フリーアナ・青木源太が、“話す”仕事のプレッシャーを克服できた理由/たった1日で会話が弾む! 話し方のコツ大全

ビジネス

公開日:2021/11/1

人と話すときに「自分がつながなくちゃ。話を回さなきゃ」と焦ってしまうことはありませんか? 情報を短く、正確に、わかりやすく伝えるのは難しいもの。普段から口ベタであることを悩んでいる方は「もっと話がうまくなりたい」と思っている人が多いと思います。

元日本テレビのアナウンサーで、現在はフリーアナウンサーとして活躍している著者・青木源太さんも“元”口ベタの1人。そんな彼が、コミュ力が高い人を15年間観察して学んだ“話し方のコツ”を具体的かつ丁寧に紹介します。

必ずしもすぐに身につくものばかりではありませんが、まずは実践。自分の話し方に自信をもてるようになり、話すことがどんどん楽しくなっていくことでしょう。

※本作品は青木源太著の書籍『口ベタな人ほどうまくいく たった1日で会話が弾む! 話し方のコツ大全』から一部抜粋・編集しました

口ベタな人ほどうまくいく たった1日で会話が弾む! 話し方のコツ大全
『口ベタな人ほどうまくいく たった1日で会話が弾む! 話し方のコツ大全』(青木源太/宝島社)

はじめに

「話すこと」を仕事にするプレッシャー

 みなさんがこの本をお買い上げいただいたのは書店でしょうか。それともオンラインショップでしょうか。いずれにしても、この本を手に取ったということは、普段から口ベタであることを悩んでいる人、口ベタではなくても、「もっと話がうまくなりたい」「会議やプレゼンなどで緊張せずに話したい」と考えている人だと思います。

 最近では「コミュ力」という言葉もよく聞きますし、コミュ力を高めたいと思っている人も多いでしょう。

 本書では、そのような人向けに87個の「話し方のコツ」を紹介しています。口ベタな人もそうでない人も、これらを普段から実践あるいは意識して、自分の話し方に取り入れてみてください。

 このように言うと偉そうに聞こえたかもしれません。しかし、かくいう僕自身もコミュ力が高いほうではありません。

 学生時代は特別話が上手だったわけではなく、まして場を回したり盛り上げたりするタイプではありませんでした。

 この業界に入ったのも、もとは番組制作に関わりたいという思いが強かったからで、それが叶うならディレクターでもよかったわけです。「話す」ことでお金をもらおうというつもりはまったくなかったので、アナウンサーとして日本テレビに入り、はじめて話し方のプロ集団のなかに立ったときは正直かなり戸惑いました。

 日本テレビ入社当時は周囲に「暗い」と言われてばかりいました。前髪が重く、髭が濃かったせいか、表情に乏しかったためか、それとも話し方がハキハキしていなかったからか、またはすべてが原因かもしれません。ともあれ、新人として先輩の指導を受けるなかで、自分の言葉一つひとつに厳しいチェックが入ることもあり、そのうちに僕はだんだんと話すことが怖くなってしまいました。

「話す」というのは、言ってみれば「誰にでもできること」です。それを仕事としてやっていくためには、ただ単に「おしゃべり」をするのではなく、情報を短く、正確に、わかりやすく「伝え」なければならないわけです。僕はそのことにそれほど意識的でなかったために、話すことの難しさを感じて立ち止まってしまったのです。

「整理して伝える」ことへの憧れ

 もともとアナウンサーになるつもりはなかったと書きましたが、そんな僕でも話がうまい人に憧れがなかったわけではありません。みなさんにも「話が上手だな」「この人のように話せるようになりたいな」という人はいると思いますが、僕もアナウンサーに同じような気持ちを抱いていました。「立て板に水」といった感じで喋るよりも、情報を簡潔に伝えたり、その場をうまく回したりする技術。それがある人はかっこいいと思っていました。

 なかでも「情報を整理して伝える」ことへの憧れ。これが強かった分、入社後に強いプレッシャーを感じました。「こんなはずではなかった」という感覚に近いですが、話が上手になるためには意識すべきことがたくさんあるということに気づかされたのです。

 たとえば「聞き上手」であるというのも、コミュニケーションにおいてはとても重要です。しかし、これに気づくまでにはかなり時間がかかりました。それまで僕は、人を話すときは「とにかくおもしろいことを言わなきゃ」「うまいことを言わなきゃ」という「話す」側の問題にばかり気がとられていたのです。

「自分が話し続けること」が話し上手ではない

 話すこと自体怖くなってしまった僕が、なんとかそれを克服することができたのは、あるとき「自分が話し続ける必要はない」と気づいたからです。

 先ほど「聞き上手」であることもコミュニケーションにおいては重要だと書きましたが、まったくその通りで、相手に気持ちよく話してもらえれば、何もこちらがおもしろい話をする必要はありません。相手が話し、こちらは話を聞く。それでもコミュニケーションが成立していると言えるからです。そのことに気づいたのは入社から2、3年後、みのもんたさんの『おもいッきりイイ!!テレビ』(日本テレビ系列)のランチ中継のリポーターをやっていたときです。

 中継中、トラブルが発生してしまい、段取り通りにいかなくなってしまいました。そこで、自分が間をつなごうとしたもののうまくいきませんでした。具体的には、調理済みの食材が出てくる予定だったのに、本番ではまだ火が通っていなかったのです。それを調理する間をつなごうと思って話し出したものの、僕自身に話術がなかったため、間延びした感じを視聴者に与えてしまいました。スタジオ側も何が起こったのかがわからないので、「どうしたんだろう」という空気になっていました。

 後で会社に戻って先輩の羽鳥慎一さんに状況を説明したところ、「生中継先での失敗やトラブルはその場でスタジオに言ってしまいなさい」と言われました。現場でトラブルが起こっていることがわかれば、スタジオで対処できるのに、それすらわからないから何もできない。「自分だったらまずスタジオの共演者に伝える」。そう言われてハッとしました。

 羽鳥さんくらいベテランの人でも自分だけで間をもたせようとはしない。「自分だけでどうにかしよう」という僕の考えが間違っていたのです。それ以来、中継でトラブルがあったときは、とりつくろおうとしないで正直にそのことを伝えるようにしました。すると、そのようなときはスタジオの人がその間をつないでくれて、視聴者も観ていてストレスが少なくなります。

 みなさんのなかにも、「自分がつながなくちゃ。話を回さなきゃ」と思っている人は多いと思います。しかし、大前提として、「コミュニケーションはひとりで成立するものではない」ということを忘れないようにしてください。

 話し方というのは、話の聞き方、ちょっとした言葉や心がけで変わるものだと思います。

 本書で紹介するコツは、必ずしもすぐに身につくものばかりではありませんが、いずれも実践してみると効果が実感できるでしょう。

 そうして自分の話し方に自信をもてるようになったら、話すことがどんどん楽しくなってくるはずです。

 そうなれば僕としても、とても嬉しく思います。

2021年7月
青木源太

<第2回に続く>

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