オールナイトニッポン元チーフディレクター・石井玄さんの、ラジオディレクターとしての日々/アフタートーク

エンタメ

公開日:2021/10/9

アフタートーク

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日:

 才能がない。社会になじめない。暗い。無駄に背が高い。服がダサい。腐っていたぼくに残るのは、ラジオへの情熱と無色透明の個性――。

「オードリーのオールナイトニッポン」「星野源のオールナイトニッポン」など、数々の名番組に関わった、オールナイトニッポン元チーフディレクター・石井玄(ひかる)さんの初エッセイ『アフタートーク』。 「ラジオ制作や会社員にまつわる仕事論」「学生時代にラジオに救われてから業界を目指すまでの道のり」など、ラジオへの情熱と志を余すところなくつづった10年間の集大成。ラジオファンのみならず、モチベーションを高めたい社会人、これから働く学生にも読んでもらいたい作品。

※本作品は石井玄著の『アフタートーク』から一部抜粋・編集しました。

アフタートーク
『アフタートーク』(石井玄/KADOKAWA)

アフタートークのビフォートーク

 エッセイを書いて欲しいという依頼が来た。

 なるほど。

 ニッポン放送というラジオ局で、「オールナイトニッポン」のチーフディレクターをやったり、ラジオディレクター代表みたいな面して取材を受けたり、「ラジオ業界に物申す!」といった青臭いことをSNSで発信していたりしたからか。

 初めは、編集者を装った超ラジオ好きなリスナーが依頼してきているんだろうと思った。多分、番組スタッフまで把握しているようなコアなリスナーだ。

 

 連絡があったのはKADOKAWAという出版社の方だった。松尾さんという、ちゃんと社会に溶け込んで仕事をしている大人のようで、想像していたヤバめのリスナーではなさそうだ。

 話を聞くと、ラジオにハマったのはここ1年ほどのことで、昔から熱心に聴いていたわけではないらしい。ラジオを聴いていく中で「石井」という名前にたどり着き、Twitterでぼくが「熱く」なっていたのを見て、声をかけたそうだ。肩書きや経歴ではなく、ぼく自身に興味を持ってお願いしたらしい。

 初めは、仕事論を求めているのかと思っていたのだが、ラジオの仕事や番組を作ってきた話、ラジオを好きになった学生時代の話など、ぼくの「熱さ」を込めた個人的なエッセイを書いて欲しいという。

 いち会社員のエッセイ? ちょっとおかしなことを言っていると思ったのだが、どうやら大真面目に言っている。

 

 誰がぼくに興味あるんですかね?

 ぼくの話で売れるんですかね?

 パーソナリティとの対談とかを入れた方がいいんじゃないですか?

 

 などと尋ねたが、「石井さんが、ラジオの仕事に向き合ってきた話を読みたい人がいるはずです」と譲らなかった。

 

 どうかしている。

 だが、自分で書いた本を出版するチャンスなど、人生に一回あるかどうかだ。

 子どものころ、本が好きだった。いつか自分が本を出せたらいいなと妄想したことはあっても、実際に起こるとは思っていない。

 夢だったというほどにも想像していない出来事だ。

 

 かくして、ぼくの人生最大の挑戦が始まった。

 文章を書くプロでもない人間が、300ページもの量を書くなんて相当大変だ。

 乗せられるままに書いていったが、ぼくのような素人が書くのは精神的にも肉体的にも本当にしんどかった。

 でも、一生に一冊きりになるであろう自分の本なので、最後まで自分で書き上げたいという気持ちもある。

 そんな思いが行ったり来たりしながら、仕事の合間や休みの日を使い、せっせと書き進めていった。

 

 ぼくは10年近くラジオディレクターの仕事をしてきましたが、今はディレクターという立場を離れました。「アフタートーク」というタイトルは、ラジオディレクターに一旦区切りをつけて振り返った話を主に書いていることからつけたものです。ラジオ番組で生放送が終わったあと、おまけでちょっとだけ話したりすることを「アフタートーク」と言ったりもします。なので、このタイトルです(おまけにしては分量が多く、熱量も高いですが)。

 

 この本は、ラジオ局に勤める会社員が初めて書いたエッセイです。

 2011年、ぼくがラジオディレクターを目指しラジオ業界に足を踏み入れてから約10年が経ちました。

「オールナイトニッポン」という深夜のラジオ番組にとりわけ長く携わっています。ラジオのことが多めですが、ラジオを知らない方でも読みやすいように多くの仕事や会社員に共通するような話にも触れています。

 

 嬉しいこと、辛いこと、楽しいこと、悲しいこと、腹の立つこと、色んな感情を抱えながらこの10年間仕事をしてきました。

 それを今回、本に書きました。

 それと、ぼく自身のこと。今までひた隠しにしてきた自分の「熱さ」について思う存分書きました。

 一生懸命想いを語ったり、夢に向かって頑張ったり、良いものを作るために真剣に取り組む人をバカにする人がいますが、今回は無視しました。

 バカにされても、もういいかなと思います。

 それでも伝えたいことが、ぼくにはあるようです。

<第2回に続く>

あわせて読みたい

この記事で紹介した書籍ほか

アフタートーク

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日: