「まつもとあつしのそれゆけ! 電子書籍」 【第19回】ニコニコ動画はなぜ有料メルマガ事業「ブロマガ」を開始した?

2012/10/10

電子書籍にまつわる疑問・質問を、電子書籍・ITに詳しいまつもとあつし先生がわかりやすく回答!
教えて、まつもと先生!

まつもと :かべさんはニコニコ動画ってみますか?

かべ :みてます! あと、以前ちばさんと「ニコニコ静画(電子書籍)」も取材したこともありましたよね。

まつもと :あれから半年ですが、またニコニコ動画さんが新しい動きをはじめたので、今日は中の人に詳しく話しを聞きましょう。

かべ :はい! 先日お話しを伺った「cakes」や従来のメルマガとどう違うのか、わたし気になります!

株式会社ドワンゴ ニコニコ事業本部 企画開発部
セクションマネージャ
 宮原 敏久
みやはら としひさ●ヤフーなどインターネット企業でサービス開発を担当し、現在はドワンゴでニコニコチャンネルおよびブロマガを担当。

なぜニコニコがメルマガを?

まつもと :今日はよろしくお願いします。それにしても、ニコニコ動画が有料メルマガに参入というのは少し意外でした。

宮原 :たしかにニコニコでは多くの動画が投稿され楽しまれているのですが、動画はいわばリッチコンテンツで、誰もが作れるわけではありません。でも、文字はEメールなどみなさん何らかの形で毎日書いているはずです。ニコニコからは動画の投稿をきっかけにプロとしてデビューされるような方も生まれていますが、テキストの世界でも同じようなこと――つまり、作家としてデビューできるような場ができないかなと考えて、「ブロマガ」を立ち上げました。

かべ :なるほど。踊ってみた、歌ってみた、に続く「書いてみた」みたいな感じ!

宮原 :そうですね。誤解もあるところなのですが、メルマガをはじめたかったというよりも、ニコニコ動画同様、文字によるプラットフォームを作りたかったというのが大きいですね。でも、いきなり電子書籍だと何万文字も書かないといけませんから、今回のメールマガジンというのが、これから文字で何かを表現していこうという人には適しているのではないかな、と考えました。

かべ :(たしかに、cakesの加藤さんもそういう風におっしゃっていたな…)

宮原 :これまでネットを通じてテキストで何かを表現しようとすると、ブログにするかメルマガにするか、といった複数の選択肢があったのですが、それぞれを使い分けるのも一方では送り手にとっての負担でした。そこでブロマガでは1つ文章を書くと、ブログとメルマガ両方に展開することができるようにしました。

まつもと :たしかにメルマガだと、送った後のソーシャルメディアで話題になるということも少ないですね。

宮原 :そうなんです、送り手によっては「この内容は広く世の中の人に読んでもらい、拡がって欲しい」というケースもあります。例えば、津田大介さんはブロマガの記事を無料で公開されていたりもします。

かべ :無料だし、ニコニコ動画の会員でなくても読むことができるんですね。

宮原 :記事によっては300回以上Twitterでリツィートされていたりもしますし、ブログと同じように記事にコメントが付いたりもします。そこから著者の方とのコミュニケーションも生まれるというわけです。メルマガだけだとなかなかこういう展開は生まれにくいはずです。例えば、「もしドラ」で有名な岩崎夏海さんのブロマガではこんなやり取りもあったりしました。

まつもと :岩崎さん、とても丁寧に対応されているんですね。

宮原 :ニコニコ動画の特色でもあるのですが、他の動画投稿サイトと異なり、コミュニケーションが大きな意味を持っているんですね。そういった特徴をテキストの世界にもいかせるのではないかと考えています。コミュニケーションが取れるというのがファンクラブとの大きな違いで、実際人気があるのもQ&A形式のコンテンツだったりもします。また、オープンなTwitterなどでは聞きにくい・答えにくい話題も会員制のブロマガであれば荒れにくいという特徴もあるのではないかと思います。さらに言えば、コメント欄でのやり取りも二次的なコンテンツとして新たな価値になってくるはずです。

まつもと :なるほど。ニコニコ動画でのコメントはどちらかというと感情の共有という指摘もありましたが、ブロマガによってこれまでニコニコ動画をあまり訪問していなかった人もやってくるということが期待できそうですね。

宮原 :そうですね。逆に従来有料メルマガはクレジットカードでの決済がほとんどだったと思いますが、ブロマガはキャリア決済にも対応しているのが大きな特徴です。結果的に、従来の有料メルマガとは異なる層が購読する可能性もあると思います。

1回の更新ですべてをカバーする

宮原 :コミュニケーションがブログで生まれるというお話しをしましたが、メールであれば、RSS配信よりもより自然に更新情報を受け取ることができます。そして、文章をePUB形式で取り出して、電子書籍として読むことも可能です。

かべ :たしかに、わたしもメールなら読みます。

まつもと :ePUBは読みやすいけれど、コミュニケーションがそこから生まれるということはなくなってしまいますよね。

宮原 :そのあたりもユーザーさんが自分好みの方法を選択できるようになっているんです。人によってはメールは受け取らずに、Webページだけ見に行くようにしている方もいます。

まつもと :いろいろ選べるわけですね。

宮原 :文章を月単位でまとめてePUB形式の電子書籍で出力できるんですが、ここに並んでいる表紙も、こちらが用意したものから著者さんが好みのものを選べるようにもなっています。

かべ :おおー、ホントに本みたい。

まつもと :(かべさんダジャレかな?)iBooksの本棚にならぶと壮観ですね。従来もメルマガを配信される単位で電子書籍にはできましたが、1ヶ月単位でまとまって手に入れることができるのも扱いやすそうですね。

宮原 :そうですね。目次や奥付も自動的に生成されますので、まさに本の感覚に近いと思います。

まつもと :メルマガ、ブログ、ePUB電子書籍が1回の作業でできるわけですね。書き手の効率も上がると言えそうですね。

宮原 :通常、著者さんが気にするのはその記事を無料にするか、有料にするかくらいですね。書き手・読み手両方に都合の良い仕組みになっていると思います。

宮原 :コンテンツがたまっていったら、堀江さんのように書籍化することを前提に書かれている人もいらっしゃいますね。

かべ :ふむふむ。

宮原 :これまで電子書籍と言えば、既に紙で出版されたものを電子化するという流れがほとんどだったと思います。オリジナルコンテンツはまだまだ少数派です。しかし、ブロマガはほぼすべてがオリジナルコンテンツです。ここから電子書籍や紙の書籍が出版されることで、新しい市場ができるのではないかと思います。