子どものテストが「算数90点、国語50点」だったら何と声をかけますか?/子どもの長所を伸ばす5つの習慣⑥

出産・子育て

公開日:2021/6/20

石田勝紀著の書籍『子どもの長所を伸ばす5つの習慣』から厳選して全7回連載でお届けします。今回は第6回です。これからの時代、特に子どもに必要とされる「個性」を伸ばすために必要なこと、長所を伸ばす子育てとは何か? その意義と具体的な方法について、わかりやすく指南してくれる一冊です。

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子どもの長所を伸ばす5つの習慣
『子どもの長所を伸ばす5つの習慣』(石田勝紀/集英社)

凸凹だって大切

 子どもの短所が目についた親は、何とかしてあげたいと考えます。そして多くの親は、子どもの優れたところはあっさりスルーして、劣っている部分を矯正しようとします。

「みんなができないことより、みんなにできることができるようになってほしい」と願って、短所を矯正して、みんなと同じように平均化しようとするのです。

 お子さんを心配する気持ちは理解しますが、みんなと同じように「平らにならす」ことは必要でしょうか?

 

 私なら、劣っているところを矯正しようとはしません。もっと伸びるかもしれない優れた芽を、摘んでしまうことになりかねないからです。

 ここでふたつの例を紹介しましょう。不得意な教科を克服させようとするケースと、得意な教科を伸ばそうとするケースです。

 

〈子どものテストが「算数90点、国語50点」だったとき〉

①不得意な教科を克服させるケース

 親の心の声(算数はいいけど国語がね…)

 親「算数はもういいから、国語の成績を上げられるようにがんばろうね」

 子「わかった」

 親の期待に応えたい子どもは次のテストでがんばります。首尾よく「算数70点、国語70点」をとってきました。

 親「70点と70点を合計して140点ていうことは、前回と同じね。褒められる点数じゃないけど、平均点がとれたなら、まあいいかな」

 子「…」

 はじめのテストで残念だと感じた気持ちを言葉にして、短所いじりをしてしまっています。さらに2回目のテストをがんばった子どもに対して反応をしないで、しぶしぶ納得しています。子どもは、モヤモヤします。

 

②得意な教科を伸ばそうとするケース

 親「いいね! このまま算数をがんばろうか」

 子「わかった!」

 子どもは得意の算数でまた高得点を出せることを想像し、ワクワクしながら勉強します。2回目のテストでは「算数95点、国語75点」と驚くような高得点をとりました。

 親「95点と75点を合計して170点。30点の成績アップだね」

 子「やったー!」

 これが、成績がいいほうの科目をさらに強化した結果です。注目したいのは、得意科目を伸ばすと、要領を得たかのように苦手科目の成績も上がることです。得意科目を伸ばすとすぐに苦手科目が上がる場合もありますが、通常は少しタイムラグがあります。しかし、まずは得意科目をさらに引き上げる方法のほうが、最終的に苦手科目をも伸ばす結果になるという事例は枚挙にいとまがありません。

 

 ひとつの「得意」やひとつの「好き」にのめり込むことで、子どもは、学びの方法、学ぶコツを習得し、自信をつけていきます。そして「夢中になってやった経験」は、他のフィールドでも生かされることを知り、自分なりに応用します。こうして苦手だった国語の成績も、いつのまにか伸びていくのです。

 

「得意分野を伸ばすと、苦手分野も伸びていく」ケースは、土地の耕作にたとえるとわかりやすいかもしれません。

 

 ここに「肥沃な土地」と「不毛な土地」があるとしましょう。

 Aさんは、まず収穫量が少ない不毛な土地を改良しようと考えます。時間と労力がかかり過ぎるので、肥沃な土地はしばらく放っておきます。

 すると、がんばったわりに、不毛な土地にはいつまでたっても作物が実る様子はありません。いっぽう放置された肥沃な土地は、いつのまにか枯れ果てて、作物がとれなくなってしまいました。

 Bさんは、肥沃な土地に、より時間と労力をかけてもっと収穫量を増やそうと考えました。

 すると、肥沃な土地の収穫量は増大し、不毛だった土地を改良する余裕すら出てきます。肥沃な土地はもともとの土壌が豊かなため、さらに手をかけることで、飛躍的に収穫量が増えるのです。そして余裕ができたので、不毛な土地にだって、これから手がまわせそうです。

 

 あなたなら、AさんとBさん、どちらのやり方を選ぶでしょう?

 Bさんのように、凹んだところをいじらず、秀でたところをまず伸ばすことができれば、成功が手に入るのです。

 

 子どもは、そもそも未熟で不出来で、凸凹だらけ。それぞれ性格も才能も違う、固有の個性を持っています。親は子どもに「普通」や「一人前」を要求しますが、全部が「スタンダード仕様の子ども」なんて、そもそもひとりもいやしません。

 相対性理論を発見したアインシュタインでさえ、子ども時代は数学と物理以外は、ずいぶん不出来だったようです。さまざまな偉人伝を読んでみると、天才たちの子ども時代は、凸凹な人間の集大成みたいにぶっ飛んでいるのではないでしょうか?

 

 凸凹があるのが子ども。だれひとり同じ遺伝子ではできていませんし、違うからこそ意味があります。

『世界に一つだけの花』のように、みんな固有の価値を持ち、それぞれ輝いているのです。

 凸凹が多い子どもほど、将来が楽しみですね。

子どもの長所を伸ばす5つの習慣

<第7回に続く>

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