子どもの長所、いくつ答えられますか? 親の「短所いじり」が子どもの才能をつぶす!?/子どもの長所を伸ばす5つの習慣①

出産・子育て

公開日:2021/6/15

石田勝紀著の書籍『子どもの長所を伸ばす5つの習慣』から厳選して全7回連載でお届けします。今回は第1回です。これからの時代、特に子どもに必要とされる「個性」を伸ばすために必要なこと、長所を伸ばす子育てとは何か? その意義と具体的な方法について、わかりやすく指南してくれる一冊です。

子どもの長所を伸ばす5つの習慣
『子どもの長所を伸ばす5つの習慣』(石田勝紀/集英社)

 いきなりですが、みなさんに質問です。

 あなたのお子さんの長所は、何ですか?

 制限時間は1分としましょう。3つ、4つといわず、いくつでもいいですよ。さあ、考えてみてください。

 

 いかがでしょう?

 お子さんの長所を、さっと思いつきましたか?

 

 では、もうひとつ質問をします。

 あなたのお子さんの短所を教えてください。思い浮かぶ何かがあるでしょうか?

 

 今度はどうでしょう?

「短所はたくさん思いつくんだけど…」
「長所は見つからないけど、短所ならいっぱいあります」
「長所なんて、うちの子にはないです」

 たいてい、こんな答えが返ってきます。どんなに教育熱心な親でも、子どもの短所を指摘するのは簡単なのですが、長所を見つけるのはどうやら不得手のようです。

 

 なぜ、長所はなかなか思いつかないのでしょう?

 実は、長所というのは、親が見て「当たり前にできている」と思いがちなことが多いからです。答えようと思ったって、すぐには気づかないわけです。

 いっぽう、短所はというと、日常生活のなかで目につく苦手なことに結びつけると、いくらでも出てきそうです。わが子に「苦手分野を克服してほしい」と願うあまり、知らず知らずのうちに、親は子どもの短所ばかりに目がいってしまうのです。

 

 もちろん、ママたちは注意せずにはいられませんね。

「そんなことじゃダメじゃない!」
「何度言ったらわかるの!」
「今のうちに直さないと、一生苦労するわよ」
「平均点以下なんて、恥ずかしいね」
「また間違えたんだ」
「それで急いでいるつもり?」

 

 こんな言葉づかいから伝わるのは、「今のままでは問題があるから、早く直してあげなくては!」というお母さんたちの熱い思いです。

 かくいう私にも、ふたりの男子がおります。ですからわが子を大切に思う親が、子どもの欠点を直したいことは、よくわかります。

 

 しかしこんなとき、実は、心のなかで子どもを非難する感情も渦巻いているのではないでしょうか?

「うちの子はやっぱりダメなのか」
「何をするにも時間がかかるなあ」
「こんなことも満足にできないなんて」
「せめて平均点くらいはとってきてほしい」
「すぐにあきらめるクセがある…」

 愛するわが子を否定するなんて、内心穏やかではないのですが、目の前の子どもの行動を見るうち欠点ばかりが際立って、ついそれを責め立てる言葉が出てしまう。子どもを否定する「短所口撃」です。

 

 こんな「短所いじり」が、子どもの心をへし折り、学力を落としている原因だとしたら、あなたはどう感じますか?

 

 私は20歳のときに学習塾を開業し、これまで3500人以上の子どもたちに直接指導してきました。講演やセミナーを含めると、教えた子どもの数はのべ5万人にのぼります。そこで出会ったたくさんの親子に触れて確信したことは、

・親の短所いじりが子どもの才能をつぶしている
・長所を伸ばすことで子どもの学力や才能はぐんぐん伸びていく

 という事実でした。

 

 これには「自己肯定感」が関係しています。

 自己肯定感とは、自分を肯定する気持ちを持つことです。「自分のことを価値がある人間である、素直に大切な存在であると信じる心」だと私は捉えています。

 自分のことを好きだと感じ、自分に自信を持っている、ポジティブな気持ちです。

 

 自己肯定感が高い子どもは、

・進んで勉強ができる
・自分の意見をきちんと伝えられる
・むやみに傷つかない
・人にも自分にも寛容(やさしい)
・失敗をおそれない
・無用ないさかいをしない…

 などなどの「よいところ」がたくさんあります。

 

