小料理屋に居候する娘とギャップ御曹司のおとぎ話のような物語『御曹司の並ぶ店』/マンガPOP横丁(91)

マンガ

公開日:2021/12/24

御曹司の並ぶ店
『御曹司の並ぶ店』(宇佐美真紀/小学館)

“現代版のおとぎ話”ってまさにこういう事をいうのではないかと思える作品『御曹司の並ぶ店』(宇佐美真紀/小学館)をご紹介。あらすじからどの点がおとぎ話っぽいか、きっと分かっていただけると信じながらその内容に触れていく。


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 旅館の仲居だった“園(その)”は、お金持ちの常連客に対して大失態をおかしてしまい、旅館を辞め、長年離れて暮らしていた父親の小料理屋で働きながら居候する生活を送っていた。そんなある日のこと。その日の営業を終え店の暖簾を外しに外へ出ると、スーツ姿でうずくまっている男性を発見する。一瞬不審者かと身構えながら声をかけると、「空腹だけどお金がないのです」と言う。振り向いた彼はなんと、園が以前勤めていた旅館を経営するホテルグループの御曹司・一条護だった! 彼は父親と経営方針を巡って喧嘩になり追い出された様子。見かねた園は、職場復帰を交換条件に小料理屋の建物にある空き部屋を一条に貸すことに。別の部屋ではあるが、事実上の園との共同生活が始まった。

 園と同様に小料理屋の手伝いをする一条。彼の働きはその肩書きから想像がつかないほど不器用で失敗の連続。彼はこの不器用さが父から認めてもらえなかったのではと感じ、それを話す。すると園は彼を励まし、彼は笑顔で頑張ると言うのと同時に、身を置いてくれた小料理屋への感謝を込めて恩返しすることを宣言する。早速一条は動き出し、各界の御曹司たちを小料理屋に集める! お客さんの少ない週の半ばに行列を作るというサプライズ恩返しを実行し、その日は常に満席御礼で営業を終えた。さらに、四国の旅館で職場復帰の許可が下りたことを園へ伝えると、一条は翌日、居候生活を終え小料理屋から去っていった。しかし、翌日に戻ってくる……。しっかりとした見た目と不器用な中身とのギャップが激しすぎて御曹司っぽくない御曹司との共同生活が本格的に始まる。

 お分かりいただけただろうか? 困った人を助けて恩返しされる、まさに“鶴が恩返しする話”ですね! 彼の場合は結局すぐ戻ってきますけど。御曹司となると、他の作品ではしっかりしていたりどこか冷たい感じのツンツン系だったりすることが多いけど、一条はその真逆でかなりのポンコツ系。このギャップが読んでいて非常に愛おしくなる。さらに笑顔もまぶしいのなんの! きっと読者もキュンとすること間違いなしだ。さらに園がしっかり彼を支える関係で描かれ、この様子にはりまは大変ほっこり。癒し要素もバツグン。

 さて先程“鶴が恩返しする話”とたとえたが、それに加え、“姫が月に帰る”的な展開も後にやってきます。そのキーとなるのは、一条が呼び込んだたくさんの御曹司たち。一条との共同生活を中心に、御曹司たちに囲まれた園の夢のような展開にもご期待いただきたい。

 今回のPOPは、作品の舞台が小料理屋ということで、テーブルに置かれているメニュースタンドをイメージしてみた。作品に溶け込む良い演出と自画自賛!

※次週は年末年始の関係でお休みします。新年1発目は、2022年1月7日(金)を予定しています。良いお年をお迎え下さい!

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

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