BLUE ENCOUNT 田邊さん/他がままに生かされてスピンオフ企画「僕を生かしてくれた人たち」

小説・エッセイ

公開日:2021/4/16

 山中拓也初著書『他がままに生かされて』の刊行を記念した特別短期連載。2月は4回にわたり、本書から抜粋したエッセイを配信してきた。 3月からは本書のスピンオフ企画「僕を生かしてくれた人たち」を本連載限定で公開!書籍に掲載しきれなかった、山中拓也の恩人たちを紹介していく。

山中拓也
Ⓒハタサトシ

 僕らのバンドが、今まで走ってこられたのはBLUE ENCOUNT(以下ブルエン)というバンドのおかげだと思っている。その中でも、いつも僕のやる気に火をつけてくれるのはボーカルの田邊さんだ。

 初めての一緒に行った打ち上げで「カッコいいやんけ! お前ら後輩の中でも群を抜いてカッコいいよ!」とベタ褒めしてくれたことがある。サラッと書いているが、先輩が後輩に対してカッコいい!と素直に褒めるのは珍しいことだ。

 これからボーカリストとしてどうやって成長していこう、と考えていたときも「誰の真似もしなくていい。弱いままのお前でいいし、人のことを気にしないMCでいい。素直にやっていたら絶対勝てるから大丈夫」と背中を押してくれた。

 この言葉のおかげで、自分の悪い部分を直すんじゃなくて、良いと思える部分を伸ばしていけばいいのかなって思うことができた。こんな風に、ずっとそばで支えてくれていたブルエン。彼らがいなかったら、僕たちはどんな人生を送っていただろう。

 彼の言葉で自信を持ってライブも出来て、次に会ったときにビックリするくらいカッコよくなろうと思える存在でもある。どれだけ成長したかを見せたい…それは、とてつもない力になる。決して笑われるようなことはできないというプレッシャーは、僕たちのバンドを高みへと導いてくれたのだから。

 決して先輩風を吹かせるわけではなく「MCのあの部分は良くなかった」とか、「最高だった!」とか、「しょうもないライブやなぁ」って笑い合える関係になっていった。

 デビューしてからも、将来の話をしたり、プロモーションの相談をしたり…ずっと身近でお互いを見てきた。そして、お互いに刺激を与え合って、切磋琢磨してきた。

 ブルエンが『もっと光を』という楽曲を作り上げたとき、ちょうどオーラルの『嫌い』が形になったときと同時期だった。そんなときはお互いに楽曲を聴かせて、褒め合ったこともある。

 僕が、後輩にカッコいいと素直に言えるのは、彼のおかげかもしれない。彼のように、変なプライドを持たずに、カッコいいものをカッコいいと言えること。他人の力を認められること。それは、きっと頑張っている人の自信に繋がり、バンドというシーンを盛り上げるための一助になるはずだ。

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山中拓也●1991年、奈良県生まれ。ロックバンドTHE ORAL CIGARETTESのヴォーカル&ギターであり、楽曲の作詞作曲を担当。音楽はじめ、人間の本質を表すメッセージ性の強い言葉が多くの若者に支持されている。17年には初の武道館ライブ、18年には全国アリーナツアーを成功におさめ、19年には初主催野外イベント「PARASITE DEJAVU」を開催し、2日で約4万人を動員。20年4月に発売した最新アルバム『SUCK MY WORLD』は週間オリコンチャートで1位を獲得。