中1になって持たせたら、どっぷりスマホ漬けの生活に。早すぎたのでしょうか?/子どものスマホ問題はルール決めで解決します

暮らし

更新日:2022/3/11

子どものスマホはやむを得ないとは思っても、「ゲームばかりで勉強しない」「使用時間を守らない」など悩みは尽きません。親としては決めたルールを守って適度に使用してほしいものですが、ルールを守らせるのもひと苦労! 教育評論家の石田勝紀先生の著書『子どものスマホ問題はルール決めで解決します』(主婦の友社)では、親を悩ませる「スマホ問題」を解決する「ルール決め」を提案。それぞれの親子のパターンから、あなたの悩みを解消しませんか?

※本稿は『子どものスマホ問題はルール決めで解決します』(石田勝紀/主婦の友社)から一部抜粋・編集しました。

子どものスマホ問題はルール決めで解決します
『子どものスマホ問題はルール決めで解決します』(石田勝紀/主婦の友社)

【持つのが早すぎた?】

朝から夜までどっぷりスマホ漬け。もう少し成長してから与えるべきだったのでしょうか?

 スマホは中学1年で持たせました。私立中学に通うことになったので、電車通学時の連絡用にするためです。ところが、いざ持たせたら、どっぷりスマホ漬けの生活に。使用は夜9時半までと決めていますが、時間ギリギリまで画面にかじりついています。成績も下がりました。自分でコントロールしながらスマホを使えるようになるまでは持たせないほうがよかったのでしょうか。中1には早すぎたのかな、と悩んでいます。

井上由子さん

井上由子さん
子ども/中1女子

スマホを持ったその日から昼夜を問わずやり続ける

母

井上さん:子どもにスマホを持たせるのって、いつからが多いんですか?

先生

石田先生圧倒的に多いのは中学1年生ですね。小学生でスマホを持っている子は4割弱。それが中学生になると7割ほどに跳ね上がります。地域によっては8割、9割の中学生が持っています。

母

井上さん:やっぱり。うちも中1からだったんですけど、早まったかなと。

先生

石田先生:今の時代、一生スマホを持たないとは考えにくいですから、中学入学のタイミングで、というのはよくわかります。おまけにスマホ各社は毎年3月になると、大々的に学割キャンペーンを打ち出しますからね。

子どものスマホ問題はルール決めで解決します P23

母

井上さん:そうなんです。「今だ!」という気持ちになっちゃって。だけど、いざ持たせたら、アナタは野に放たれた獣か?って(笑)。スマホ一直線で、一日中かじりついてる。

先生

石田先生:当たり前ですよ。動画が見られる。ゲームもできる。大好きなアイドルのブログが読める。親に知られずに友達とコッソリやりとりできる。こんなに楽しいことはありません。そりゃあ、一心不乱にやりますよ。

母

井上さん:やっぱり早かったんでしょうか。高校生までガマンさせればよかったかな。

先生

石田先生:いやいや、もっと凶暴な獣になるかもしれませんよ。

母

井上さん:えぇ!? 高校生なら、もう少し自分でコントロールできませんか?

先生

石田先生:ご自身がその立場だったらどうですか? 友達みんなが持っているものを、自分だけ高校生になるまで持てなかったんですよ? 凶暴度が上がってもおかしくないですよね。

母

井上さん:じゃあ、やっぱり中学からなのかな。知り合いには小学2年生から持たせた人もいるんです。まだ親の言うことを聞くので「やめなさい」と言えばやめる。うまく使っていてうらやましいけれど、さすがに早すぎると思います。

先生

石田先生:確かに、「小学校低学年ではまだ早い」と感じるのもわかりますよ。

スマホを持つ時期は子どもが決める!?

母

井上さん:じゃあ先生、結局スマホはいつから持たせるのがいいんですか?

先生

石田先生子どもが持ちたいと言ってきたときでしょうね。

母

井上さん:えっ!? 子どもに決めさせるの? そんなことをして大丈夫ですか?

先生

石田先生:井上さんは、持たせる時期は親が決めるべきだとお考えですか?

母

井上さん:それは、もちろん。いつ与えるかを決めるのは親だと思います。

先生

石田先生:では、それはいつなのか、なぜその時期なのか、明確なお考えがありますか?

母

井上さん:それがわからないから先生に聞いているのですが……。

先生

石田先生:たとえば「うちは中学からという方針です。理由はかくかくしかじか」と、明確ならそれでいいと思うんですよ。それぞれのご家庭で価値観も事情も違いますからね。

母

井上さん:中学からと思っていたけれど、明確な方針か?と聞かれると自信がないです。

先生

石田先生:なんとなく考えている時期はあっても、「みんな持ってるんだよ」と泣きつかれて迷うのなら、方針を撤回してもいいと思います。

母

井上さん:でもそれじゃ、親として頼りなくないですか?

