頑張らない勇気/前島亜美「まごころコトバ」⑮

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公開日:2021/11/5

前島亜美「まごころコトバ」

 真面目に頑張ると損をする。よく聞く言葉だ。

 デビューしてからコメントをする時、文章を書く時、必ずと言っていいほど「頑張ります」という言葉を使ってきた。今までどのくらい口にしてきただろう。自分の思い描く“頑張る”を続け、これまで生きてきた。

 物事は結果だけではなく、その過程が大切だという考え方もある。しかし、特に結果で評価されるこの仕事においては、結果や完成形が良いものでなくてはいけないと感じている。

 頑張ったのに上手くいかなかった。頑張ったのに評価されなかった。この“頑張ったのに”の感情が多くなった時、虚しさを感じることが増え、自分の思う「頑張る」とはなんだろうと考えるようになった。

 デビューしたころ、歌やダンスを幼少期からやってきた子に囲まれ、何もできなかった私は常に後れをとっている認識があった。もっと頑張らなくちゃいけない。できない分、努力をしなくちゃいけない。選ばれるためには、頑張ることが当たり前なのだと。

 そこからどんな仕事をする時にも、ありのままの自分でというより“求められる姿に適応しなくては”という考えが染み付いていたと思う。

 テストやオーディション、投票ランキング。どうすれば選ばれるだろう、もっとよいパフォーマンスができるのだろうと。

 ある時、自分は100%頑張ろう!と思うと、肩に力が入りすぎていて結果的にあまり良くないことが多いのではないかと気づいた。

 歌やお芝居は特に、もっと力を抜いて自然体でいる時の方が良い結果が生まれるのではと。柔らかい声や音はリラックスしている時の方が出やすいのだろう。

 自分の感じる“頑張った”の全てが正解ではないことを知った時、仕事に対する考え方に変化が生まれた。頑張るのではなく、良いものを良い状態の自分で作れるようになりたい。努力を怠るのではなく、新しい取り組み方や仕事への向き合い方があるのではないかと。

 一つ一つを頑張ろうとすると、何かにつけて意味を考えてしまう。これにはどんな意味があって、どんな先があるだろうと。

 けれど、難しく考えて決めつけるのではなく、意味がない物事も楽しめるように、柔らかく生きたいと感じた。

 とはいえ、長く続けてきた“頑張ろうとする習慣”はとても根深く、どうしても力みそうになる瞬間が多い。

 頑張らないということもすごく勇気がいることだと知った。マイクの前に立つ日々で、いつか自分のバランスをとれる時がきたらいいなと試行錯誤を続けている。

 ずっと足りない何かを補うには、頑張るという方法しか知らなかったが、頑張らない勇気こそ今自分に必要なのではと感じている。

 誰かに頼ったり、深く呼吸をしたり、自分のペースを大切にしたりしながら、頑張りすぎない努力を続けていきたい。

第16回に続く

まえしま・あみ
1997年11月22日生まれ、埼玉県出身。2010年にアイドルグループのメンバーとしてデビュー。2017年にグループを卒業し、舞台やバラエティ番組などで活躍。またアプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(2017年)でメインキャストの声を演じ、以後声優としても活動中。10月6日(水)より毎週水曜24:00にテレビ東京ほかにて放送のテレビアニメ『古見さんは、コミュ症です。』に矢田野まける役で声優出演。

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