通学路で出会ったふたりの少年が“友だち”になっていく軌跡が尊い!『君と銀木犀に』/マンガPOP横丁(110)

マンガ

公開日:2022/5/13

君と銀木犀に
君と銀木犀に』(相澤いくえ/双葉社)

 遊び友だちや飲み友だち……友だちにもいろいろあるが、その中でも、自分の悩みに親身になって答えてくれるくらいの“親友”との出会いというのはある意味奇跡なのかもしれない。実際、はりまの中で“親友”と呼べるのは数人だ。数十億分の1の出会いは“運命の出会い”と言わず何というのか。今回ご紹介する『君と銀木犀に』(相澤いくえ/双葉社)は、まさにそんな出会いをした、ふたりの少年に生まれるかけがえのない物語だ。


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 母親からもらった交通費を使わずに田畑の広がるいなか道を毎日片道2時間かけて通学している泉は、最近転校してきた男子中学生。そんな泉には朝の通学で毎日だいたい同じところですれ違う少年がいる。彼は着ている制服から、泉とは別の、しかもお金持ちが通う私立の中学校へ通っているというのが分かった。泉はなぜ彼は自分と同じく徒歩で通学しているのか気になりだし、ある日の朝、ついに彼に声をかけてみた。これが葉介との“友だち”への入り口だった。それから会うたびに会話が始まり、ある時は遊んだり、ある時は悩みに答えてくれたりと、ふたりの仲は深まっていく――。

 出会いの設定はとても大胆ではあるが、運命の出会いというのはきっとこんな感じで1本の道で導かれているのかもしれない。友だちという関係はとても些細なことから成立したりする。これはあくまでも私の感覚なのだが、この作品ではそれがちゃんと描かれているであろうシーンを見つけた。それは第1話の回想シーンでの非常に小さくてさり気ない1コマ。これをキッカケに泉と葉介の友だちの歴史は始まったと思っている。このさり気なさが実にリアル! 私の中では非常に思い入れの強いシーンのひとつだ。そんなふたりに生まれた友だちの時間がゆっくりと優しく積みあがっていく。この過程が実に尊くて、彼らの絆が強くなっていくたびに胸と目頭を熱くさせてくれるのだ。

 自分はこの作品で改めて“親友”ってイイなと思った。もしあなたの近くに親友がいなくても、心が落ち込んだときに“第2の親友”として、この作品を生活のお供にするのをオススメしたい。

 最後に、これを読んでいるかどうか分からないが、親友よ、親友でいてくれてありがとう。これからもよろしく!

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

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