先生

石田先生:スマホを使うのは子どもですよね。だったらまず、子どもの立場になって考えてみてください。

母

井上さん:でも、「みんなが持っている」なんていうのにほだされるのは……。

先生

石田先生:みんな持っている、友達とコミュニケーションをとりたいというのは、子どもにとっては大変重要な理由ですよ。井上さんも子どものころ、そうじゃなかったですか? みんなが持っているものを自分だけ持てなかったら、すごくつらいですよね。

母

井上さん:まぁ、そうですけど。

先生

石田先生:結果的に持つ・持たないは話し合いになるでしょうが、持ちたいと言ってきたら前向きに検討してあげてほしいんです。いずれは持つことになるのですから、子どもが欲しがったタイミングで検討するのは悪いことではないと思います。

母

井上さん:最近は、早めに持たせてデジタルリテラシーを身につけさせる、みたいなことを言う人もいますけど。

先生

石田先生:子どもが欲しがる前に「そろそろ持たせたほうが……」と先走るのは、余計なお世話ですね。今の子どもは、親世代よりよほどデジタルに通じていますよ。ITのことは親が教えるまでもなく勝手に学んでいきます。

母

井上さん:でも、子どもが欲しがるというだけで持たせるのはやっぱり不安です。

先生

石田先生:私はね、スマホをいつ持たせるかはそれほど重要な問題だと思っていないんです。

母

井上さん:え、そうなんですか?

先生

石田先生いちばん大切なのは持つ時期じゃなくて、「どう持つか」ということなんです。

ご褒美として買ってあげるのはいけないこと?

先生

石田先生:井上さんは、お子さんが中学受験をして、志望校に合格したんですね。

母

井上さん:そうです。4年生からずっと塾通いでしたから、心底ホッとしました。

先生

石田先生:家族全員でがんばったんですよね。それで、ご褒美としてスマホを買ったと。

母

井上さん:一応、通学時の連絡用という名目でしたけど(笑)、まあそうですね。私もちょっと舞い上がっちゃって、テンションが高くなってました。ご褒美で与えたのがいけなかったんでしょうか?

先生

石田先生:最初に持つきっかけは、ご褒美でもいいと思いますよ。合格した、成績が上がった、何かをがんばったからスマホ。けっこうじゃないですか。それで、スマホを買ったときに使い方のルールを決めましたか?

母

井上さん:1日何時間とか、フィルタリングをかけるとか、そういうのは特に決めませんでした。ただし使うのは夜9時半まで、と。

先生

石田先生:それは、どういうふうに決めたんですか? お子さんと話し合って?

母

井上さん:こちらから提案しました。学校の勉強も大事だし、スマホはいろいろトラブルが起きることもあるから、9時半になったらやめなさいと。それが守れるなら買ってあげるって。

先生

石田先生:で、お子さんはなんと?

母

井上さん:二つ返事で「守る!守る!」って。

先生

石田先生:それはそうですよね。欲しいからね。なんでも言うことを聞く。

母

井上さん:一応、約束は守っているんです。9時半にはやめています。

先生

石田先生:じゃあ何も問題ないじゃないですか。

母

井上さん:でも、スマホを見ているから勉強しないし、成績も下がるし。

先生

石田先生:勉強しなくなるかもしれない、成績が下がったらどうするのか――スマホを買う前にそういうことを話し合いましたか?

母

井上さん:それはしませんでした。こんなにスマホ漬けになるなんて思っていなかったから。

厳しいルールではなく、細かいルールを決める

先生

石田先生:問題はお子さんの側にあるのではなくて、井上さんの側にあるようですね。お子さんはちゃんと約束を守っているのに、親御さんはイライラしている。そのイライラはどこから来るのか? 勉強しないから? スマホばかり見ているから?

母

井上さん:そうです。これから成長していく大切な時期なのに、スマホばかりでは心配で、いても立ってもいられません。

先生

石田先生:先ほども言いましたが、初めて持てば多くの子はどっぷりハマります。娘さんが特別なわけではないんですよ。

母

井上さん:じゃあ、それを黙って見ているしかないんでしょうか。

先生

石田先生:どう持つかが大切だというのは、そこです。井上さんの失敗は持たせるタイミングじゃなくて、持たせるときにきちんとルールを決めなかったことなんですよ。

母

井上さん:ルールは夜9時半まで、と……。

先生

石田先生それだけでは甘いですね。

母

井上さん:もっと厳しいルールを作る必要があったんでしょうか?

先生

石田先生:厳しいルールじゃありません。細かいルールです。どんなことが起こり得るかを想定して、ひとつひとつきっちり決めておく必要があったんです。

母

井上さん:だったら追加で、「スマホは1日2時間まで」とか言い渡そうかな。

先生

石田先生:それで子どもは納得しますか? 今までなかった新しい制限がかかるんですよ。

母

井上さん:そこは、厳しく守らせれば……。

先生

石田先生:無理でしょうね。確実に約束を破って、親の目を盗んで使います。それでまた親はイライラする。子どもは反抗する。悪循環です。

母

井上さん:そんな……。

先生

石田先生:サクッとルールを追加して、ちょこちょこお小言を言う程度では絶対に守りません。一度これまでのルールをリセットして、大ごとであるという雰囲気の家族会議を開いて、細かいルール決めをやり直さないとダメでしょう。

母

井上さん:え~!?

先生

石田先生:すごく大変ですけど、この先ずっとイライラして問題が噴出してくることを考えると、やる価値はありますよ。めんどくさいならやらなくてもいいけれど、たぶんイライラが長く続くと思います。

母

井上さん:ルールは大事だし、決め方もざっくりじゃダメということ?

先生

石田先生:そのとおり。ルールの決め方については別の章でお話ししましょう。

持つのが早すぎた? の結論
●スマホデビューは中学1年生が圧倒的に多い
●子どもが欲しいと言ってきたら、持たせることを検討する
●早い、遅いにあまりこだわらなくていい
●持たせるタイミングより、持たせるときのルール決めが大切

<第2回に続く>

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