書を捨てるな、旅にも出ろ/小林私「私事ですが、」

エンタメ

公開日:2021/8/7

美大在学中から音楽活動をスタートし、2020年にはEPリリース&ワンマンライブを開催するなど、活動の場を一気に広げたシンガーソングライター・小林私さん。音源やYouTubeで配信している弾き語りもぜひ聴いてほしいけど、「小林私の言葉」にぜひ触れてほしい……! というわけで、本のこと、アートのこと、そして彼自身の日常まで、小林私が「私事」をつづります。

イラスト:小林私
イラスト:小林私

初めまして、小林私です。
この度ダ・ヴィンチニュースさんでの連載が決定しました。
なんで?

特に賄賂を渡した覚えはないのですが、有難いことに連載のお話を頂きました。
これは噂なんですが、以前「天才の愛」というくるりの新譜のレビューをさせていただいたところ、それを読んだダ・ヴィンチニュースの方から推薦いただいたそうです。

まず小林私を知らない方に簡単に説明すると、普段は音楽を作ったり絵を描いたり主に何かしらを作ることを楽しんでいる人間です。
そういう生き方をしていると時々聞かれることがあります。
それは、

「何故作るの?」
「作っている間どんなこと考えてるの?」
「パンダって元々レッサーパンダのことだったのにジャイアントパンダが発見されてからレッサー(より小さい)という冠をつけられたの可哀想だよね」
「好きな動物は?」

今回は小林私がどんなことを考え作品を制作しているか、
これについてお話しします。好きな動物はサイです。

 

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まず初めに、何故こういう話をするのか、というところから説明しておきます。
僕はある一つの強火の思想を持っています。
それは
「世界人類全員が作品を出せば面白いのに」
という思想です。

いや、広い目で見れば誰もがアーティストさ。エアコンやペットボトルもアート、果ては今飲んでいる水だって、この地球というアーティストの作品なのさ…

と、そういうわけにはいかないので個人的な”作品”の定義を一旦取り決めておくと、
“これは自分の作品だという意識を持って作られたもの”としておきます。
(勿論、例えばアウトサイダーアートのようなこれからは外れたものも全然あるので例外はめちゃくちゃたくさんあります。「修悦体」とか一口で定義出来ないし)

 

さて、みんなが作品出したらおもろいやん?という思想を実現するには、作品制作のハードルを下げることが不可欠です。
僕は無数に存在するアーティストの中で、とんでもなく軽い気持ちで生きている人間の一人だと自負しています。
プロミュージシャンという肩書に狭めると、これはかなり特殊な部類に入ります。

プロミュージシャンを独断と偏見によるやらない方がいい最悪なカテゴライズを敢えてすると、
「何かを見返そうと躍起な人」「むちゃくちゃ怒っている人」
「カルチャー自体のコアなオタク」「いずれかの理由でプロとして食っていく覚悟のある人」
大まかにこういった人達が多いんですが、僕はいずれにも当てはまりません。

僕のプロミュージシャンとしての意識を簡単に言語化すると
「楽しく生きていく上で音楽もやってただけで本当は就職考えてたのにたまたま仕事になっちゃったけど就活って面倒くさそうだから飛びついておいたら何やかんやダ・ヴィンチニュースさんで記事を書かせてもらっている。アザス!」
これです。

 

怒ってますか?

でもこういうことも全然あります。例えば死ぬほど勉強してる奴とそんなに勉強してない奴、どっちがテストの点数がいいかってそんなの得意科目とかその日の体調とかそもそもの地頭にもよりますよね。学習指導要領があって同じ学校に通って同じ授業を受けているにもかかわらず差が出るのはそういうことです。

それと同じで作品も、時間や体力や全てを捧げて愛してれば愛してるほどいいものが作れるとか、僕はそういうのはただのartの神格化だと思ってます。そういう人もいるだろうけど、少なくとも僕は違います。それでCDが売れてラジオやテレビに呼ばれている人間が一人はいる

 

既に制作のハードルが下がってきた人もいるんじゃないでしょうか。
そもそも動画で説明される明快な音楽理論とかコード進行の妙!みたいなのってむしろ ハードル上がりません?
ミュージシャンは皆たくさん勉強して大変な作業をしてるんだ、ぶっちゃけ面倒臭そうだなって、ちょっと思いません?
ああいうのは何となく分かってきた段階でより理解を深める為に観るんですよ、僕はまだ全然分かってないからあんま観ないんですが

 

要するに、始める為には覚悟も何も要らないんですよ。続ける為にはある程度色々要るけど
音楽で見返すしかないことあります? もっとあるでしょ、なんかこう、バイトリーダーとか
いや、本当にそういったものを馬鹿にしたいとかはなくて、でも始めたいなと薄ら思っている人の心を折る必要ってないじゃないですか
だっていっぱい作品あった方が楽しいから

 

 

ではまず作品を制作する為に何が必要か

 

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