スマホにどっぷりハマって、学校の成績は最下位レベル。子どもの将来が不安です/子どものスマホ問題はルール決めで解決します

暮らし

公開日:2022/3/12

子どものスマホはやむを得ないとは思っても、「ゲームばかりで勉強しない」「使用時間を守らない」など悩みは尽きません。親としては決めたルールを守って適度に使用してほしいものですが、ルールを守らせるのもひと苦労! 教育評論家の石田勝紀先生の著書『子どものスマホ問題はルール決めで解決します』(主婦の友社)では、親を悩ませる「スマホ問題」を解決する「ルール決め」を提案。それぞれの親子のパターンから、あなたの悩みを解消しませんか?

※本稿は『子どものスマホ問題はルール決めで解決します』(石田勝紀/主婦の友社)から一部抜粋・編集しました。

子どものスマホ問題はルール決めで解決します
『子どものスマホ問題はルール決めで解決します』(石田勝紀/主婦の友社)

【スマホばかりで勉強しない!】

スマホにどっぷりハマって、成績は最下位、部活は退部。子どもの将来が不安です

 中学受験が終わってスマホを持たせましたが、スマホに時間を取られて学校の勉強をしなくなりました。スマホ使用は平日夜10時まで、土曜日は夜11時までという約束をたびたび破り、学校の課題提出はいつも期限に遅れます。試験前1週間はスマホを取り上げていますが、成績は最下位レベル。居残り勉強や補習に追われて、部活も退部しました。がんばる意欲より、あきらめるクセがついてしまったようで、息子の行く末が心配です。

加藤洋子さん

加藤洋子さん
子ども/中3男子

「子どもが勉強しません」は100年前からある愚痴

先生

石田先生:私のところにはたくさんの親御さんから相談が来ますが、スマホに関してはほとんどが「勉強しなくなった」「成績が下がった」という内容です。

母

加藤さん:そうなんです! スマホスマホで、ちっとも勉強しない。

先生

石田先生:でも、お子さんが勉強しないのはスマホが原因ではないと思いますよ。

母

加藤さん:えっ!? だって中学受験のときはすごくがんばっていたんですよ? 塾のたくさんの宿題をこなして、夏休みや冬休みには強化合宿にも参加しました。

先生

石田先生:もし中学受験がなかったら、どうだったでしょう? 自分から率先して勉強をやったと思いますか?

母

加藤さん:それはわからないけれど……。そういえば、低学年のころはよく、宿題を放り出して遊びに行っちゃってました。

先生

石田先生:「うちの子、勉強しないんです」は、どの時代の親も言っていたことで、江戸時代にだって「メンコばっかりやってて、寺子屋をサボるのよ」と愚痴っていたお母さんがいたんじゃないかな(笑)。

スマホを持ったから勉強しなくなったというのは、そう見えているだけ。たとえスマホがなくても勉強しない子はしない。スマホを持っていても勉強する子はします。これは、ずっと塾をやりながら4000人以上の子どもを見てきた私の実感です。そうだなあ……スマホに関係なく自主的に勉強するのは1~2割でしょう。息子さんはまぎれもない主流派です(笑)。

母

加藤さん:それを聞いても全然うれしくないですけど(笑)。

スマホと学力が無関係なことはデータで証明されている

先生

石田先生:文部科学省は毎年、小6と中3を対象に全国学力調査をしています。今の形の調査が始まったのが平成19年。14年ほど前になります。

母

加藤さん:14年前……ガラケーの時代ですね!

先生

石田先生:そうです。YouTubeの黎明期ですが、まだ一般的ではなかった。ちなみに、スマホ――初代iPhoneが発売されたのがこの年です。「ボタンのない携帯電話」の出現に、世界が驚愕しました。

母

加藤さん:あのころは、スマホどころか携帯電話を持っている子どもも少なかったですね。

先生

石田先生:当然スマホ漬けの子どももいなかった。では当時、子どもは今よりも勉強していたのかといえば、そうではありません。自己申告ではありますが、塾を含む自宅学習の時間にはほとんど変化がないんです。

子どものスマホ問題はルール決めで解決します P59

母

加藤さん:本当ですね。不思議……。

先生

石田先生:興味深いことに、学力にも大きな変化はありません。この調査結果がすべてとは言いませんが、全国レベルで定点観測しているわけだから信憑性は高い。学力のレベルについて、統計的に有意な差は認められないんです。

子どものスマホ問題はルール決めで解決します P60

母

加藤さん:スマホがあってもなくても、子どもの学力には変化がない?

先生

石田先生:そういうこと。全国津々浦々に、「スマホ漬けで勉強しない」と嘆いている膨大な数の親御さんがいる。だったら学力がボロボロに下がってもおかしくないのに、それは変わらない。

母

加藤さん:と、いうことは?

先生

石田先生:勉強しないのは、スマホのせいではないということです。いまや中学生の8割がスマホを持っている。ある意味ではみんな平等なんです。だから「スマホを持つと勉強しなくなる」のが正しいなら、学習時間が減る子、成績が下がる子が大幅に増えるはずでしょう? でも、そうはなっていない。

母

加藤さん:じゃあうちの子は、どうして勉強しないんでしょうか?

