仕事のスピードを早めるには?自分で抱えず、能力のある人に託せばスピードは格段に上がる/アフタートーク

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公開日:2021/10/12

アフタートーク

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日:

 才能がない。社会になじめない。暗い。無駄に背が高い。服がダサい。腐っていたぼくに残るのは、ラジオへの情熱と無色透明の個性――。

「オードリーのオールナイトニッポン」「星野源のオールナイトニッポン」など、数々の名番組に関わった、オールナイトニッポン元チーフディレクター・石井玄(ひかる)さんの初エッセイ『アフタートーク』。 「ラジオ制作や会社員にまつわる仕事論」「学生時代にラジオに救われてから業界を目指すまでの道のり」など、ラジオへの情熱と志を余すところなくつづった10年間の集大成。ラジオファンのみならず、モチベーションを高めたい社会人、これから働く学生にも読んでもらいたい作品。

※本作品は石井玄著の『アフタートーク』から一部抜粋・編集しました。

アフタートーク
『アフタートーク』(石井玄/KADOKAWA)

仕事のスピード

 仕事が速いと言われることがある。

 自分では全く自覚はない。むしろ遅いと思う。元来、サボり癖があり、中々やるべきことに取り掛からない。「Lazy Boy」。夏休みの宿題は新学期の前日、寝ずにまとめてやるタイプ。もちろん終わらないから、母に手伝ってもらいまくり。工作の宿題においては毎年母に作ってもらっていた(工作や刺繍が好きな母で、結構ノリノリでやっていた)。

 ぼくがあまりに毎年頼むので、小学6年生の夏休みには、母から「こういうものを作りたい」とプレゼンされた。それに対しぼくは「もっとこうした方がいい」と偉そうにアドバイスをし、それを受けて母が1ヶ月かけて制作した。

 ヘビの小物入れで、口から物を入れるとガラガラヘビのように鈴の音が鳴る仕掛けがついたものだった。金賞をとった。褒められたが謙遜した。実際作っていないから。

 このエッセイの宿題も、締め切り直前になっても中々取り掛からないので、妻が呆れている。集中出来るように音楽をかけたら、ノリのいい曲がかかりリビングで踊って時間を無駄にしたりする。自分の部屋に来た猫を捕まえて、抱っこして撫でて1時間ほど過ごしたりする。追い込まれないとやらないのは、昔からだ。

 

 では、仕事が速いとされるのはなぜか。

 モノを作る作業は常に追い込まれていくものだと考えているからなのかもしれない。ぼくは、締め切りのあるなしにかかわらず、出来る限り早く物事を進めることが大事だと考えている。

 

 企画を思いついたとする。それを相談する相手がいるのであれば、一秒でも早く伝える。なぜなら、その方が面白くなる可能性が高くなるからだ。ぼくにはこうしたいという意志などないし、ぼくより面白いことを思いつく人は山ほどいる。企画が面白くなるのであれば、作家でもADでもプロデューサーでも、誰の意見であっても取り入れたいから、さっさと他の人を頼ることにしている。逆に企画を考えるのが苦手な人と仕事をするときは、こっちで素案を考えた上で相談する。

 とにかく早く伝えて、相手が考える時間を増やす。そういう意味での仕事は速い。ぼくが考えるくらいなら、もっと能力のある人に託すべきだ。

 企画が決定したあとも同じだ。イベントの開催が決定したとして、アイデアが出たり、問題が発生したりしたとき、即誰かに相談をする。リスクも抑えられるし、イベントがより面白くなる可能性が高まる。ぼくの連絡が遅れることによって、一瞬でも物事が止まるのであれば、それほど意味のないことはない。

 サッカーでたとえるなら、技術の低い選手が、試合中に長くボールを持つよりも、前線の決定力のある選手にパスすべきだ。リオネル・メッシやクリスチアーノ・ロナウドにボールを預けた方が、ゴールが生まれる可能性が高いに決まっている。

「才能ないんだから、早く次に回せ」

 そう心がけると、仕事の進みが格段に速くなる。

「面白いものを作る」という目的に一直線に進めばいい。誰が思いついたか、誰が決めたかは、重要ではない。そこに自分のエゴや邪魔な思想は介在しないし、立場が上の人に必要のない確認をして意図しない形に企画がゆがめられる可能性も考慮しない。

「忖度しない」と決めると、判断も早くなる。

 必要最低限の忖度は必要なことだとわかってはいる。向こう見ずに猪突猛進してしまい、立場が上の人に呼び出されて怒られたこともあった。ぼくがどうでもいいと思うことでも、相手もそう思うとは限らないのだ。

 

 ぼくがゼロから思いついて実行したことは世の中にありません。元は誰かのアイデアだったり、先人たちのアイデアを取り入れたりして作っています。ゼロから作り上げる才能があったら、こんなに苦労していない。今も昔も、才能がある人と仕事が出来て、面白いものを作ることに参加させてもらっている。本当に幸運だと思う。

 

 ただひとつ、はっきり言えることがある。

 小学6年生のときにヘビの小物入れを作ったのは母だけど、口からモノを入れて尻尾から取り出すアイデアを考えたのは、ぼくだ。これだけは断言出来る。

<第5回に続く>

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