無駄な会議では得られない、結果を出せるビジネスパーソンが持つ思考/「疑う」からはじめる。④

ビジネス

公開日:2021/7/15

澤円著『「疑う」からはじめる。』から厳選して全8回連載でお届けします。今回は第4回です。常識に縛られたら、思考は停止する――既存の価値観、古い常識、全部疑ってみよう。問題設定と解決策は、すべてここからはじまる! 元マイクロソフト伝説のマネジャーが新時代の働き方、生き方、ビジネススキルを提案する1冊!

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「疑う」からはじめる。 これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉
『「疑う」からはじめる。 これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(澤円/アスコム)

「報告・連絡」のための会議には出ないと決める

● 時間は未来のためだけに使う

 近年よく目にするキーワードのひとつが、「働き方改革」です。世界的に見て、日本企業の生産性が非常に低いことは紛れもない事実なので、改革が必要なのはたしかかもしれません。

 ビジネスパーソンなら、「日本人の働き方は非効率だ」というニュースやビジネス雑誌の記事を目にしたことがあると思います。

 ある調査では、日本の就業者一人あたりの労働生産性は、G7のなかでなんと20年以上連続で最下位。OECD加盟35カ国中でも、21位という結果でした (公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2017年度版」調べ)。

 おそらく公表されている数値だけで計算されているので、サービス残業なども含めれば実際はもっと悪い数値だということも十分に考えられます。ちなみに2020年もG7のなかで最下位と、不名誉な記録は更新中です。

 なぜこんなことになるのか?

 僕はいつも、日本人は「決める会議」ができないことが原因のひとつではないかと感じています。というのも、かつてマイクロソフト社にいたとき、僕のチームに日本企業の人がビジネスインターンというかたちで常駐していたのですが、そのうちのひとりの言葉に衝撃を受けたことがあるからです。

 彼がある日、僕に対してこう言ったのです。

「会議でなにかが決まるところをはじめて見ました」

 僕は会議でなにも決めないなんて絶対にしないし、そもそもなにも決まらない会議は招集自体しないので、この言葉を聞いて心底驚いてしまったのでした。

「日本企業には無駄な会議が多い」とはむかしから言われていることですが、いつになっても改善されません。なぜか。それは、「会議でしたほうがいいこと」を理解していないからだと僕は考えています。

 たとえば、ビジネスパーソンにとって「報連相という言葉はおなじみですよね。このなかの「報告」に使うレポートに膨大な作業が発生していたり、「連絡」を対面で行ったりすることで時間を浪費している傾向があるのです。

 考えてみれば、「報告」と「連絡」は過去から現在までのすでに起きたことについての話なので、本来はITツールを用いて自動化し効率化できるはず。

 データは、「見ればわかる」ものです。それをわざわざ時間を使って、人を集めて報告させることにまったく意味はありません。また、出席者は会議のために移動しなければなりません。コロナ以降だいぶ考え方に変化は出ているようですが、ビジネスにおいて移動時間はなにも生み出さないので、これもまた無駄なものです。

 つまり、会議という立派な名目で、報告という無駄なことをさせ、さらに移動という時間の無駄まで発生させている。連絡はいまならチャットで十分で、電話する必要すらありません。おそらくは、「目上の人に直接会わずに報告や連絡をするのは失礼だ」という意識が広く強く共有されているため、利益を度外視してまで無駄な時間をかけてしまうのでしょう。

 一方、「相談」は未来の話をすること。僕はこの部分は対面で話す価値があると考えています。つまり、「未来のことを最大化」するために働くというわけです。

 これからどうするか、次の一手はどうするかという未来の話は、生産的で楽しいものです。楽しい仕事だけが残るわけで、楽しい仕事なら誰もが高いモチベーションで臨んでくれるにちがいありません。誰だって、夢やビジョンを語るのは楽しいのです。

 結果を出せるビジネスパーソンに共通しているのは、「未来志向」を持っていることだと僕は思います。「時間はなんのためにあるか」と考え、未来を良くするために使うところに思考を持っていかなければいけません。

「報連相」でいう、「相」の部分が、まさに先に書いた「ゼロを1にする」ための時間になっていくのです。

 そこで、今日からあなたの働き方を変えるために必要なのは、高額なツールを買うことでもコンサルタントに頼ることでもなく、こんなマインドセットを持つこと。

 過去のことに時間を使わないためには、どうすればいいだろう?

 過去に学ぶ必要はありますが、過去の出来事そのものが変わることはありません。過去に起きたことに一生懸命に時間を使うのは、とてつもなく無駄なことなのです。

 

● 膨大なタスクを効率的にこなすタスクの3原則

 過ぎ去ったことに時間を使うのではなく、未来に目を向けること――。

 未来のことに時間を使うためには、いま現在のタスクを効率良くこなして「考える」時間をつくる必要が出てきます。

 あなたのまわりには、すごく忙しいはずなのになぜかゆったりしているように見える人はいませんか。あくせくしていなくて、いつも悠々とした雰囲気の人。こうした人たちは、優先順位の立て方が上手なこともありますが、タスクを効率的にこなすための「3つの原則」を確実に身につけています。

①できるタスクとできないタスクを理解している。
②やると決めたひとつのタスクに集中している。
③タスクにかかる時間を把握している。

 順に説明します。

 ①できるタスクは自分でやりますが、自分がやるとかえって時間がかかる優先順位の低いタスクは、迷わずアウトソーシングする。具体的には、得意な人にやってもらったり、ツールを使って自動化したりするとベスト。また、「タスクとして捉えない」という選択肢もあります。そうした観点から、まずはタスクを取捨選択します。

 ②やると決めたタスクに集中しましょう。ひとつのタスクに集中して取り組むと、スピードが上がり作業にかかる時間が短くなります。

 ③それぞれのタスクにかかる時間を把握しておくと、急用が入っても予定を調整しやすくなります。たとえば、ある作業に2時間かかると知っていれば、たとえ急用で中断しても、前後1時間ずつ振りわけるなどして確実に終えられる算段ができるでしょう。

 このように、自分が得意なことを着実に行いながら同じようにほかの人にも得意なことをしてもらい、ともに突っ走れる仲間を増やしていくこと。そのためには、「原則①」がより大切なポイントになります。ここでのアウトソーシングを、僕はこう呼んでいます。

 他人と「時間の貸し借り」をする。

 たとえば、僕はプレゼンを専門分野にしてきたので、限られた時間でオーディエンスにインパクトがある話をすることは得意中の得意。だからこそ、プレゼンの依頼が多方面から舞い込みます。

 プレゼンで大切なのは、コンテンツ(中身)と当日のパフォーマンスに尽きます。ですから、まずはプレゼンに集中できる最良のコンディションをつくることに注力しなければなりません。

 そこで、コンテンツの材料となるクライアントのプロファイル分析や事業内容の精査は他者と協働することにしています。いわば、他者の時間を借りるわけです。ほかにも、当日の参加者や前後のプレゼンのバランスなどについての質問も投げかけておき、情報収集をまかせています。

 なぜこんなことができるかと言えば、まわりから「この人がオーディエンスにもっともインパクトを与えるプレゼンができる」と思われているから。言い換えると、僕は僕で得意なことを他者から丸ごとまかされているというわけなのです。

<第5回に続く>

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