先生

石田先生:それは、勉強がつまらないからです。魅力がないからやらない。ゲームのほうが圧倒的に楽しいから、そっちにいっちゃう。スマホがなければ友達とゲームセンターで時間をつぶしたりして、やっぱり勉強はしないんじゃないかな。

テストでいい点を取るためのたったひとつの方法

先生

石田先生:中学生に「成績を上げたいか? テストでいい点を取りたいか?」と聞けば、みんな「うん」と言いますよ。誰だって悪いよりいいほうがうれしい。

母

加藤さん:だったらちゃんとやればいいのに。何時間も勉強しろと言っているわけじゃないんです。30分でもいいから毎日コツコツやれば、って。

先生

石田先生:それは、考え方が根本的にまちがっていると思いますよ。

母

加藤さん:えっ?

先生

石田先生テストでいい点を取ることが目的なら、テスト前に集中して勉強すればいいんです。ふだんは授業を受けて、宿題は一応やって、あとはゲームをしていてけっこう。そのかわり、試験前の10日間~1週間は猛烈にやる。

母

加藤さん:猛烈って、どのくらいですか?

先生

石田先生平日は4時間。土日は10時間。

母

加藤さん:いや~無理無理無理! 絶対やらないです。

先生

石田先生:そうやって「無理!」って叫ぶ生徒に、よく言うんですよ。1年にめぐってくる52回の土日のうち、中間·期末テスト期間の5回だけをむちゃくちゃ勉強すれば人生変わるよって。成績が上がれば勉強が楽しくなる。次もまたがんばろうという気持ちになる。自信がつく。将来の選択肢も広がる。47回の土日はブラブラして、5回だけがんばればそういう未来が手に入る。どうする?って。

母

加藤さん:それで本当に成績が上がるんですか?

先生

石田先生:上がります。テスト前10日間にどれだけ集中して効率よく勉強できたかで、成績はほぼ決まる。日常はあんまり関係ないんです。だから、息子さんの成績を上げたいならテスト前だけを気にしていればいい。

母

加藤さん:一応、テスト前1週間はスマホを取り上げています。

先生

石田先生:それは子どもにとっては「罰」ですよね。勉強のモチベーションにはなりませんよ。スマホを返してもらえるまでジーッとやり過ごす。勉強をしているフリでもするのがせいぜいでしょう。

「あなたの自由」と言いながら自由にさせない親の態度が問題

母

加藤さん:じゃあ、どうすればモチベーションが上がるんですか?

先生

石田先生:勉強をおもしろいと感じさせることですね。日ごろやっているゲームとは違う種類のゲームが年に5回やってくる。こりゃおもしろいぞ、と。北欧には「ゲーミフィケーション」といって、ゲームとエデュケーション(教育)を合わせた言葉があるくらいです。

母

加藤さん:そんなこと、家ではできませんよ~。

先生

石田先生:そうですね。親は教師にはなれません。何か教えてやろうとしたって、子どもは絶対に言うことを聞きません。信頼できる塾や教師に出会えるかどうかが大きいですね。

母

加藤さん:運しだいなのかぁ……。

先生

石田先生:私の勉強法の本を、そっと机においてあげてください(笑)。ひとつできるとしたら、子どもに未来を教えてやる、選択肢を示してやることでしょうね。

母

加藤さん:未来を教えてやる?

先生

石田先生子どもは目の前しか見えていない。先のことが想像できないんです。先ほどの人生が変わる話もそうですが、大人は「こうすれば、未来はこうなる可能性が高い」ということがわかる。それを教えてやるんです。

母

加藤さん:「ここでがんばれば、こういう未来の可能性があるよ」と?

先生

石田先生:そういうことですが、忘れないでほしいのは子どもの人生は子どものものだということです。がんばるかがんばらないか、選ぶのはあくまでも子ども。「どちらを選ぶかは自由」と言いながら、「がんばるほうを選べ!」というオーラがバンバン出ていると反発します。

母

加藤さん:そのオーラ、出す自信ありますね。確実に……。

先生

石田先生:ダメなところに目を留めて、やめさせよう·正そうとしないほうが、子どもはいい方向に向かいますよ。

母

加藤さん:難しいです。ついガマンできなくてお説教を始めちゃう。

先生

石田先生:親心ですよね。でも、ポジティブな考え方で過ごすほうが親御さんも楽だし、そういう明るい空気が子どもにもいい影響を与えると思うんです。

あとは一般論として、スマホの使用に一定のルールを決めておくのは大事だと思います。日常的にゲームの習慣がついていると、テスト前だけパッと切り替えるのは難しいですから。中には本当にスパッと切り替えられる子もいるけれど、数は少ないです。

母

加藤さん:じゃあ、制限時間を決めるのはアリってことですね。

先生

石田先生:はい、ルールは必要だと思います。

スマホと成績の関係 の結論
●勉強しないのは、勉強がつまらないから。スマホのせいではない
●14年前と現在とで、子どもの勉強時間や学力は変わっていない
●ふだんはダラダラしていても、テスト前に猛勉強すれば成績は上がる
●親のネガティブな態度が子どもを勉強ぎらいに向かわせている

<第3回に続く>

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