7000人の女性の足の付け根を見てきた 監督・村西とおるが明かす、“AV女優の採用基準”

更新日:2014/12/10

   

 これまで制作したAVの本数は3000本以上、「顔面シャワー」「駅弁」などの生みの親ともいわれる“AV界の帝王”こと村西とおる監督。『村西とおるのコワ~いAV撮影現場の話』(宝島社)『村西とおるの閻魔帳 ―「人生は喜ばせごっこ」でございます。』(コスモの本)などでは、AV業界のウラ話を公開しています。

 そこで昨今、数が増え続けているというAV女優の実際について聞くべく、村西監督を直撃! お話は、AV女優の採用基準から意外なアドバイスにまで及びました。

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――今、AV女優の数は4000人も5000人ともいわれています。そもそも、AV女優の採用基準とは何にあるのでしょうか。

村西 AV女優の採用基準には、AVとは何たるかという問題が密接にかかわってくるんです。私はね、エロティシズムってのはコントラストだと思っているんです。うちのスタッフなんかは、よく「女優を決める基準はアソコでしょ?」と言うんですが、アソコを見るだけで本当に興奮するのかというと、そうではありません。

 たとえば、映し出されたアソコが実は、吉永小百合様や沢尻エリカ様のものだとしても、それがわかったときに初めて興奮するんですよ。単にアソコだけを見て勃起をするのではなく、頭の中で「小百合さまが、こんなにドドメった小陰子を持っているのか!」「沢尻エリカさまは、使い込んだココから愛液を寝小便のようにたらすんだ…」といったコントラストがあって初めて興奮するんですよね。

 つまり、AV女優とはコントラストを持った存在でなければならない。私は、採用基準としてそこを一番に見ますね。そして、コントラストを感じさせるためには、深い知性を持っていなければならない。この人が何を想像させてくれるかが大事なんです。男性がゾクゾクハラハラするのは、見た目の雰囲気を裏切るような世界ですからね。

――監督は、女優さんのコントラスト、知的さを見るために面接でどんなお話をされるんですか?

村西 面接では、僕はあんまり話さない。一般的には、バカみたいに120項目ぐらいのリストを出して書かせたり、初体験はいつか、性感帯はどこかなんて頓珍漢な質問をしたりするの。でも私は1分ぐらい見てね、その後「名前は?」って聞くだけ。今まで7000人ぐらい見てきたから、それ以上は必要ないのよ。質問する暇があったら、すぐに撮ったほうがいい。今のAV女優は大変ですよ。頭もよくて容姿も淡麗、もちろんアソコもよくなければならない。今年AVクイーンになった業界ナンバーワンの波多野結衣ちゃんなんて、私も撮ったことがありますが、頭がいい、気立てがいい、体がいい、足の付け根もいいと4拍子、5拍子揃った子で、会ったら「こんな子がAVやるのか?」と思いますよ。中国でも一番人気で、スケジュールは3カ月先までびっしりという売れっ子です。

――売れっ子AV女優の特徴には何がありますか?

村西 何枚めくっても本当の姿が見えない、正体不明さですね。今、1500本近い作品に出ている川上ゆうちゃんという女優さんは、デビューして10年だというのに、いまだに2日に1本撮影しているの。彼女がすごいのは、1500本というAVに出ているのに、本性がまったくわからないことなんです。

 また、AV女優として失ってはいけないのが恥じらいですよね。一般的なAV作品では、人が理性を失ってしまい、次第に感情の赴くままに性の阿鼻叫喚におぼれていく、こうした落差を見せないと、AVは成立しません。

 川上ゆうちゃんの恥じらいは魅力的ですよ。義理の父に犯されて中出しをされるときの絶妙な悶絶の仕方、息子に羽交い絞めにされて「お母さん、地獄に堕ちよう」と言われたときの悶え泣き。しかも、この恥じらいがいつだって新鮮なのよ。

――今と昔とでは、AV女優になる女性たちの動機は変わりましたか?

村西 変わりましたね。1つは、やっぱりお金でしょうね。昔はすごく切羽詰っている人が多くて、「今日、何時までにお金を振り込まないと子どもの学費が払えない」と言いながら子連れで来るような人もいました。そういう人は、もうほとんどいないね。同じ状況ならばAVより風俗に行けばいいから。今は、自分の数年先の将来を見て、自分自身が売り時にあるからAVで勝負してみようという人が多い。職業人という感覚を持っていますよ。

 昔に比べればAV女優の地位も向上したし、事務所にも守ってもらえるようになったし、とんでもないギャラもらえるしね。特に売れっ子のAV女優さんって、すごく大切にされるんですよ。例えば、波多野結衣ちゃんなんかには、常に4、5人の黒服がついてるからね。アイドル並みにガッチリガードされている。なぜなら、その人を毎月3本ずつ撮っていけば、年間36本。とんでもない利益を提供してくれるわけでしょう? だから、無理矢理したくもない行為をやらされるなんて、何十年前の話ですよ。いまやAV女優さんのやりたい放題。「この男優はNG」「この監督はNG」「その部位は撮影NG」「この体位はNG」…そんなところまで口出しされちゃう。でも、こちらも女優さんにむくれられちゃったら商売にならないし、条件を飲まざるを得ないという悲しい現実がありますよね。

――AV女優志願者のメンタリティも変化しましたか?

