偶然の再会で初恋が再開する、熟年男女のヴィンテージ級ピュア恋物語!『五十、六十、よろこんで。』/マンガPOP横丁(70)

マンガ

公開日:2021/7/30

五十、六十、よろこんで。
『五十、六十、よろこんで。』(ワイエム系/リブレ)

 こんな出来事はまさに奇跡でしかない。それまでにかかった時間、約40年。

 初恋。そのほとんどは片思いで始まるが、その経験の未熟さゆえ、気持ちを相手に伝えることはできずに淡い思い出となって終わってしまう。多くの方がこのパターンではないだろうか。少なくともはりまはそうだった。あれは小学生時代、同じクラスの……なんてここではお話ししませんよ! ご自身の初恋に今も未練をお持ちの方はもちろん、特に現在進行形で実はそのチャンスをお待ちの方にはこんなとても夢のある作品があるんです。『五十、六十、よろこんで。』(ワイエム系/リブレ)には、ずっと片思いし続けた熟年男性と女性の再会からあの時の青春を再開させるとってもピュアな初恋ドラマだ。

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 この物語の主人公のひとりである五十嵐明希は、熟年離婚をしたばかりで実家に出戻っていた。そんな彼女に運命の出来事が訪れる。それは、イケメンとして歳を重ねたもうひとりの主人公である六条滋政との再会だった。久しぶりにかわす会話。その中で滋政はなぜ地元に戻ってきたのかを聞き、その経緯を明希は打ち明ける。この時点で明希が独身になったと知った滋政は早速明希へデートを申し込む。そのあまりの急な展開に明希は滋政へその理由を聞くと、

「何十年も片思いした相手とのチャンスが巡ってきて、思わず…ね」

 これに明希は赤面&心拍数が爆上がり! 滋政との久々の再会を終え帰宅する明希。そしてひとりになった途端に彼女を襲う戸惑いと悶絶、おさまらない胸の鼓動。突然、何十年も片思いをしていたと告白してきたのだから当然のこと。ちなみに滋政は明希が10代の頃から兄のような存在として慕ってきた男性。いくら仲が良かったとはいえ、さすがに本気とは思えない明希。なぜなら彼は超ハイスペックのプロフィールを持ち、女性には困らないルックスだったからだ。そんな疑問を持ちながら、思春期の頃の自分が少しよみがえりデートの準備をする明希であった。

 そして迎えるデート当日。明希が家を出ると、気持ちが落ち着かなくて早く明希の家に着いて玄関前で待っている滋政の姿が。ちょっと恥ずかしがる滋政を明希がからかい、和んだ雰囲気でふたりのデートはスタート。その初っ端から滋政は、さっきの明希からのからかいの反撃なのか、ときたま明希をお子様扱いする。しかしそこはハイスペックの滋政、それ以上に紳士な対応で明希をフォロー。その度にドキッと赤面しちゃう明希が。この日はレストランでのディナー。そこでまた次のデートを申し込む滋政。そのデートの内容は……「大人のデート」!?

 滋政の好きで溢れたアプローチが熱い、ふたりのあの頃の青春と初恋が再び動き出す。

 歳を重ねると、もう若い頃のようなピュアな恋には出会えない。そんな失望を消し去ってくれる、恋愛は何歳でもできるということを描いたとても希望に溢れた作品だ。本編では後で判明するのだが、ハイスペックダンディの六条滋政は御年60。一方、滋政が片思いする五十嵐明希は50歳。明希が10代の頃からの仲ということで、実に40年越しの初恋の再開となる。外見は完全なる熟年カップルでも、このふたりのデートの様子はまさに思春期の男女そのもので、非常に可愛く見えて微笑ましい。よって読んでいくうちにふたりの年齢が自然と気にならなくなるので、老若男女全ての恋物語好きにオススメしたい。そしてなんといっても滋政のダンディすぎるエスコートも必見。さらに実は滋政のことを陰ながら支えていた人の参戦も……。ここでは書き切れなかったドキドキシチュエーションや恋の試練(?)にきっと目が離せなくなるでしょう。

 思いを変えず未婚を貫いた滋政のとてもピュアな恋が尊いこの物語はまさに「ヴィンテージ級」! そんな50歳と60歳のラブストーリーをご紹介した、70回目のマンガPOP横丁でした。

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

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