僕と世界堂②/永塚拓馬です。

アニメ

公開日:2022/1/13

デビュー以来、人気作・話題作に多数出演する声優・永塚拓馬さん。多趣味で好奇心旺盛、興味のあることは突き詰めていく。「1日が100時間あればいいのに……」そう語る永塚さんが日々の中で、何を感じ、思っているのか。学生時代からデビュー、声優の仕事、アーティストデビューなど、現在までを綴ってもらいます。

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永塚拓馬
撮影:永塚拓馬

 種田先生の美学生時代の話や絵を学ぶ上でのアドバイス「画材に迷ったり描く場所に困ったりしても、今はiPadさえあればどこでも手軽に良い絵が描ける。デッサンも良いけど、クロッキー(デッサンをラフにした早描き)をたくさんの枚数描くのも勉強になる。結局は形式に囚われすぎず好きなように描くのが上達に繋がる等々」を伺いながら漫画用の画材やデジタル絵画の資料たちを眺めつつ、次に向かうのはいよいよ3階。水彩画や油彩画の画材が揃うフロアです。

 またエスカレーター横の絵画を眺めながら3階に着くと、今度は壁一面カラーチャートの番号順に整然と並べられたチューブ絵具たちが目に飛び込んできました。

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 ここでも予め説明しておくと、日本で主流の絵画はザックリと4種類に分類できます。

 まずは皆さんご存じ水彩画。色の素となる顔料を水に溶いて使う絵の具です。水と絵の具があれば描けるので扱いやすく、滲ませたり透明感を出したりするのが得意とされています。半面、乾燥した後も水に溶けてしまうので油彩画のような重ね塗りに向いていなかったり、保存性や耐光性があまり良くなかったりというデメリットもあります。授業の教材として一度は手にしたことがあるのではないでしょうか?

 次は油彩画。美術館等で一番多く目にするのがこちらですね。水ではなくテレピンやポピー油等の油で顔料を溶いて使います。数百年前の作品が今も残っているように最も耐久性が高く、水に溶けないので重ね塗りなど多彩な表現を可能にする画材とされています。その半面、固まるのが遅かったり(水分の“蒸発”ではなく、油の“酸化”によって絵を定着させます)、何より揮発性の油の臭いが強く汚れも落ちにくいので自宅では扱いづらいというデメリットもあります。

 3つ目がアクリル画。こちらは、水彩と油彩の中間のような画材で、水に溶かして使えるし、一度乾燥したらアクリルエマルジョンという樹脂が固まって残り、溶けることがないので厚塗りもできる。油を使わないので臭いも殆どしない。ということで、近年主流になりつつある画材です。デメリットは油彩画に比べて発色がポップすぎてしまう。そして、まだ歴史の浅い画材なので、数百年保つのか保存性が不安と考える画家もいるようです。

 そして最後が日本独自の絵画、日本画です。響きだけ聞くと葛飾北斎に代表される浮世絵のようなものを想像するかもしれませんが、そうではありません。明治以降に身近になった西洋絵画を参考に、日本古来の画材と技法を使用して描き上げた和洋折衷な絵画です。こちらはチューブ絵の具ではなく、岩絵具(黒曜石や瑪瑙など色鮮やかな鉱石を砕いた粉末)に膠(にかわ)を混ぜて絵を描いていきます。他の絵画にはない風合いを出すことができますが、チューブ絵の具が無く扱いも難しいので、一番ハードルが高いジャンルの絵かもしれません。

 ざっと説明させていただきましたが、この時はまだひたすら教本を見てデッサンをしているだけですから、当然そんな予備知識もなく、初めて目にする大量の絵の具、大小様々な絵筆、謎の記号で分けられたキャンバス、大きさも素材も違うイーゼル等の画材の数々、そしてそこから更に分岐する様々なブランドたち。

 目の前に並ぶ画材たちに圧倒されて、逃げるように4階と5階へと上がり、額縁売り場を彷徨い、売られている絵画たちを眺めながら考えました。

「油絵をやってみたいけど臭いが凄いらしいし自宅には向かないよなぁ。そうなると種田先生のアドバイス通り、画材が要らず多彩な表現ができるデジタルで勉強するのが良いのか? ていうかさっき見たアクリルって何だ? そもそもどんな絵を描きたいんだ?」と頭の中がゴチャゴチャになってしまい。もっと勉強してある程度理解を深めてからまた来ようと、この日はデッサン用の消しゴムとクロッキー帳だけ買って帰ることになってしまいました……。

 結局その後、自宅でも扱いやすい微香性の画材などある程度の知識をつけてから、再び一人で世界堂に行って油彩画の画材を一通り揃えることにして、油彩画を学ぶことにしたのですが、学べば学ぶほど、知らない画法が出てきます。絵画の世界はやはり奥が深い。僕が美術を本当に理解して楽しめる日はまだまだ遠そうです。

永塚 拓馬(ながつか たくま)
神奈川県出身。10月4日生まれ。趣味は音楽・映画・舞台鑑賞、読書、紅茶、料理、ピアノ、ギター、ダンス、旅行、美術館巡り等々。主な出演作品は『KING OF PRISM byPrettyRhythm』西園寺レオ役、『アイドルマスターSideM』冬美旬役、『ヴィジュアルプリズン』ヴーヴ・エリザベス役、『SK∞エスケーエイト』MIYA役、『遊☆戯☆王SEVENS』安立ヨシオなど、ほか多数で、ラジオ・テレビなどにも出演する。2021年10月6日(水)にアーティストデビューとともに、1st mini album『dance with me』をリリース。

Twitter:@takumanagatsuka
音楽STAFF公式Twitter:@staff_nagatsuka
Youtube:永塚拓馬 Official Music Channel