銀行が「すぐに使わないお金」を集めるのはなぜ? 銀行の役割を知ろう/14歳の自分に伝えたい「お金の話」⑧

暮らし

公開日:2021/7/7

藤野英人著『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』から厳選して全11回連載でお届けします。今回は第8回です。「僕らのお金の使い方」が“社会の未来”を左右する――。稀代の投資家が「14歳の自分」に伝えたくなった、お金に使われず、お金で苦労しないための「考え方」とは? 一生役立つ「お金の話」が詰まった、老いも若きも必読の一冊です。

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14歳の自分に伝えたい「お金の話」
『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(藤野英人/マガジンハウス)

銀行はお金を社会に循環させている

 お年玉やお小遣いをもらって、すぐに使い道がないとき、そのお金をどうしていますか? 堅実家の君は「銀行に預けている」と答えるんじゃないかな。

 銀行はたくさんの人から「すぐに使わないお金」を集めています。では、集めたお金で銀行は何をしているのでしょうか?

 巨大な金庫に札束をためて寝かせているわけではありません。銀行は集めたお金を「社会に循環させる役割」を担っています。

 例えば、30代の夫婦に子どもができて、「今住んでいるアパートだと狭くなるね。もう少し広い一軒家を買いたいね」と話し合って、住みたい家を見つけたとします。

 でも、夫婦の収入や貯金では、何千万円もする一軒家を買うのは難しい。だからといって、お金が貯まる年齢まで待ったら、子どもたちがとっくに成人する頃になってしまう。そう、人生には「お金が前倒しで必要になるイベント」が時々あります。その典型例が住宅購入なのですね。

 お金がなくても家が欲しい。そんな人にお金を貸して、分割返済できるサービスを提供しているのが銀行です。数千万円の買い物を、月数万円からの分割払いで可能にする「住宅ローン」は、たくさんの人の人生設計に深く関わっています。

 

 住宅ローンは原則として個人向けに貸し付けをするサービスですが、同じように会社にも銀行は貸し付けをしています。

 例えば、新しい製品をつくるための工場建設を計画している会社に対して、工場を建てるための費用を貸す。

 工場の規模によって、その費用は億単位の莫大な金額になるかもしれませんが、新しい工場で生産される製品が素晴らしく、多くの人に支持されてヒットとなれば、その会社はたくさん儲かって、銀行から借りたお金をしっかり返済できるでしょう。返済するときには、借りたお金にいくらかプラスして支払わなくてはなりません。これを「利息」と言います。そして、利息の一部が銀行の利益になります。

「前倒しで夢を叶えたい人や会社にお金を貸す」というビジネスは、相互にとってメリットを生む、非常にうまくできた仕組みなのです。

 

 僕が最近お話を聞いた東京在住の中学2年生、ひなこさんは「素敵な空港をつくるのが夢」なのだそうです。

 ご両親と行った海外旅行で、イギリスにあるヒースロー空港に降り立ったことがきっかけで、「空港の中に電車も通っていて面白かった。私も、街みたいな空港をつくってみたいから、将来は建築家になりたいと思っています」と楽しそうに話してくれました。

 ひなこさんが建築家になって空港をつくる仕事が実現したときにも、きっと銀行からお金を借りる(一般的には「融資を受ける」と言います)ことになるでしょう。

 そして街みたいで素敵な空港が完成したら、きっと評判になって、たくさんの人がひなこさんがつくった空港を利用するはずです。

 するとお金を貸した銀行も喜ぶはずですが、それだけではありません。空港で職を得た人の暮らしが潤い、家族が増えて、税金を納めて、社会も豊かになっていく。

 ひなこさんの夢から広がる「豊かさ」の連鎖は、果てしなく無限です。

 夢にお金を貸すことの素晴らしさは、ここにあると思っています。

 

 ちなみに、僕の「投資家」という仕事も、銀行の役割と近いことをしています。もっと直接、夢を応援する仕事と言えるかもしれません。その話は後ほど、またゆっくりとすることにしましょう。

 ここまでの話で気づいた人もいるかもしれません。

 今年の初めに、銀行に預けた君のお年玉は、今ごろ何をしているのでしょう? きっと、社会の隅々までめぐって、誰かの夢を応援しているはずです。

<第9回に続く>

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