【名著の要点が5分でわかる!】あなたは世界を勘違いしている――事実を基に世界を知る術『FACTFULNESS』

ビジネス

公開日:2022/3/17

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド:著、上杉周作、関 美和:訳/日経BP)

▼こんな人にオススメ!

世界で起きていることや社会課題を正しく理解したい人
ニュースやSNSで知る世界の状況に、気持ちが沈んでいる人
世界や自分の未来に希望を抱けない人

▼3つのポイント

要点1
政治家や学者などの知識人も含む多くの人は、世界の現状を悲観しすぎている。

要点2
世界の現状を事実に基づき正しく理解することで、今、本当にやるべきことがわかる。

要点3
ネガティブ思考、分断本能など、事実に基づいた思考を妨げる人間の本能を知って抑えることが重要だ。

▼プロフィール
ハンス・ロスリング
1948年、スウェーデン生まれ。医師、公衆衛生学者。スウェーデンとインドで医学を学び医師になる。モザンビークで神経が麻痺する病気「コンゾ」を発見するなど、医療や病気の調査・研究に尽力したほか、グローバルヘルスの教授、研究者として活躍。世界保健機構やユニセフのアドバイザー、国境なき医師団を設立にも携わる。2005年、息子のオーラとその妻アンナと共に、「事実に基づく世界の見方」を広げるため、ギャップマインダー財団を設立。インターネット動画配信のTEDトークは延べ3500万回以上再生され、タイム誌が選ぶ世界で最も影響力の大きな100人に選出。2017年に他界した。

オーラ・ロスリング
1975年、スウェーデン生まれ。ハンス・ロスリングの息子。ギャップマインダー財団の共同創設者で、2005年から2007年、2010年から現在までディレクターを務める。ギャップマインダーのチンパンジークイズや、知識不足を体系的に測定するプロジェクトやその認証プロセス、「トレンダライザー」として知られる動くバブルチャートによるツールを開発。2007年にグーグルがトレンダライザーを買収した後、2010年までグーグルのパブリックデータ・チームのリーダーを務めた。その後、ギャップマインダーに戻り、新たな無料教育ツールを開発している。

アンナ・ロスリング・ロンランド
1975年、スウェーデン生まれ。オーラ・ロスリングの妻で、ギャップマインダーの共同創立者、バイス・プレジデント。講演者であり、ギャップマインダーの利用者担当リーダーでもある。ギャップマインダーのグラフィックやスライドを作成し、動くバブルチャートのユーザーインターフェースも設計し、トレンダライザーがグーグルに買収された後、2010年までグーグルでシニア・ユーザビリティデザイナーを務めた。ギャップマインダーでの功績により、レジメ・スーパーコミュニケーター賞、金の卵賞、ファスト・カンパニー誌の世界を変えるアイデア賞を受賞。

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ドラマチックな物語を好む我々は、世界を悲観しすぎている

 科学者や投資銀行のエリート、政治家など優秀で国際問題に興味がある人も、多くは世界で起きていることを正しく知らない。私はこれまで世界各地で、「世界の子供が予防接種を受けている割合」「低所得国における女子教育」「極度の貧困にある人の割合」など、世界の事実に関する3択のクイズを出題してきた。しかしほとんどの人が、ランダムに答えを選ぶチンパンジーの回答率を超えることができない。貧困や環境問題などに関して、世界を事実より悲観的にとらえているのだ。

 データに基づき世界を正しく見ることが、ファクトフルネスだ。本書では、ファクトフルな考え方と、それを邪魔する人間の10の本能、そしてそれを抑える方法を伝える。

 世界の現状を悪く見積ってしまうことには、人間の10の本能=思い込みが関係している。世界は分断されていると思い込む「分断本能」や、ひとつの例がすべてに当てはまると考える「パターン化本能」、誰かを責めれば物事は解決するという「犯人捜し本能」、すぐに手を打たないと大変なことになるという「焦り本能」などだ。また、人間はドラマチックな物語を好み、ネガティブで恐怖を感じやすい。悪いニュースや恐ろしいものに自然と目が行ってしまうこと、メディアは人の感情を揺さぶる情報を発信しやすいということを知るべきだ。

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世界の多くの人は最上位でも最下層でもなく「中間」にいる

 先進国と途上国、また「金持ち」対「貧乏」という間違った分類が、世界への理解や、世界にとって本当に必要なことに対する認識を歪ませている。分断本能に従った二項対立ではなく、所得に応じたレベル1~レベル4の分類を用いて世界を理解しよう。

 世界のほとんどの人は、生きるために必要なものはほぼ揃うレベル2以上の生活をしている。人や国のグループには最上位層と最下位層が存在するものの、多くのケースでは、大半の人はその中間の上でも下でもないところにいるのだ。極度の貧困にある人は世界におよそ10億人いるが、その数は過去20年で半減していること、人々の多くが豊かな生活をしているレベル4の国も、レベル1やレベル2から発展してきた歴史があることなど、4つのレベル分けに基づいて事実を知ることで、世界に対する理解が深まるのだ。

データを偏重し、焦りや危機感を煽る言葉に要注意

 世界は日々進歩していて、生活は豊かになり貧困層は減っているが、解決すべき問題がある中、世界が良くなっていると言うのは憚られる空気もある。しかし「良くなっている」と「悪い」は両立する。世界は良くなっているという事実を知った上で今ある問題の本質を理解すれば、これからも世界を良くし続けるために必要なものが見えてくるはずだ。

 自分たちがいる場所を特別だと思ってしまったり、数字を過大に評価してしまったりすることもある。常に何かに苦しんでいる人を紹介するメディアや慈善団体は、都合の良い数字を見せて危機感を煽りがちだ。限定されたデータに左右されず別のデータと比較したり、大ききが違うグループ同士の比較は割合を計算したりすることで、その勘違いは防げる。

 ファクトフルネスは、自分自身の理解にも役立つ。10つの本能を抑えることで、ドラマチックに世界を見るよりも心が穏やかになり、世の中もそれほど悪くないと思えてくる。世界中のすべての人が、事実に基づいて世界を見る日がいつかやってくると信じている。

文=川辺美希

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