小心者のパーソナルスペース/前島亜美「まごころコトバ」⑤<前編>

アニメ

更新日:2021/6/7

アイドル活動を経て、声優や舞台を中心に活躍中の前島亜美さん。常にまっすぐ生きる彼女が、何を思い、感じ、触れてきたのか。心にあるコトバを真心(まごころ)こめて紡ぎます。

前島亜美「まごころコトバ」

 声優の活動で驚いたことのひとつに“私服稼働の多さ”がある。

 それまではグループ活動が多かったので必ず衣装があった。

 個人の仕事でもスタイリストさんが用意した衣装があり、舞台や雑誌、制作発表などその時によって違う衣装を着てきた。

 声優の活動をすることになってからラジオや生放送はもちろん、イベントや制作発表なども私服のことがほとんどで、人によってはスタイリストさんをつけている方もいるが、基本的には私服だったので、どんな洋服を着ればよいのか最初は悩むことが多かった。

 必然的に、洋服を買う機会が多くなっていた。担当キャラクターに合う色、作品のテイストに合う服など……。

 今でこそネットでの購入がほとんどとなったが、少し前までは毎度のようにいくつもの店舗を回り洋服を探し歩いては悩んでいた。

 その時なによりも気を使っていたのは“お店での立ち回り方”だったと思う。いかに店員さんに話しかけられないようにするか、スムーズに買い物を終えることができるか。大きめのヘッドフォンをするなどして店員さんとの距離を縮めないようにしていた。

 店員さんもお仕事で、優しく話しかけてくれるが、“どんな服を探して”とか“普段はどういう服が好きで”とか、そういう会話を私はなかなかスムーズにできず、できればお話をすることなく会計まで辿り着きたかった。

 私は“パーソナルスペースが広いタイプの人間”なので、急にグイッと距離を縮められるとついドキッとして圧倒されてしまう。これは洋服屋さんに限らず、仕事以外の場所で人と関わる時に感じることが多い。

 小心者な面もあり、向けてもらった優しさを無視するようなことはしたくないので、会話をしたりオススメを聞いたりはするが、どうしても疲れてしまうことが多く、なぜ自分はそう思ってしまうのかと考えてみた。

 思うに、芸能人としてのではなく、“知り合いのいない場所”という意味のプライベートにおいて、初めましての人に“自分に目を向けられる”ということがシンプルに苦手なのかもしれない。

 悪意や拒絶ではなく、なるべく自分の情報を知らせないようにと思う一方、少し話した印象で自分が判断されることも避けたいと思ってしまい、相手の温度に寄り添うというのがなかなか難しい。

 結果的に、相手がどんな人かわからない状態で、自分の準備ができていないまま一気に距離を縮められると、怖いと感じてしまうんだと思った。

 幼い頃はあまり意識をしていなかったことだったが、芸能活動を始めて“自分が認識する以上の多くの人の目”に晒されるようになった頃から、仕事以外での安息時間をより大切にしたいと思うようになった。

第5回<後編>に続く

まえしま・あみ
1997年11月22日生まれ、埼玉県出身。2010年にアイドルグループのメンバーとしてデビュー。2017年にグループを卒業し、舞台やバラエティ番組などで活躍。またアプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(2017年)でメインキャストの声を演じ、以後声優としても活動中。また、俳優座劇場で行われる朗読劇『青空』に出演が決定。6月21日(月)、6月27日(日)の回に出演する。

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