ゆで卵の呪い/『運動音痴は卒業しない』郡司りか㉒

小説・エッセイ

公開日:2021/4/30

郡司りか

 最近「ゆで卵の呪い」にかかりました。

 ある日を境に、どんなに頑張ってもゆで卵の殻を剥くことができなくなったのです。

 始めは、偶然かと思いました。その日買ってきた卵を茹でて12分。その後冷まして食べようと、剥こうとしたら剥けない!

「なぜ剥けない!?」

 その口調が若干デーモン閣下風になってしまっていることには気づいていたけど、どうにも止められない。ゆで卵に怒ってしまっていました。

「吾輩はお腹が空いてるのだけどな…」って心の声は呟くけれど、ゆで卵の殻と白身は結束力が高く、剥いてくうちにどんどん黄身だけになってしまいました。

 こんなことがあるのでしょうか。

 少し前まではゆで卵にこれほどの苦難を感じたことはありませんでした。普通に剥いて普通に食べていました。けれど、そんな日常はもう来ません。当たり前に「つるんとしたゆで卵」を食べられていた喜びは、当たり前である状況下では気づけなかったのです。

 けれども私はゆで卵が好きです。

 開封したばかりの美味しいマヨネーズをつけて食べたい。仕方なく、ゆで卵がつるんと剥ける方法をいくつも試していくことにしました。

 ・買ってからしばらく経った古い卵を使う。
 ・卵に穴を開ける機械で小さな穴を開ける。
 ・冷たい卵を沸騰したお湯で茹で始める。
 ・ちゃんと時間を測る。
 ・冷水で一気に冷ます。

 ここまでやったら当然剥けるでしょう。余裕の笑みで殻と白身を剥がそうとするけど、剥けない!

 「なぜ剥けない!?」

 これじゃあデジャヴだよ。

 1つもつるんとしない。つるんどころか黄身が8個並ぶ羽目になってしまった。吾輩のゆで卵は全敗だ…

 あ、最後のひとつは、誰でも剥けるようになるという素晴らしい裏技の「少ない水とゆで卵をコップに入れて振る」にトライしてみましたが、黄身までもぐちゃぐちゃになって終わりました。

 ちなみに、外食時にもゆで卵を剥いてみました。剥けませんでした。

 そう、これはゆで卵の呪いなのです。

 

 と、ネタがなさすぎて、ゆで卵話を絞り出したわけですが、つまらなさすぎてドン引きました。すみません。今後絞り出すのはマヨネーズだけにします。マヨラーなのでね。(照れ)

<第23回に続く>

プロフィール
1992年、大阪府生まれ。高校在学中に神奈川県立横浜立野高校に転校し、「運動音痴のための体育祭を作る」というスローガンを掲げて生徒会長選に立候補し、当選。特別支援学校教諭、メガネ店員を経て、自主映画を企画・上映するNPO法人「ハートオブミラクル」の広報・理事を務める。
写真:三浦奈々