ヒートテックはなぜ温かさが持続するの?/身のまわりのすごい技術大百科

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公開日:2022/4/21

 身近なモノのしくみが図解で丸わかり!『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(涌井良幸・涌井貞美著)で身近なモノに秘められた感動ものの技術について学びましょう。

 節電やウォームビズの広がりを追い風に、大ヒットしている機能性衣類。ヒートテックに代表される新衣料のしくみに迫る。

ヒートテックはなぜ温かさが持続するの?

 ユニクロと東レが共同開発して発売した肌着類の「ヒートテック」が人気だ。発熱・保温・吸汗速乾(きゅうかんそっかん)という肌着として優れた性質を持っている。老若男女を問わず多くの支持を集め、年々売り上げを伸ばしている。最近では、肌着に限らず、その優れた特性が活かされたTシャツやジーンズなども発売されている。

 こうした特徴を持つ肌着はヒートテックだけではない。一般的に、保温や発熱などの特別な性質を備えた衣類を機能性衣類といい、大型スーパーなども独自ブランドで発売している。国内の繊維産業の生産額が大きく減少するなか、その原料繊維(機能性繊維)は大きく売り上げを伸ばしている。

ヒートテックはなぜ温かさが持続するの?

 保温発熱効果を持つ衣類の多くにはレーヨン、アクリル、ポリエステルなどの繊維や生地が組み合わされ、それらの特徴が活かされている。その一例をヒートテックで調べてみよう。

 肌に接するところには綿の肌触りのレーヨンが配されている。肌から放出される水蒸気は、レーヨンの持つ優れた吸湿性のために水(要するに汗)になる。その際に凝縮熱(ぎょうしゅくねつ)が生まれ、繊維の温度が高くなる。これが暖かさを感じさせる秘密だ。2〜3度上昇すると宣伝されている製品もある。人間は1日に1リットル近くの水分を肌から放出するが、その生理作用が暖かさの原動力として利用されているのだ。

 レーヨンの外側にはアクリルが配されている。極細(ごくぼそ)に加工されて保温性の高められたアクリル繊維は、体温や発生した凝縮熱で暖められた空気を保持する。また、アクリルは吸湿性が高い。体を冷やしてしまう汗は、ここで外側に運ばれることになる。その外側にはポリエステル繊維が配されている。通常のポリエステルでも水分をはじき速乾性に優れているが、さらに異形断面を持つように改良がなされており、汗をすぐに外へと運んで蒸発させる。

 これが薄く軽い肌着が暖かさを保つしくみである。機能性衣類には、現代科学の粋(すい)が織り込まれているのだ。

ヒートテックはなぜ温かさが持続するの?

涌井 良幸/涌井 貞美

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