自分を変えてくれた運命の人によって開花していく、元モブ少女の青春ラブストーリー!『サクラ、サク。』/マンガPOP横丁(64)

マンガ

更新日:2021/6/18

サクラ、サク。
『サクラ、サク。』(咲坂伊緒/集英社)

 今回は誰もが前向きになれることを教えてくれる恋の物語をご紹介! 誰かに存在を認められるようにしていけば、良いことは連鎖していくもの。はりまでたとえると、書店員時代、業務のスキマ時間にいろいろとPOPを書いていたら、社員の方が私の制作能力を見出し、何百人といるスタッフの中で唯一のPOP専門職として表舞台に堂々と立たせてもらえた。この快挙をキッカケに、数年間コツコツながら積極的にさまざまなPOP活動をし、この連載まで到達することができた。

 このように誰かが気づいてくれたおかげで、モブだった毎日から名のある役をもらうチャンスはいくらでもあると信じている。『サクラ、サク。』(咲坂伊緒/集英社)には、そのモブだった自分が変わることを描いた青春ラブストーリーだ。ちょっぴり強引な本題入りであったことは許してねっ!てへぺろ。

 主人公の少女・藤ヶ谷咲(ふじがやさく)は、演劇の役どころで言えば「その他大勢」の“モブ”なキャラ。ある日電車で咲は貧血を起こしてしまう。ダメかと思っていたその時、誰かが窓を少し開けたことで涼しい風が吹き込み、咲は楽になり最悪の事態を免れる。次の駅までなんとか耐えた咲は電車から降りようとすると、乗客の波に飲まれてカバンだけが車内に残されてしまい、ショックのあまり咲は倒れてしまった。

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 気づいたら駅の応急室のベッドの上。咲が部屋にいた駅員にたずねると、カバンをわざわざ折り返してまで届けてくれた人がいたとのこと。そのカバンはおばあちゃんに作ってもらったとても大切なものだったこともありホッとする。さらにその人は、車内で具合が悪くなっている咲に気づき心配してくれていたとか。こんな自分を見て助けてくれるというその優しさに、感謝以上の気持ちで満たされる咲。そして駅員はカバンを届けてくれた人の名前と連絡先を控えてくれていて、咲はそれを受け取る。名前は桜。咲にとって“神様”の名前だった。「その他大勢」の自分に気づいてくれたというこの出来事をキッカケに、咲は困った人を助けていくことを決意する。自分が世の中の登場人物として“名前”が付き、運命が変わった瞬間だった。

 そして時は流れ、入学した高校で運命の出会いが訪れる。キッカケは名前の聞き間違いからだった。「さく」と呼ばれたと思ったら実は「さくら」……。振り向いたのは、咲ともう1人。「桜」という名の男子との出会いだった─。

 果たしてカバンを届けてくれた“神様”との関係は。自分を変えてくれた運命の人に導かれ、繋がる青春の物語が始まる。

 人に優しくしながら前向きに成長していく少女の青春の日々を描いたこの作品は、今あまり明るい状況ではない人へ、少しでも希望の花を咲かせるための手助けをしてくれるはず。心のバイブルとしてオススメしたい。

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

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