 自分を信頼できるのと同時に、他人のことや、自分をとりまく世界のことも信じられるため、協調性が高く、おのずと物事を楽観的に考えるクセがついています。

 多くの経験を通して、失敗に対して耐性ができており、進んで挑戦を楽しみます。こうして、トライ&エラーを繰り返しながら、成功のチャンスを広げていくのです。

 自己肯定感が高い子どもは「幸せな人生を自分でつかむ土台」ができているのです。

 

 子どもの自己肯定感を高める方法については、拙著『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』(集英社刊)に詳しく書いていますので、ぜひご一読ください。

 

 さて、話は少し変わります。

 2020年春から、新型コロナウイルス感染症が世界中を席巻し、だれもが想定しない災禍のなかで生きていかざるを得なくなりました。

 コロナがもたらしたある種の強制的な社会の変化は、世界情勢や経済の流れのみならず、私たちの生活そのもの、意識をも大きく変容させ続けています。

 混乱する状況下で、いくつもの新しいルールや仕組みが試され、淘汰を重ねながら生き残る個人や組織が評価されることになるでしょう。

 もちろん教育の世界でも、授業や講義のリモート化、試験のオンライン化など、目まぐるしい変革が起きています。

 ポストコロナの世界は、われわれが体験したことのない未曽有の空間になることは容易に想像ができます。

 

 21世紀に入ってすでに20年が過ぎ、教育や子育てのメソッドは徐々に変化してきました。しかしそのゆるやかな変化は、コロナ禍により想定外のスピードで進み、これまでなかった常識へ着地するでしょう。いや、何を以って着地となるのかさえわかりません。

 ただひとつ確かなことは、ポストコロナの時代に求められるのは、大量生産、大量消費の時代に重宝された「人と同じであること」ではないということです。

 昭和の時代のサラリーマンのように、大企業の一員を目指そう、多数派のつくるスキームに乗って無難に世渡りをしよう、そんな時代遅れのたらい船に乗ってみたって、もう明るい航路は見えません。日本だけにあった「終身雇用」という雇用常識は、遠くない未来に崩れ去っていくでしょう。

 そうでなくたって、インターネット社会の成熟により、日本でも働き方の様式が大きく変わってきています。だれもが情報発信をできるようになりましたし、どこにいたってあらゆる情報を集められるようになりました。

 オフィスへ出かけなくてもリモートで仕事はできますし、世界中の人たちとリアルタイムでつながることができるのです。こうした変化が、社会と働き方を大きく変えていきます。

 自分が好きなことを仕事にするチャンスは増し、自分にしかできないこと、個人の個性や能力が、より明確に問われる社会がやってくるのです。

 そんな新しい時代を生きる子どもに求められるのは「知識をフレキシブルに使って、個性を生かす」能力です。言い換えれば「いくつになっても、どんなところでも、強く楽しく生き抜いていく力を磨いた人間」でしょう。

 

 私が講演会やオンライン配信でそんな話をすると、多くの親御さんが不安げな面持ちでこうおっしゃいます。

「うちの子には、そんな特別な才能や能力なんかありません。世の中が変わるなら、よけいに人並みのことをできるようにさせなければと思ってしまいます」と。

 親御さんが思い描く「特別な能力や才能」とは、たとえば10代のプロ棋士、天才ジュニアゴルファー、テレビで話題のキッズプログラマー、若き画家やデザイナーでしょうか。

 しかし、ごく一部の天才やトップアスリート、クリエイターたちをひきあいに「うちの子は天才ではないので、これまでどおり一般常識を叩き込んでいきます」と決め込むのはいかがなものでしょう?

 

「子どもはみんな天才です」

 こんな大げさなことを言うつもりはありません。でも、子どもたちはみんな、その子ならではの才能のかけら、個性的な能力の種子を持っています。それはとてもささやかで、さりげないため、ほとんどの親御さんが見過ごしてしまいがちです。欠点や短所だと見誤っているケースも、大変多い。

 

 子育てには、正解はありません。しかし、子育てに「大間違いはある」と知っておいてください。

 

 この本は、冒頭の設問に答えられなかった親御さん向けに書きました。今まで気づかなかった長所を伸ばすと、子どもの成績がぐんぐん上がる。これは、実証済みのこと、間違いありません。

 ですから、まずは、この本で提案する習慣を試してみてください。そのうち、子どもだけでなく、ママさんやパパさんの笑顔まで輝いていくはずです。

 

 さあ、楽しい未来へ向けて、いっしょに始めてみましょう。

<第2回に続く>

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