毎回が相方との真剣“笑”負!シェアハウスする5人の若手芸人の苦悩を描いた青春ドラマ『ニラメッコ』/マンガPOP横丁(69)

マンガ

公開日:2021/7/23

ニラメッコ
『ニラメッコ』(久世岳/白泉社)

 今回この作品を取り上げるとなった時に、まさかタイムリーなドラマが来るとは思ってもいなかった。というのは、つい先日在阪キー局で開催された若手芸人の大きな賞レースが行われた。そこから決勝戦に勝ち残るのは3組なのだが、うち2組に一部の人は注目していた。そのコンビはオズワルドと蛙亭。お笑い関係が好きな方はお分かりかと思うが、オズワルドの伊藤さんと蛙亭のイワクラさんはシェアハウス芸人でしかも同じ屋根の下で暮らす者同士。同居人が大きな賞レースの決勝で戦うというのはなんという胸アツ展開なんだと話題になった。

 ということで、当コーナーとしては大変ありがたい、ベストなタイミングとなった。その内容とは、まさに売れたい芸人同士がシェアハウスしながら生活する青春物語。久世岳先生の『ニラメッコ』(白泉社)をご紹介する。

 お笑いコンビ・ニラメッコの水吉令とその相方の朝木和は、3人のお笑い芸人とシェアハウスで暮らしていた。ちなみにその3人とは、お笑いコンビ・潮来の八潮侘助と来海小太朗、門真アミーゴの土井柴雄。そんな彼らのシェアハウス歴は2年。今日も劇場で同居人との競演もあれば、番組のロケに行くなど目の前にある仕事をこなす毎日を送っていた。

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 そんな彼らにそこそこエグい、舞台ウラでの試練が次々とやってくる。例えば劇場の楽屋で先輩芸人にからかわれること。ニラメッコがその標的にされると、朝木の短気な性格にスイッチが入り牙を剥いてしまう事態に。まだまだ駆け出しの若手芸人コンビゆえ、変なトラブルで芸能界に居づらくなるのを避けねばと、これには水吉のフォローでことなきを得る。このほか、テレビを点ければ映る同期の活躍や、ネットで発言するアンチな人たちからの感じの悪いコメント。彼らはこれらと日々向き合いながら笑いを追求し、今日も相方と舞台のセンターマイクの前に立ち、奮闘しているのであった。

 日本のお笑い芸人は、インディーズ系も含めれば万単位の人数はいるであろう、競争率の超高い世界。もちろん私はお笑いの世界に足を踏み入れたことはないので詳しくはわからないが、実際にこんなにシビアで心がタフで、なおかつお笑いについて純粋に追求できる人でないと成り立たない世界なんだろうと考えさせられた。特に、「背中に流れる滝のような冷や汗はあと何回舞台に立てば出なくなるだろう」というセリフは、いかにお客さんを笑わせるのが大変かを痛感させてくれる。

 さて、そこへ売れっ子になるために日々生き残りをかけたサバイバルに挑んでいるニラメッコのコンビ名には、劇場の観客はもちろんだが、それ以上に水吉の、相方・朝木への思いが含まれている。ネタで相方を試す“にらめっこ”。彼がハマれば観客もハマる、そういうことなのだろうか。毎回が真剣勝負だ。そんな朝木はトラブルメーカーな部分もあり、そんな彼に手を焼く水吉は朝木の教育係も兼ねていてうまくバランスを保っている。ちなみに水吉が朝木へとある一言をかけ、褒めて伸ばすエピソードが微笑ましくて個人的に好きだ。

 ニラメッコとともにシェアハウスするコンビ・潮来の八潮と来海との競演エピソードや門真アミーゴの土井の今のお笑いへの思いをにおわせるエピソードなど、それぞれの舞台ウラも盛りだくさん。苦悩しながら成長していくシェアハウス芸人のこれからの活躍がとても楽しみなところ!

 ところでこの作品の作者である久世岳先生は、アニメも放送されている人気作『うらみちお兄さん』(一迅社)も描いている。先日そのアニメの第2話を観ていたらなんと門真アミーゴが出ていてビックリ! 原作を読んでいなかったので知らなかったが、のちに調べてみたら門真アミーゴのシェアハウスしてない方の須胡井宙太があちらの物語の登場人物らしいのだ。今後何かしら繋がるとか物語の相互リンクを期待しちゃうぞっ!

 最後に。今回のPOPは、お笑いを追求する芸人たちの熱い思いを込めて。これに尽きます。

「真剣勝負」かつ「真剣“笑”負」の“笑(ショー)”タイム青春ドラマです!

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

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