知能の高さだ。スケッチブックで成立する会話、というか文字を書けるなんて、「誰か中入ってませんか?」と言いたくなっちゃうレベルの高さ。そして女性との息もピッタリで、お互い楽しい日常を見せてくれるのが、まさにワンダフル(犬として過ごしているだけに)!

 SNS発で1話4ページと短いが、そこにはクセになるかわいさと心潤う成分がギュッと詰まっている1冊。化かされたと思って読んでいただきたい。もしかしたら、たぬきが頭に葉っぱを乗せている理由は、物語の世界の人たちを幸せにさせる術をかけているからなのかもしれない……!

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう