毎話が衝撃!喪った10年前の真実をひもとく青春群像ミステリー!『青年少女よ、春を貪れ。』/マンガPOP横丁(60)
公開日:2021/5/21
初恋の青春……それはとっても甘酸っぱいもの。でも中には、不運にもホロ苦いカタチで終わった経験をした人も少なくないだろう。今回ご紹介する、山田シロ彦先生の『青年少女よ、春を貪れ。』(集英社)は、昔の初恋の少女を巡るミステリー群像劇。甘酸っぱいとかホロ苦いとかでは言い表せない、衝撃がすさまじい作品だ。さっそくそのあらすじに触れていこう。
和歌山県のある中学校。まだ恋愛を知らない男子・近藤勝之は今日も友人たちと楽しい学校生活を送っていた。ある日の下校途中、友人の龍樹がクラスメイトの女子・百々瀬ハルを話題にする。彼女は東京の学校から昨年やってきた転校生で、大人の雰囲気が漂う人当たりのいい美少女。しかし龍樹が彼女のかわいさを熱弁しても、そういうことに疎い勝之はあまりついていけていなかった。
リアルな恋より、どちらかというと授業で読んだ文学作品に出てくる恋のシーンに興味を持っていた勝之。そんな彼に運命の瞬間が訪れる。弁当箱を学校に忘れてきたことに気づいた勝之は友人たちと別れ、教室へと戻る。到着してドアを開けるとそこには、外向きで窓枠に腰掛け、足をブラブラさせながら景色を見つめるハルの姿が。いつ飛び降りてもおかしくない状況に、勝之は思わず「あかん!!」と止めようとするが、ハルは飛び降りを笑顔で否定する。この時、勝之の心がざわついた。そしてハルは勝之にSNS用の写真を撮ってとお願いする。彼女はフォロワー数が2万人いる“いんすたぐらまー”なのだそうだ。
このやり取りを機に2人の距離が急接近し、勝之とハルは付き合うことになるのだが、3週間後にハルは亡くなる。
それから10年。社会人になった勝之のスマホに、ハルの死に疑念を抱かせる同級生からの連絡があり……。
というなんとも衝撃的な物語の始まり! ハルの死はあくまでも本編へのキッカケであり、ネタバレのひとつではないことをお伝えしたい。付き合い始めた3週間後に一体何が起こったのか。その真実が少しずつ明らかになっていく。
さらにもう少し触れると、青年勝之には付き合っている恋人がいる。彼女はとても勝之想いで、将来結婚も考えていたようだが、あの連絡からとんでもないところでハルとの“対面”を果たし、この物語に巻き込まれていく。
これ以上はもうネタバレになるので控えるが、一度この物語に触れると、毎話が衝撃すぎて自然と目が離せなくなる。そのくらいマジでヤバい青春プレイバック作品。ドロドロモノ好きでも、甘酸っぱいモノ好きでも、とにかく青春モノが好きな人に読んでいただきたい。そして2巻が早く読みたい! そんなマンガPOP横丁60回目であった。
文・手書きPOP=はりまりょう
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