数字から逃げてはいけない――組織と個人を伸ばす仕事術『数値化の鬼』

ビジネス

更新日:2022/5/23

ロングセラーや話題の1冊の「読みどころ」は? ダ・ヴィンチWeb編集部がセレクトした1冊、現在15万部を超えるベストセラーとなっているビジネス書、『数値化の鬼――「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』(安藤広大/ダイヤモンド社)をご紹介します。

こんな人にオススメ!

自分は、同期や周りに比べて成長が遅いと感じている人
数字の大切さはわかっているが、苦手意識がある人
部下や組織のマネジメントがうまくいかない人

3つのポイント

要点1
仕事ができる人は、数字のモノサシに従って仕事をしている。「まずは数字」の考え方と行動を徹底すれば、人や組織は成長できる。

要点2
「数字がすべてではない」とよく言われるが、数字以外を優先すれば結果は出ない。数字を追求した先に、やりがいや達成感、個性などの人間らしい報酬がついてくる。

要点3
自身が変えることで成果につながる「変数」をいち早く見極め、それに力を注ぐことが、結果や自分の成長へつながる近道だ。

▼プロフィール
安藤広大(あんどう・こうだい)
1979年、大阪府生まれ。株式会社識学代表取締役社長。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年に独立し、「識学」を教える講師として数々の企業の業績アップに貢献。2015年、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法で評価を得る。2019年、創業から3年11ヶ月でマザーズへ上場。識学メソッドは、2022年3月時点で約2700社以上に導入されている。主な著書に、『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)、『できる課長は「これ」をやらない!』『伸びる会社は「これ」をやらない!』(ともにすばる舎)など。

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数値化に理系脳はいらない。数字のモノサシを持つだけ

 仕事ができる人には、「数字」という判断基準を持っている、という共通点がある。成長したければ、心を鬼にして、第一に数字と向き合う「数値化」の癖をつけるべきだ。常に数字で考えることで、合理的な目標設定や早い成長が可能になるからだ。「数字がすべてではない」という言葉は聞こえがいいが、数字を無視して成功することはありえない。数字以外のことは、数値化の後に考えるべきだ。

 数値化とはシンプルに、数字という明確なモノサシを持つことだ。難しい計算は必要ないので、数字が苦手な人も安心してほしい。まずは、目標やノルマという言葉につきもののネガティブなイメージを取り払おう。数字は常に、次に進むための方針を示してくれる存在なのだ。あいまいな表現や根性論に頼らずに、自分の状況や目標を数値化するなど、いつも数字で考える癖をつけよう。

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確率ではなく、行動の「量」に目を向けよう

 数値化の具体的な方法のひとつが、行動の「量」に注目することだ。ビジネスで結果を出すための基本的な方法に、「PDCA」(計画・行動・評価・改善)のサイクルがある。すべてのステップで欠かせないのが、数値化だ。評価をする際も、「なんとなく売り上げが落ちている」というあいまいな表現ではなく、目標と結果を比較した具体的な数値で、変化と次の対策を見出そう。

 そして、PDCAの中で、D(行動)の回数である「行動量」がもっとも重要だ。「何回やったのか」「1日に何時間できたのか」という行動量を、誰よりも増やすことが数値化の基本である。成功の裏側には、見えない努力=行動量が必ずある。ホームランを打ちたければ、誰よりも多くバットを振るしかないのだ。すばやく行動に移し行動量を増やすためには、目標を数値化してすべきことを明確にすること、失敗を恐れないこと、上からの指示に納得できなくてもまずはやってみることを勧める。

 行動量の大切さとあわせて知ってもらいたいのが、確率のワナだ。10件中8件の成約を得る成功率80%の人と、50件中25件の成約を得る成功率50%の人は、後者のほうが評価されるべきだ。しかし、確率で優っていることに安心して「質」にこだわる癖がつくと、失敗を恐れるようになる。経験が増えて失敗の傾向がわかってくると、挑戦しなくなる「働かないおじさん」になる人もいる。経験を積んでも、確率ではなく行動量を意識しよう。

 確率は誤解を生むことも多いため、注意が必要だ。計算の基となる数字を見せずに確率だけを示して数字を良く見せるなど、悪用されることもある。組織も個人も、目標を「%」で与えられると、次年度の目標について思いを巡らせたりして、行動にブレーキをかけがちだ。継続して結果を出すことを評価する、評価は「プラス/マイナス」でシビアに点数をつけるなどの方法で、組織や個人は結果を出せるようになる。数値化にはこうした落とし穴もあるため気を付けよう。

結果につながる「変数」を正しく見極める方法

 どんなに努力をしても結果が出ない、という人は、「変数」の考え方を身につけてほしい。世の中には、変えられることと変えられないことがあり、これを見誤ると失敗する。ビジネスにおいても、変えることで結果につながる「変数」に力を注ぎ、結果を左右しない「定数」には見切りをつけることが大切だ。

 たとえば、資料作成に時間をかけてもプレゼンの結果が変わらなければ、資料の完成度は変数ではない。プレゼンの伝え方を工夫して成功する回数が増えたら、伝え方は、プレゼンにおける変数だ。つまり、資料作成ではなく、変数の伝え方を磨くのが正しい努力のしかたである。仕事の中身の棚卸しをしたり、「なぜ?」を繰り返してうまくいかない理由をつきつめたりして、変数に早く的確に気付き、行動に移そう。

 仕事を覚えるうちに、重要だと思うこと=変数は増えていくため注意が必要だ。すべてに力を注いで仕事をすると全体のパフォーマンスが落ちる。数字に基づく分析から変数を見極めて前例を手放す、複数の変数の中から、目標につながる「真の変数」を選び取るなどの方法が有効だ。

 数値化の考え方に関して共通するのが、順番を間違えてはいけないということだ。個性より前に数字を追求する、確率よりも行動量を優先するなど、仕事ができる人は、先に数字に関する要素をクリアするという順番を間違えない。やりがいや達成感などの数値化できない人間らしい感情は、数字を追求した後についてくるもので、逆はありえない。数値化は決して冷たいものではなく、人の成長や人生の充実を叶える考え方だ。人間味のあるプレイヤーとして活躍するために、心に「数字のモノサシ」を持ってほしい。

文=川辺美希

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