あの村には近寄るな – RTA Any%(バグあり)【解説付き】/小林私「私事ですが、」

エンタメ

公開日:2021/12/25

立ち竦んでいる最中、話しかけてきた人影の正体は確かに先刻の役場で注意を受けた老人だった。

 

「あの村には近寄るな。…何度も言ったはずだぞ」

 

こんな山奥だと言うのに、その老人は役場で履いていた突っ掛けのまま、土汚れもなかった。

 

「…タケハラ」

 

詰め寄る老人を無視して俺はタケハラに合図したが流石、タケハラはザックに手を伸ばし、既に目当てのものを取り出していた。

 

【「あの村には近寄るな」と言う老人が出現するや否や、
役場に常置されているキャンディを4つ取り出し、老人に向けて掲げます。】

 

「な、なんだ。突然。飴玉なんぞ見せつけて」

 

【ここで老人が怯むので、すかさずその場で5回ジャンプします。】

【同行者がいる場合、もう一人はそのかんに7回腕立て伏せをすると2.7秒の時間短縮です。】

 

「…ハア、よしっ! 成功だタケハラ!」

 

【これでオープニングイベント“怪しげな老人”をスキップ、村の入り口に飛ばされます。】

 

「無事スキップ出来たみたい、村の看板がある」

 

木造の立て看板には「パンはパンでも食べられないパンはパンチラ」と明朝体で刻印されている。

 

「おお、看板がしょうもないなぞなぞになってる。これはかなり短縮出来そうだ」

「でも、明朝体か…ヒラギノ角ゴだったら一番良かったんだけど」

「0.2秒短縮のやつだったか? まあ勿体ないっちゃ勿体ないか…? 真面目なのはいいが、先を急ごう」

 

先ほどのバグで村の天気がロシアの夏になっている。道中は暑かったが、着込んできて正解だった。
村の中央に、正規ルートではラストイベントで大暴れするはずの殺人鬼――正体は村で行われていたある実験の被害者だ――が佇んでいるはずなので、まずはそのポケットを漁りに行く。

 

「左は何もない、そっちは?」

「幸か不幸か…右ポケットにリプトンが入ってる」

「なんだ貴様! なんだ貴様! なんだ貴様! なんだ貴様!」

 

右ポケリプトンの出現確率は0.003%、8.1秒短縮の大穴なのだが、このバグは同行者が“不良に口答えされて怒っている生徒指導のループ”になってしまう。五月蝿くてかなわん
かくいう俺も顔のグラフィックが桃井はるこのスキンになってしまった…まあ、これはどうでもいいか

 

【殺人鬼のポケットを漁り終えると自動的に殺人鬼の下半身がその場で地面に埋まります。】

【しばらく待機すると地下の実験施設が横からスライドして現れます。
壁に闇医者がめり込んでいるのでその左膝に目掛けて持っていたキャンディの内3つを投げつけます。】

 

「当たると0.1秒ずつ短縮らしいが…俺はそこまで厳密にやる気はないからな、タケハラ」

「なんだ貴様! なんだ貴様! なんだ貴様! なんだ貴様!」

 

【キャンディを投げつけ終えると“大きめの犬”が出てきます。】

 

「コイツを撫でてやって…さあ、どうなる?」

「ワンワンワン! ワンワン! ワオーーーン!」

「なんだ貴様! なんだ貴様! なんだ貴様! なんだ貴様!」

 

……………病的なまでに思慮深い 奴の思考さえ遠く及ばない…

 

「おっしゃ!成功だ!」

 

【“大きめの犬”を撫でると村のスピーカーから“俺の勝手-呂布カルマ”が流れてエンディングです。】

 

「どけどけェ! どけどけェ! 邪魔だ邪魔だどけどけェ!」

「なんだ貴様! なんだ貴様! なんだ貴様! なんだ貴様!」

 

【“大きめの犬”が“いつもここから”になりますがこれは仕様なので問題ありません。】

 

【Time 00:15:28,02】

 

…さて、仕事も問題なく終えたし、役場に着く頃にはタケハラもタケハラに戻っているだろう。
それにしても帰路はまたあの獣道を歩くと思うと憂鬱だ。

 

「…いっそ山下りも短縮しちまうか。確かこれをあれにああして…」

 

【エンディング後の山下り短縮は余ったキャンディを使用することで可能です。】

 

【キャンディを殺人鬼の口に放り込むと殺人鬼が木琴に変わります。ミbを連続28回叩くと山下り短縮、村役場前に到着します。】

 

【このバグは不安定な為、失敗するとオープニングからやり直しになるので注意してください。】

 

……

………

 

「あの村には近寄るな」

あわせて読みたい