フリーランスは、自由であるがゆえの危険性も…/武器としての労働法④

ビジネス

公開日:2021/5/9

武器としての労働法』から厳選して全4回連載でお届けします。今回は第4回です。社員、契約社員、派遣、アルバイト、フリーランス…。雇用形態が多岐にわたるなか、「働くこと」のトラブルもまた多岐にわたる時代になりました。トラブルを乗り切るために大切なのは、あなたの働き方を深く知ることです。「泣き寝入りしない」ために、まずは基本知識を学びましょう。

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武器としての労働法
『会社に人生を振り回されない 武器としての労働法』(佐々木亮/KADOKAWA)

「フリーランス」は自由に契約を結べる

「フリーランス」とはどのような働き方をいうのでしょうか?

 フリーランスとは、会社や団体に所属することなく、業務に応じて自由に契約を結べる働き方です。ですから、業務を委託されても断る自由があります。また、働く時間も場所も拘束されません。雇用契約ではない働き方ですので、労働法の適用は基本的にはありません。

 ただ、フリーランスなのか雇用契約なのか、境目が難しいケースも多くあります。そのため、実は自分ではフリーランスと思っていても、その実態はフリーランスとはいえない働き方をしている人もいます。なかにはフリーランスとは呼べないのに会社からはフリーランスとして扱われている人もいます。

 そこで、まずフリーランスといえる条件をあげてみましょう。

 フリーランスの働き方は、先ほど指摘した通り、業務の委託を断る自由があり、場所も時間も拘束を受けません。つまり、委託された業務を納期までに仕上げることが重要で、それ以外については自由となります。働く時間は何時間でもよく、1週間に3日しか働かなくてもいいし、自宅で働いても、レンタルスペースで働いても、どこで働いてもかまわないのです。

 ところが、委託された業務は断れない、1日に働く時間が決められている、働く場所は出社して働くようにと言われ、朝は9時までに出社しないと叱責を受けるなどという働き方をしていたら、これはフリーランスとはいえません。

 フリーランスが多い職種にはプログラマー、エンジニア、デザイナー、イラストレーター、ライター、編集者など、これ以外にも多くあります。

 フリーランスは時間も場所も拘束されずに自由に働ける半面、労働基準法などの労働法が適用されません。たとえば労働時間については、正社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣社員は1日8時間、1週40時間のいずれかを超えれば時間外の割増賃金(残業手当)を支払うことが法律で決められています。しかし、フリーランスにはそれがありません。委託された仕事で何日徹夜をしても、あらかじめ決められた報酬以上の額は受け取れないのが原則です。

 また、独立した事業主とされているため、何かトラブルに遭遇したとき、自分の責任で解決しなければなりません。トラブルについてはあとで解説しますが、なかなか法律が保護してくれるケースは少ないのが実情です。

 フリーランスは、自由な働き方である半面、雇用契約を結んでの働き方と比べて弱い立場にあるといえるでしょう。

年俸制=1年契約とは限らない

 あなたの賃金は日給制ですか? 月給制ですか?

 多くの人はそのどちらかだと思いますが、年俸制という働き方もあります。この年俸制は、日本では外資系企業を中心に導入されています。

 年俸制は給与額を月単位や日単位ではなく、1年単位で決める制度です。無期雇用での年俸制もあれば、有期雇用での年俸制の場合もあります。年俸制だから無期雇用だ、有期雇用だとはいえないので、もし自分が年俸制だったら、無期雇用か有期雇用か契約内容を確認しておきましょう。

 年俸制というと、プロ野球選手を筆頭にJリーガーなど、プロスポーツ選手がすぐに頭に浮かぶのではないでしょうか? そのせいからか、年俸制の場合、年度の終了時に雇用が終了になったり、解雇になったりしても仕方がないと思われがちです。しかし、「年俸制」であっても社員として働いている場合、日本では解雇に相当する問題を起こさない限り、雇用を打ち切られることはありません。外資系企業であっても、日本で働く社員には日本の労働法が適用されます。

<続きは本書でお楽しみください>

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