進みたい道に迷ったとき、必ず立ち返りたい素敵な言葉。『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』/佐藤日向の#砂糖図書館㉖

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公開日:2021/9/18

佐藤日向

「何か得意なことはありますか?」「特技はなんですか?」と聞かれることは、きっと芸能の仕事だけでなく、就職活動などの場面でもあると思う。私はこの質問がとても苦手だ。

 22歳になった今、「私はこれが得意です」と胸を張って言えるものが無いのはダメなのだろうか、と悩むことも多々あった私だが、今回紹介する森下 典子さんの『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』を読み終えた後には、「そんな私がいても良いじゃないか」と思えるようになっていた。

 本作は著者である森下さんがお茶を通して出逢った感情の一つ一つが、丁寧に描かれているエッセイだ。

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 皆さんはタイトルにもなっている「日日是好日」という言葉をご存知だろうか。「毎日が素晴らしい」という意味なのだが、小学生の頃、四字熟語を習字で書くのが夏休みの宿題だった際に、私はこの言葉に出会った。

 四字熟語ではないけど当時の私に「これだ!」と思わせてくれた言葉だった。その「日日是好日」という言葉に惹かれたのがきっかけで購入した本で、日本の文化でもあるお茶の作法をまったく知らない私が読んで理解出来るのだろうかと思っていたが、読み進めるうちに心に森下さんが紡ぐ素直で真っ直ぐな言葉が沢山あった。

 作中に、周りの気遣いや元々持っている素質に圧倒され、「自分にはお茶の素質がないから辞めよう」と森下さんが決意する場面がある。

「自分だけ人生の本番が始まらないような気がした。いつまでたっても、スタートラインにすら立てていない。(中略)走らなければいけないと、じりじりする。だけど、いったいどこへ向かって走ればいいのかも、わからなかった。」

 この言葉を見て、私は「お茶と私の仕事は似ているのではないか」と感じた。

 私自身、中学生になるタイミングと高校生になるタイミングで「素質がない私は、このまま芸能活動を続けていてもいいのだろうか」「学生の間はまだ引き返せるのではないだろうか」と、何度も何度も自問自答を繰り返していた時期がある。芝居のレッスンを受けていても、自分に何かが足りないのは分かるのに肝心なその”何か”がどうしても分からず、周りの急激な成長に焦って涙したことが多かった。この焦りは、今もずっと続いている。

 そんな私の「早くどうにかしなければいけない」という気持ちを、森下さんの言葉の数々が救ってくれた。「すぐにはわからない代わりに、小さなコップ、大きなコップ、特大のコップの水があふれ、世界に広がる瞬間の醍醐味を、何度も何度も味わわせてくれる」。本当にこの言葉の通りだ。”経験値”という名前のコップに少しずつ水が溜まって溢れた瞬間を、私は芝居をしながら何度も実感してきた。きっとその時のときめきやキラキラした世界を忘れられないから、今もこの仕事を続けているのだと思う。

 これから先、10年20年先の未来で私がどんなことをしているか想像なんて出来ないけど、自分のペースで学ぶことを忘れずに成長していければ、きっと私が歩みたい道を歩めるのだろうと思った。

 森下さんが自分の気持ちを見つめ直す時にお茶と向き合っていたのと同じように、私はこの本を開くと思う。今の自分と向き合うことが少し怖い方は、是非本書に沢山散りばめられた言葉たちと向き合ってみるのはいかがだろうか。

さとう・ひなた
12月23日、新潟県生まれ。2010年12月、アイドルユニット「さくら学院」のメンバーとして、メジャーデビュー。2014年3月に卒業後、声優としての活動をスタート。TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』(鹿角理亞役)、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(星見純那役)のほか、映像、舞台でも活躍中。

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