村西 もちろんです。30年、40年前は、AVでセックスなんかしたら、警察に捕まるんじゃないかとお考えになっていましたからね。女性にとって性が禁忌だった時代ですから、「イク」「オマ●コ」という言葉も言えない。昔、黒木香さんを撮った時は、仕方ないから笛を買ってきてくわえさせてね、感じるときは1回、すごく感じるときは2回、我慢できないときは3回吹かせたの。

 いざ撮影に入っても、スタートして何十分も経っているのに、まだ照れて顔を隠していたり、ブルブル震えて目を離したら窓から飛び降りるんじゃないかというような子がたくさんいましたね。だから、演出なんてつけなくても、彼女たちのドキュメンタリーが、AVで描かれるファンタジーたりえたんだよ。

 今は違いますよ。志願してくるのは、500本も1000本もAVを見てる子ばかりですからね。何をやらなきゃいけないかなんて、下手な映画監督より知ってますよ。現場に入れば逆に教わることも多いし、男優さんをリードしていくし。だから、監督に求められるものは、今は何もないよ。女優さん自身が何をするか熟知しているから、進行管理みたいな監督ばっかりですよ。

――30年、40年の間に女性の性が開放的になったともいえるのでしょうか。

村西 ええ。そして、それに大きく貢献したのはAV、そして元AV女優の黒木香さんの功績は誇るべきものがある。彼女の作品は、女性の性がいかにすさまじいものであるかを示してくれました。こんなことを女性はやるのか、やっていいのかということを、「淫乱」という言葉を通してご理解いただいて、AVの世界をはじめ、性を描く世界自体がまったく様変わりしました。それが、日本の性文化、女性の性に対する考え方の変化につながったはずです。

 たとえば、昔は潮を吹いたら「お前、何ションベンたれてんだ」と離婚されてしまっていた。でも、感じてしまうと男性に比べて女性の尿道は3~4センチと短いから失禁しやすいんですよね。ただの生理現象なのに、離縁されて自殺したり、ひどい目に遭った女性もいたわけですよ。それが、いまや一つの価値ある行為としてご評価をいただいている。女性は子どもを産むものとして認識されていた時代を遠く離れて、いまや女性はセックスで自分自身の快楽を満たし、我が世の春を謳歌するようになりました。

――このお話は、AVが社会的にいかに影響力を持っているかの証左なのかもしれませんね。監督は、AVをどのようなものだと考えていますか?

村西 AVとは、非日常を題材にしたファンタジーの世界です。通常の世界の中で見ることのできない存在感のある女性とのまぐわい(=物語)を見せることで、男はドキドキハラハラする。だから、AVでは愛している人とのセックスが最高だという切り口はあり得ないんですね。10年来愛し合った同士でも得ることのできないセックスの官能が、今さっき会ったばかりの異性とのカラオケボックスでの立ちバックにあったりする。愛とセックスとは別腹だという不条理を描くのがAVです。

 世の中には、「作り物でないと真実は描けない」というアイロニーがあるんですね。AVはその一つで、映画にしろ、演劇にしろ、作り物でしか描けない真実があるからこそ、我々は惹きつけられるわけでしょ。例えば、近親相姦を描くにしても、我々が見たいのは、地獄花が咲くところ。ともに手を取って畜生の世界に落ちていく様は、本物にはないんだもの。だから、無料の無修正動画なんてものは、まったく気にしない。単純に性器を出し入れしているだけのセックスなんて、少なくとも私はちっとも脅威は感じないですね。

 AVとは、人間という罪深き存在をあらわにしていくもの。人間の本性を知る入り口の一つに、性愛があるんですね。ならば、AV監督という職業に従事している人間の矜持として、性を通じてしか見せられない世界を見せなければならないと考えています。

――AVとは人間そのものを見せる世界なんですか!

村西 AVというのは、人間とは何か、人生とは何かをあからさまに教えてくれる恰好の素材なんだよね。人生で「性」を貶めることは「生」すら貶めることになると思いますよ。

 男はね、みんなAVが人生のパートナーなわけ。社会的な経験や年齢を重ねることによって、異性のタイプやセックスの好みって変わるでしょ? 男って、AVを観ていくうちに、こういうシチュエーションでこんな女性がこんなセックスをすると一番興奮するんだって気づくんですよ。我々男性は、AVを観ながら自分自身を探しているんです。自分が本当に好きな性を知ることで、自分が考えている以上に自分自身というものを知らしめさせられる。AVとは、男性にとって合わせ鏡のような存在なんですよ。

 だからね、女性はAVの好きな男とセックスしないと、40歳、50歳になったとき月一女にされちゃうよ。AVが好きでいろいろな性を吸収している男性とまぐわったほうが、さまざまな快楽を知れるしね。

――監督は、今後もAVというファンタジーを作り続けてくれるんですよね?

村西 そうね。どういうわけかAVにどっぷりつかっちゃったけど、これ以外の人生は考えられないですね。僕しか描けないような、かつて人類が相見えたことのないような世界を提案していければと思っています。それが自分の使命であり、存在する意味かな、ってね。

取材・文=有馬ゆえ

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