息子が異世界転生? 愛する息子を亡くした母親に翻弄されながら現実と向き合う物語『私の息子が異世界転生したっぽい フルVer.』/マンガPOP横丁(94)

マンガ

公開日:2022/1/21

私の息子が異世界転生したっぽい フルver.7
『私の息子が異世界転生したっぽい フルver.』(かねもと:原作、シバタヒカリ:作画/小学館)

 私はこのインパクトあるタイトルに目を引かれてすぐさま紹介作品候補としたものの、この連載でこれまで紹介してきた作品とは毛色が違うかなと思い、当初ちょっと後悔。しかしきちんと読んでみたらとんでもなくおもしろい! 異世界転生を扱ってはいるけど現実社会が舞台であり、他にはない内容が斬新! これはぜひとも紹介せねば!となり、POPと併せて気合十分でお送りする。


advertisement

17年ぶりに再会した美央の衝撃的な目的とは

「私の息子が異世界転生したっぽい」

 そんな一言で物語は始まる――。

 堂原智太は高校時代からラノベを愛し、社会人になってしばらくたった今も変わらずオタクライフを満喫している。一方、結婚して旧姓の古橋から変わった葉山美央は、堂原の高校時代のクラスメイトで、彼から見ればリア充の代表のような存在のギャルだった。当時の二人にほぼ接点がなかったが、17年ぶりに再会することに。突然、美央が堂原を呼び出したからだ。彼女には高校を卒業してすぐに授かった息子がいた。その息子が3カ月前に車に轢かれて亡くなったという。しかし美央は、これは「死んだ」のではなく、「異世界に転生した」と考えていたのだ。というのも、その息子は典型的なオタクで、部屋の本棚は異世界転生のラノベで埋め尽くされていた。美央は片っ端からそれらを読んでみると、どれも冒頭に車に轢かれて死亡し異世界に転生するというものばかり。この世界を初めて知った美央は異世界転生に興味を持ち、図書館などへ行って調べた。結果、息子は死んだのではなく、異世界に転生したという答えにたどり着いたのだ。そこで白羽の矢が立ったのは、当時オタクとして認識していた堂原。美央が彼を呼び出した理由は、彼のラノベ知識で異世界にいる息子と会う方法を見つけてもらうこと! こうして始まる、ラノベを多数所有する堂原宅への通い妻展開! ある意味一か八かの賭けで呼び出された堂原は、果たして彼女の救世主となるか……!?

美央に翻弄される毎日がスタート! そして二人の未来は…

 最愛の息子に再会できると信じ込む美央の願いに付き合わされる堂原の“異世界からの再会を探る旅”は、まさに珍道中だ。堂原の家でラノベを読み漁り、ひとついい方法を見つけると試そうとする美央。それを止める堂原。辛い状況なのに、美央の行動に堂原が翻弄されまくるシーンは癒しでコメディだ。そんな毎日を過ごす堂原の心の変化にぜひとも悶えていただきたい。

 笑いあり、ドキドキあり、そしてこれから深く描かれていくであろう美央と家族の現実のドラマ。まだまだ何が起こるかわからない物語と二人の旅の終着点が明るく決着することを願うばかりだ。

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

あわせて読みたい