同期の星/オズワルド伊藤の『一旦書かせて頂きます』㉔

小説・エッセイ

公開日:2021/12/3

オズワルド伊藤
撮影=島本絵梨佳

同期の星なんて言葉がある。

芸人に限らず、どの業界にも同じ時期に同じ仕事を始めた者同士を同期と呼び、その並びの中で極めて秀でている者を指す言葉、それが同期の星。

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僕は芸歴10年のお笑い芸人であるが、もちろん僕にも同期の星と呼べる存在がいるのである。

恐ろしくタイムリーな為、どう考えても先日キングオブコントチャンピオンに輝いた同期の空気階段だろうと踏んだ方もいるかもしれないが、答えはノンノンである。わかるだろうかこの半笑いで人差し指を振りながら否定している感じ。それがノンノン。

確かにというか確実に、今現在最も大きな結果を残している彼らの名前をあげるべきなのだろうが、まず彼らは同期の星って柄じゃない。今の彼らしか知らない方々は想像もつかないだろうが、どちらかといえば泥水出身。どんだけ売れようが同期の星って柄じゃないのだ。あとはまあ、期で括れるような奴らでもないってのも事実ではあるけども。

では2021年現在最も抜き出た彼らよりも、同期の星ってのが似合うのは誰なのか。
それは元ラフレクラン。現コンビ名はコットンというコンビである。

僕は2012年デビューで、吉本の運営するお笑い養成所NSCの東京17期の卒業生。

前年度の東京16期生は歴代最多の入学者を誇っていたのに対し、我々17期生は明確に前年度のそれを下回っていた。

当時僕はオズワルドを組む前で、地元の同級生とバッカスというコンビを組んでいた。
2人とも理由もないのに恐ろしく自信だけはあった。故になんかまじ良くない尖り方をしていた結果、あまり授業にも顔を出さずに同期との関わりもほぼない状態のまま卒業を迎えようとしていた。NSCを卒業したらそのまま吉本入り。

経験も実績も同期との関係性もないまま、最悪の芸人生活がスタートした。

と、本当それと同じタイミングで、どうやら養成所時代にずっと先頭を走っていた2人がコンビを組んだという情報が耳に届いた。

ラフレクラン誕生。西村という元慶応元アナウンサーのウルトラ器用男と、きょんというIQ8の肉塊とのコンビである。

あまりNSCに行っていなかった僕でも、在学中ずっと目立っていた彼らの名前はさすがに知っていた。だからこそ鼻について仕方がなかったのだ。

そこから彼らは劇場のランキングシステムを最速で駆け上がり、初めてTVに出たのも、飯が食えるようになったのも同期の中で1番早かった。というか、なんか端から見てて異常なスピードだった。異常な華だった。

3年目も終わりかけ、前のコンビを解散した僕は、当然彼らが鼻について仕方がなかった。

その後僕はオズワルドというコンビを組んで、どうにかこうにかコンビ結成1年後。芸歴5年目にして初めてラフレクランと同じ舞台に立つことになった。

率直な感想としてはお笑い筋肉が大人と精子の差だった。なるほど、これがスターになるやつかと本当に思ったのだ。そこからは彼らを追いかける日々が続いた。

そして現在。

彼らはラフレクランというコンビ名からコットンに改名し、今でも活動を続けている。

ここまで読んで、彼らの存在をぼんやりとしか認識していない、またはここで初めて認知したという方々には、もしかしたら僕が彼らを同期の星と呼ぶことに対し若干の違和感を覚えさせてしまったかもしれない。

ただ僕は、5年前彼らとの初舞台を踏んだあの日から、なんら変わらず東京NSC17期における同期の星と呼べる存在は彼らに他ならないと思っている。

西村はあの頃に比べて変態がバレたし、彫ったのかと思うくらいのほうれい線も出来た。

きょんはあの頃に比べてIQが3下がったし、カロリーを直で食べてきたのかと思うくらい太った。

それでも彼らを同期の星と呼ぶのは、やはり圧倒的な華。どうなっていようが滲み出ているのである。恐らく内心、大げさかもしれないが僕はずっと彼らに憧れていたのかもしれない。

だからみなさんお楽しみに。

これは勝ち負けや悔しい悔しくないの話ではない。

我々東京NSC17期で、今後最も売れるのは、コットンな気がしてならないのである。というか、彼らに関してはそうであって欲しいと思ってしまうのだ。なんてったって同期の星なんですもの。

一旦辞めさせて頂きます。

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オズワルド 伊藤俊介(いとうしゅんすけ)
1989年生まれ。千葉県出身。2014年11月、畠中悠とオズワルドを結成。M-1グランプリ2019、2020、2021ファイナリスト。


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