快適に住みたい魔物たちの希望に応える、リフォーム冒険紀行!『ソアラと魔物の家』/マンガPOP横丁(113)

マンガ

公開日:2022/6/3

ソアラと魔物の家
ソアラと魔物の家』(山地ひでのり/小学館)

 今回はちょっと珍しい作品で、少なくとも自分はこれまで出会ったことのない内容だったので興味深く楽しめた。そればファンタジー世界において、魔物たちの住まいを次々と建築していくという物語、『ソアラと魔物の家』(山地ひでのり/小学館)です。


advertisement

 どこよりも安心安全で、幸せに“自分の住処”で暮らしたいのは人間だけではなく、魔族も同じ――。

 未だ人間と魔物が争い続けていた時代、来る魔物との決戦の日のために過酷な訓練の日々を送っていた孤児の少女・ソアラに転機が訪れる。それは……魔物との戦いが休止、つまり事実上の終戦となってしまったのだ! 突然自由の身となったソアラは当てのない放浪の旅に出て、ある日ドワーフ族のキリクと出会う。子どものような見た目の彼は、今の住まいに悩みを持つ魔物たちが希望する家を設計して建築する“魔界建築士”だった。彼の手にかかれば、劣悪な環境に住んでいたことを忘れるくらい、機能的で快適な空間の家を次々と生み出しては魔物たちを幸せにしていく。実はこれが人間と魔物との終戦の一端を担っていた…!? 寒い地域に住むゴブリンが温かく住める家や、卵を安全に管理したいグリフォンの家など、彼らの抱える住まいの問題の解決にキリクとソアラが挑んでいく建築冒険物語だ。

 まさに“魔物の家のビフォーアフター”といったところ。魔物は洞窟や森などで適当に過ごしているというイメージだが、この世界では人間と同じように魔物も快適な家を持つというのがトレンドで、キリクたちによって生態に合った住まいが次々と誕生していく。間取りや機能は、人間では思いつかないものだらけ! 中には自然を有効利用した仕掛けもあり、目からウロコだった。魔物の家なのに、我々から見ても見どころたっぷり!

 劇的なリフォーム番組の穏やかなピアノの音色とおなじみのナレーション「なんということでしょう」を脳内で流しながら、この世界の住宅事情を楽しんでみませんか? あと、探訪系大物俳優さんがこの作品を読んで「この自然床暖房はうれしいですねぇ!」などと脳内探訪してくれないだろうか!

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

あわせて読みたい